フランの自分語り
お城に着いてから色んなことがあった。
トニーには殴られるし、メアリーちゃんは目の前で人を斬るし。
アーシュにも出会った。メアリーちゃんの双子の弟らしい。だけどそれを知っているのはお城の中でも何人かだった。メアリーちゃんを守るためらしい。
ボロボロ姿のメアリーちゃんと出会った次の日に、着飾っているメアリーちゃんを見た。違う人だと思ったけど目が合うと笑ってくれて本人だとわかった。
本当にお姫様だったんだ。
初めて会った時は、僕の方が美しいと思ったのにな。
このお城に来た時、一番に身なりを整えさせられた。ボサボサで灰色みたいな僕の髪は光り輝く金色になった。身体も汚れているところがなくなった。
綺麗な服を着て鏡を見た時、最初誰かわからなかった。
美しい子供が映ってたから。
それから、トニーとアーシュと一緒に過ごすことが多くてたくさん話をした。
トニーにメアリーちゃんと結婚したいと言ったことを言ったらすごく驚いていた。
「お前、メアリーのこと好きなのか?」
びっくりした顔のまま聞かれる。
「好き? 考えてなかった」
トニーは呆れているようだった。
「結婚は好きな人とするんだぞ」
「え? そうなの?
一緒にいたい人とじゃないの?」
ちょっと苛々しているように見えた。
「そうだけど……好きになって一緒にいたくなるんだよ」
ちょっと考えてみた。
「僕、トニーのこと好きだよ」
「は?」
「トニーは僕のこと嫌い?」
「好き……だけど、結婚したいとは思わない」
「え? じゃあ僕と一緒にいたくないってこと?」
「違う違う!! なんでそんなバカなんだよ!!」
トニーがなんで怒っているのかわからない。
悲しくなってくる。
「あーもう!! 泣かなくていいんだってば!!」
僕が泣くといつもトニーは怒る。
なんで怒るのかやっぱりわからない。
「そのうち好きがわかるから!!」
そう言ってトニーは呆れながらどこかへ行ってしまった。
トニーの言う通りだった。
一年後にはメアリーちゃんのことが大好きになっていた。
いつ好きになったのかわからない。
気付いたらそうなってた。
お菓子をくれたからかもしれないし、怪我した時に心配してくれたからかもしれない。
笑顔が可愛いからかもしれないし、強いからかも。
絶対に守りたいと思った。
命に変えても。
だから強くなりたい。
国で一番強いのはジェームスさんなので、トニーが知らない時も剣術を習った。いつも頼めば相手をしてくれたし、たくさん話も聞いてくれた。
剣術の稽古を終えて、息を整えるために横になっているとジェームスさんが横に座りながら言った。
「何でも頼ってくれたらいい。父親のように思ってくれていい。甘えていいからな」
身体を勢いよく起こしながら答えた。
「じゃあトニーみたいに『父さん』って呼んでいい?」
ジェームスさんは驚いた顔をした後、しばらく静かになって今度は泣きそうな顔になった。
頭に手を置かれる。
「そう言ってくれて嬉しいよ。でも難しいかな……」
「僕が本当の子供じゃないから?」
「今一瞬、それでいいかなって思ったけど、お前の父親がそれを見たら悲しむんじゃないかって思ってしまった」
「いいよそんなの気にしなくて。どうせ捨てられたんだから」
「それは聞いた話であって実際はわからないだろ?
何か事情があったかもしれない。
この世の人間には全て父親と母親がいる。
人間は空から降ってきたりはしない。ちゃんと人間から産まれてくる。どんな極悪人にも天使のような人間にも父と母がいる」
「父と母がいい人間とは限らないけどね」
「まあ、そうだな。親子でも命を狙ったり殺したりすることもあるからな。
でも愛情を惜しみなく捧げる親がいるのも事実だ。
子供の為なら自分の命をも投げ出す親だっている」
「いいな。そんな親に育てられる人間は」
「俺はフランのことも、自分の子供みたいに思ってるよ。
いざとなればお前の為に命を捨てることも出来る」
「え……、でも死なないで!!
僕は強くなるから!! 守られなくていいように強くなる!!」
言いながら、これどこかで聞いたことあるなと思った。
あそっか。メアリーちゃんが言ってたんだ。
守られなくていいように強くなるって。
また一つ、強くなりたい理由が出来た。
ジェームスさんは笑いながら僕の頭をぐしゃぐしゃ撫でた。




