必要な戦い
トニーがフランの剣を止めており、接触した刃同士が小刻みに揺れている。
そのままの状態でトニーがフランに語りかける。
「お前の相手は俺だ」
フランは微笑を浮かべながら顔を近づけそれに答える。
「今まで俺に勝ったことないでしょう?」
「手加減してもらってるとは思わなかったのか?」
トニーも微笑でそれを返す。
ナターシャを二人から引き離す。
ゼインがリオールを抱えたまま、私とナターシャも含めた結界を張る。
野獣が徐々に広間から移動し、半分は戸の中へ入っているようだ。
「ナターシャ……こちらを裏切り敵に味方するとは。
お前を生かしておくわけにはいかんな……」
アストラが剣を手に持ち階段を下りてきている。
それを見てすぐさまアーシュが走り出す。
「俺が行く!! ゼイン! そっちは任せた!!」
「私も!!」
アーシュの後を追い結界の外へ出ようとするとゼインに腕を掴まれる。
「行くな」
ゼインの力が強く振り払えない。
「離して!」
「駄目だ! アーシュに任されたんだ!
俺はお前を守る義務がある!」
「私は向こうに行かないといけないの!!」
言いながら腕に力を入れるがびくともしない。
ゼインを険しい顔で見上げると、悲痛な表情を浮かべていた。
「もうこれ以上お前が傷つくのを見たくない。
俺のそばにいてくれ。絶対に守るから」
もう片方の手で掴んでいるゼインの手に触れる。
「みんなはもう十分傷ついた。私だけ守られて無傷は嫌なの。
みんなと一緒に戦いたい。傷を癒やすことが出来なくてもみんなの近くにはいたい」
「だが……俺はお前に傷がつくと自分が傷つけられるより痛むんだ。だから……」
「ありがとう。いつも大切に守ってくれて。
私もそうだよ。だから、みんなの傷を減らすために行くんだよ」
目をちゃんと見て、しっかり笑って見せる。
そしてゼインの手から自分の腕を引き離す。
ゼインはそれ以上言葉を続けなかった。
「ありがとう」
そう残しその場を離れた。
アーシュの元へ駆けている途中、アーサーとザイオンが人の姿に戻っているのが目に入る。
ザイオンが剣をおもちゃでも扱っているかのように左右に揺らしながら話し出す。
「今の国王は俺なんだから従えよ」
アーサーがフッと笑いながらそれに反応する。
「父上が死んでいて良かった」
「なんだいきなり」
ピクリと眉が動く。揺らしていた剣を止める。
「だってそうでしょう?
欲に溺れた醜い兄上を見なくていいから」
小馬鹿にしたように笑う。
「ハッハ……言うようになったな」
「そして兄上は勘違いしてらっしゃる。
国王になれば全ての国民が従うとお思いではないか」
「当然だろう。国王なんだから」
眉をしかめて返す。
「フフ……そこが違うんですよ。
国民だって馬鹿じゃない。以前からあなたの行いを見ていて国王に相応しくないと思っていた者も大勢いる」
「なんだと……
ではそいつらを全員処刑してやろう。
歯向かうやつは全員殺してやる」
呆れた顔をして溜め息を吐く。
「だからです。あなたのその思考が国民が従わない原因です」
「言わせておけば……」
ザイオンが剣を構えアーサーの元へ素早く動く。
アーサー目掛けて風を斬りながら剣を振り下ろすが、寸前の所で避けられる。
と同時にアーサーはザイオンへ左から右へと剣を振った。それをザイオンが剣で防御する。
互角にも見えそうだが、アーサーが優勢だろう。
ザイオンの必死な形相に対し、涼しい顔で応戦している。
それを尻目にアーシュとアストラの元へ足を進める。
後ろ姿のアーシュへ声をかけようとすると、先にアストラが気付く。
初めて会った時のような笑顔を向けられる。
「やあ、待ってたよ。早速始めようか……
初めてのきょうだい喧嘩を」
「アーシュ……」
心配そうに声を出すと、軽く私の方を振り返る。
「大丈夫。魔剣の使い方がわかってきたから、だいぶ強くなってるよ」
「その程度の魔剣で使えると言えるのか?」
アストラは腰に付けていた剣を抜き鞘を捨てる。
その数二本。右手には長い剣、左手にはその半分ほどの長さの剣だ。
「二刀流!?」
思わず声を上げる。
「驚くのはまだ早い」
そう言いながら持っている剣両方に力を込める。
あっという間に剣を水が取り囲む。
私たちを見て目を細める。
「知っているか? 水の力は強力で、それだけで鉄をも切ることが出来る」
そう言い、その場で兵士たちのいる方へ長い剣を向けた。すると、剣の先から鋭い水流が勢いよく噴射され、兵士数人が鎧ごとその水流に突き刺された。血しぶきが上がり、周りの兵士たちが恐怖におののき叫び声を上げる。
「面白いだろう? これを使えば場所を移動することなく攻撃が出来るんだ。
……そうだ! 一発の攻撃でどちらが多く兵士を殺せるか勝負をしよう!」
それを聞いた兵士たちが我先にと声を上げながら大広間から逃げ始める。




