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異世界転生した看護師の規格外な冒険物語 ※なお、スキルに頼れたのは最初だけ(悲)  作者: VANRI


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過去との対峙

―――そして現在―――



 ジェームスとフランは膠着状態。

フランの後ろに恐る恐る剣を構えているトニーが並ぶ。


 ジェームスはトニーの方へ向かう。

フランがそれを阻止するため剣を振るったが、身を低くして避けられてしまい息つく暇もなくトニーの目の前に位置する。


 ジェームスが剣を振り下ろし、それをトニーが剣で受け止める。


「おいなんだこの剣は。おもちゃか? 飾りか?

これじゃ守りたい人間なんて守れんだろう。

本当に守りたい者の前では死ぬ気で魔力を込めろ!!」


「父さん……俺は父さんとは戦いたくない。

戦えない」


「やめろ! トニーさんから離れろ!!」

フランが後ろから駆けてくる。


 ジェームスはトニーへ続ける。

「何を甘えたことを」

言うやいなや剣に力を込めトニーの剣をはじき飛ばした。

トニーの剣は真っ二つに折れ、頭上高く飛ばされる。


 トニーは思わず後ずさりする。

ジェームスはトニーへ向かって真っ直ぐに剣を押し出した。


「やめろって言ってるだろ!!!」

その言葉と同時にフランがジェームスの剣を横から剣で押さえ込む。

 金属の高い音と同時に二人の剣先が地へ向けられた。


 剣と剣が小刻みに震えるように音を立てる。

「何だ邪魔をして。こんな出来損ない守る必要あるのか?」

「うるさい黙れ! トニーさんを悪く言うな!」

ジェームスの胴を蹴り飛ばす。


 だが、少し剣と身体が離れるだけで体勢は崩れない。ジェームスは直ぐに突きの構えを見せフランに飛び込んでくる。


 フランの低いうめき声と同時に血が流れる。

左の肩を剣が貫通し、血が剣を伝う。


 ジェームスがフランの顔の横で笑う。

「お前は避け方も下手になったのか」


 フランはそれに不気味に笑って返す。



「わざとだよ」


 フランは、肩に刺さったままの状態で左手で剣を持っているジェームスの腕を掴む。ジェームスが咄嗟に剣を抜こうとするがフランに腕を掴まれているので身動きが取れない。フランは右手に持つ剣でジェームスの胸を突き刺した。


 ジェームスが血を吐きその場に倒れ込む。

フランは左肩に刺さった剣を抜き地べたに投げ捨てた。


「僕の肩に刺さってしまえばそっちは動けなくなるだろ」


 だがフランはすぐに倒れたジェームスの横に駆け寄る。トニーも倒れそうな足取りで近付いてくる。


 フランは静かに語り出す。

「ジェームスさん、あなたの出来損ないの子供はあなたを殺せないよ。

あなたの育て方のせいだ。愛情深く優しい子に育ったから。

 僕は、子供()()()だったからやれたんだ。

本当の子供じゃなかったから……」


「父さん!! なんでこんな……」

トニーはジェームスの横に崩れ落ち、瞳から次々と涙をこぼしていく。


 ジェームスが口から血を流しながら詰まりながらゆっくり話す。


「トニー……ごめんな……


そしてフラン……ありがとう……

嫌な……役させて……ごめんな


 二人とも大切な……俺の子供……たち」


 それだけ言うと瞳を閉じた。


「父さん!! 父さん!!!」

トニーはジェームスの身体を揺らしながら叫ぶ。

だがもうピクリとも動かない。

トニーの服や手にジェームスの血が付いていく。



「フラン……なんで父さんを……!」

そう言いながらフランを睨みつけたトニーは息を呑んだ。


 フランの頬に涙が伝っていた。

今までこんな悲しみに顔を歪めるフランを見たことがなかった。


「ジェームスさんは脅されていた。

トニーさんを攻撃しなければ家族を殺すって。

それはジェームスさんが死ぬまで続くことになっていた。手加減や変な真似をしてもだった。

だから本気で戦うしかなかったんだ。


 ……自分の命に代えてトニーさんを守ったんだ」


「そんな……」


「ジェームスさんはこれを望んでた。

トニーさんの手は汚させたくなかったんだ」

フランの声が震えていく。

「僕だってこんなことしたくなかった……

でもどうしてもって頼まれて。

嫌だってどんなに言っても聞いてくれなかった」


 トニーは改めてジェームスに目をやった。

その顔は苦しみを浮かべるどころか、幸せそうな穏やかな表情だった。


「トニーさん、僕を許せないなら殺していい。

でもトニーさんが言ったとおり、それは今じゃない。

やるべきことが終わったら殺してくれていいから」


「わかった……」

トニーはジェームスの剣を拾い立ち上がり、空を斬り血を薙ぎ払う。


 そして静かに口を開く。


「許せない。絶対に許さない」


 フランは目を細める。

「いいよ。許せなくて。それだけのことを僕はしたんだから」


「違う。お前じゃない」

「……え?」


「父さんやフランを苦しめてきたこの王を。


 ……絶対に許さない」


力強い眼光で階段の上に座っている国王を睨み上げる。


 トニーが歩き出したのでフランはその横に歩を進める。

「トニーさんの手が汚れないよう僕は戦う。

トニーさんは穢れないままでいてよ」


「お前はいつも自分ばっかり汚れようとする」

トニーはフランに目を落とす。


 そして先を見据え静かに言った。


「それじゃ俺はお前の手が汚れない未来のために戦うよ」





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