表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
看護師が異世界の令嬢に転生しスキルを使って無双する話だったハズなのに!?  作者: VANRI


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/96

なすべきこと

 次はミアに剣を向ける。

ミアは逃げようとしているが、どこに逃げたらいいかわからずその場で右往左往している。

 走りながら今度は右上に剣を上げ、ミアに届く位置まで行き思い切り振り下ろす。


 剣と剣が接触した金属音が辺りに響き渡る。


「お前いい加減にしろよ……」

アーシュが怒りを含んだ瞳で睨みつけてくる。


 私の剣を力強く止めている。

私は精一杯の力で押し返しているが、アーシュにとっては軽い力だろう。

 私は剣を突っ返し後方へ距離をとった。



 皆の視線が私に注がれる。

困惑や驚きの表情を浮かべたり唖然としていたり、

それぞれが動揺しているのが伝わってくる。


 やっとだ。やっとみんなと目が合う。

こうまでしないと誰も私を見ようとはしなかった。


 一人一人を確かめながら、見回しゆっくり言葉を伝える。


「私……、気は確かよ。狂ったわけじゃない。

操られてもいない。裏切ったフリもしてない。

そして……」


 大きく息を吐く。 


「いい加減にするのはあなたたちの方よ!!」


 声を大きくしたまま続ける。


「辛いし悲しいし驚きもあるんでしょう!?

でも今は悲しみに暮れる時じゃない!!

悲しみも痛みも後から私が一緒に乗り越えるから!!

一人にしないから!!

それが消えるまでずっとそばにいる!!


 ……だから今は力を貸して」


 最後まで大声は続かず、言葉の終わりは懇願を込めた弱い言い方になってしまった。

 言いながら辛くなってきたからだ。

みんなの辛さや苦しさは計り知れないだろう。

でも今それに飲み込まれてしまったらもう……


 こんな言い方しか出来なくて本当にごめん……

本当は一人一人を抱き締めたいよ。

たくさんたくさん話を聞いてあげたい。

痛みや苦しみを少しでも和らげたい。


「私が攻撃した時、誰一人として死を受け入れようとしなかった。

 これは生きる意志があるってことでしょ?

なら今は動く時よ。


 ……今動かなかったら全てが終わる」



 みんなと共に生きたい。

ここで誰一人として失いたくない。

 お願い。どうかこの想いを誰か……



「なんだよ偉そうに……」

アーシュが苦虫を噛み潰したような顔を見せる。


「誰も戦わないなんて言ってないだろ……」

トニーが不貞腐れたような顔をこちらに向ける。


「メアリー様! 私は精一杯やりますよ!」

ミアは涙を浮かべている。


 ゼインは笑い出した。

「ハハ……一番非力な者に言われては目も当てられんな。

 それでは痛みを感じるのはもう少し後にしよう。

その代わり、それが癒えるまでそばにいてもらうからな」

言いながら目を細めてこちらを見てくる。


 ドレイクやカイトはゼインが笑みを浮かべているので安堵の表情になった。



 一部始終を見ていたアストラが口を開いた。


「ゼイン。お前はこちら側だろう。

これまで数え切れない程の命を奪っておいて、

今更そんな命の大切さを問うような者に付くのか?」


 ゼインはアストラに目をやり話し出す。

「アストラか……。産まれてすぐに死んだと聞いていたがまさか会えるとはな」


「なんだ……? 思い出話でもするつもりか?」


「我々は同じ年の産まれなんだ」


「だから何だ」

アストラが険しい顔でゼインを見ている。


「この年に産まれた王族の者は強い魔力を持つと言われていた。だから、各国の王が競って世継ぎを産ませようとしたが、結果我々二人しか産まれなかった。

 時として、強い魔力は国家を揺るがす事態を招くことがある。

 そして強い魔力を持つ者は、他者の魔力を感じ取ることができる」


 アストラは軽く溜め息をつく。

「話が見えんな」


「我々は人とは違う。

我々にしか見えないものがある。

 だからこそ間違った道に進んではいけなかった。

 だがお互い、力の誤った使い方をしてしまったようだ」


 ゼインのアストラを見る目が優しくなる。

「我々は違う場所で出会っていれば、

 唯一無二の友になれたかもしれんな」


「何をフザケたことを……」


 アストラの言葉を聞かず話を続ける。

「お前のさっき言った通りだ。

俺は多くの命をこの手で簡単に消してきた。

正直、今もその重みがよくわからない。

だが……」


 ゼインが近付いてきて、私の手をそっととり微笑む。

「メアリーを悲しませたくない。

もう悲しませないと決めたんだ。

 だから、メアリーやメアリーが大切に想う者のために戦う。

『メアリーを悲しませない』というだけで戦う大きな理由になるのだ」


「茶番だな。そこで仲良しごっこでもしてろ。

命の重みを説き、理想論ばっかり掲げて何になる。

現実との違いにただ苦しむだけだろ」


「違う!!」

私は思わずアストラへ声を出す。


「理想を掲げなければ近づくことも出来ない!!

 それを掲げ、近づこうとすることに意味があるんだ!」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ