対峙
「そんなの受け入れるわけがない!!」
即座に否定する。
また王が微笑を浮かべ口を開く。
「そうそう、ミアも役に立った。
逐一、お前たちのことを報告してくれたからお前たちの動きが手に取るようにわかった」
「え……ミアが……?」
ミアを見ると顔面蒼白して震えている。
私の視線に気付いたのか視線が合う。
だから国王が野獣のことも知っていたのか……
ミアが震える声で言葉を発する。
「ち、ちがうんですメアリー様……!
国王様が、心配だからって……メアリー様が危険に晒された時に……すぐ助けれるように、報告をしてくれと……」
ミアの言葉に嘘はないと思う。
何も知らずいいように使われていたのだろう。
……だがどうする。この状況。
こちら側の誰もが戦意喪失した状態でここから逃げることが出来るのか……
「メアリー……」
階段の中腹からの声はアストラだとすぐわかる。
「父上は戦をなくすために戦っておられる。
多くの王がそれぞれの国を支配するから争いが起きる。
一人の王が統べれば人が戦で命を落とすことはなくなる」
以前見せてくれた優しい笑顔を向けられる。
「やっと兄妹が揃ったんだ。
父上を支え、共にこの国を創っていこう」
ああ、愛しいアストラ兄さん……
すぐにでも駆け寄って抱き締めて言ってやりたい……
「あなたは間違ってる」
アストラをしっかり目で捉える。
アストラは笑顔を消しこちらから視線を動かさない。
「あなただけじゃない、この王から間違ってる」
アストラの眉間に皺が寄るのがわかった。
それでも続ける。ここで引くわけにはいかない。
「争いを無くすという目的は素晴らしいと思う。
だけど、そのために人を傷つけたり殺したりするのを当然だと思う神経が狂ってる」
「そうか……」
アストラがまた感情を消して言葉を述べる。
「それでお前はどうすると言うのだ。
大して力のないお前と、戦う意思がなくなってしまった他の奴らとで何が出来る。
命が大切と言うなら、尚更今どんな選択肢が一番正しいかわかるだろ。
未熟ながらも国を統べる立場なのだから、そのくらいの判断は出来るはずだ」
周りをもう一度確認する。
アーシュは驚きだけでなく、父からの言葉に痛みを感じているのだろう、その場から動けずにいる。
トニーは父親の所へ行きたいが、どう動いていいかわからない様子。また、信じていた国王からの裏切りを知りショックを受けていることは容易に想像出来る。
ゼインも両親を殺されていたことを知り、動揺こそ見せないが余裕のない表情に見える。
カイトやドレイクはゼインのそばにしっかりと待機している。
ミアはまだ動揺が続いており、若干の震えが見てとれる。怯えた顔で国王を見つめている。
ナターシャは変わらず杖をしっかり持ち、私たちの話を聞きながら己に攻撃が来ないかと周りを警戒し、不安な表情を浮かべている。
アストラの言う通り、全員まともに戦える状態ではない……
アストラが口を開く。
「父上の意思に反する者は全て殺してきた。
今までそれに例外はない。
……わかるよな、この意味が」
他の誰でもない、私のみに向けられた言葉だとわかる。
そして、わかった。
自分がなすべきこと。どう動くべきか。
アストラを見上げ、精一杯の笑顔を見せる。
「……わかるよ、兄さん。
ありがとう。どう動けばいいか、今わかった」
そして剣を抜く。
その刃をゼインへ向け走り出す。
ゼインはすぐさま気付くが、事態が飲み込めず動こうとしない。驚きの表情でこちらを見ている。
それに構わず剣を左上に高く上げ、そこからゼインの胴を目掛けて勢いよく振り下ろした。
剣と剣のぶつかる音がして剣を持つ手に衝撃が走る。
ドレイクが自分の剣で私の剣を止め私の目を捉える。
「メアリー嬢! 気は確かか!?」
カイトは私の動きに動揺し狼狽えているのが明らかだ。
ゼインはまだ驚きを隠せないでいる。
全て想定内だ。剣術の稽古をしたといっても、私の剣なんて素人に毛が生えた程度でしかない。
簡単に止めることが出来るに決まっている。
国王に目をやると、面白そうに笑みを浮かべている。
ドレイクの剣を弾き、後ろへ下がる。
体勢を変えて次はトニーの元へ。
剣を構えながら走って行く。
トニーはゼインへ斬りかかったのを見た後なので、
自然と剣を抜き構える。
トニーの得意な突きをトニーの右肩目掛けてやるが
いとも簡単に避けられる。
そして、すぐさま私の刃を自分の剣で押さえ、剣を地へ向けさせる。
「何やってんだよ! 操られてるのか!?」
フフと笑い声を出す。
「いつぶりかな、剣を交えるのは。
剣術の稽古をつけてくれたもんね」
剣を押さえられ身動きが取れないまま会話をする。トニーが必死に現状を把握しようとしている。
「裏切ったフリでもしてるのか!?」
トニーの瞳を見ると、困惑を露わにしていた。
私と目が合うと剣を押さえる力が弱くなったので
素早く剣を引き抜いた。




