国王
「なんで……」
アーシュは言葉を失いその場に呆然と立ち尽くしている。
私は女王様と出会った時と違い、この王に何の感情も湧かないことに疑問を覚える。
記憶がないお陰でアーシュほどの驚きもショックもない。
ゼインが国王へ声を上げる。
「国王! 俺はあなたに救われた!
だからこそ、あなたとの約束を守りメアリーに魔力コントロールをさせ、守ってきたというのになぜ命を……
そしてこの兵士たちが死者ということは、生き返らせる方法があるというのか!?」
トニーもゼインのそれに続いて語りかける。
「国王様! 我々はあなたを慕っておりました!
お亡くなりになられたと聞いて国民全員が深い悲しみに打ちひしがれました!!
慈悲深いあなたがこんなことをするとは思えない!」
またしばしの静けさが訪れる。
その静けさを切り拓き国王の声が響き渡る。
「ようやく全てを話す時が来たようだ……」
アストラは頭を垂れたまま動こうとしない。
皆、国王の次の言葉を全身で受けようと身構えている。
国王が静かに語り出す。
「全てはメアリー……、
お前が産まれたことから始まった」
まさか自分の名前が出てくるとは思わず、心臓の鼓動が一気に速くなる。
皆の視線が集まっているのが見なくてもわかる。
手に汗を感じ剣を握っている手に自然と力が入る。
「アストラが産まれた時、魔力の大きさに驚いた。
これは我が国の脅威になるかもしれないと国外へ追放した。
すると、また強い魔力を持ったお前が産まれた。
この二人の魔力を使えば世界を支配出来ると思ったのだ。
アーシュは残念だった。一般人より少々強い位の魔力しかなかった。これは使い物にならない。
メアリーが死んでは困るのでアーシュを身代わりにすることを提案したのだ」
アーシュが気になり目をやるが、まだ国王から目を離せずにいる。傷ついているだろうが、国王が生きていたという事の驚きからまだ抜け出せずにいるようだ。
アーシュの耳を塞いでやりたかった。
実の父親からこんな言葉聞かされるなんて。
「新しい国を創ることにした。
我が考えに同意する者だけを集めた。
確固たる国にするために」
国王がゼインに目を落とす。
「ゼイン、お前は生き返らせる薬があるのかと聞いたが、それはない。
死んだ者はここにいない。
我に同調する者を、死んだことにして我が国に取り込んだ。それだけだ」
クククと笑いながら今度は私に目が向けられる。
「お前の暴走は素晴らしかった。
ゼインを使い、幼いお前に差し向けたら思惑通りに大暴走が起こった。
あれで死んだことにして、多くの人間をこの国に連れて来ることが出来た」
あれは全てこの王の計画だったというのか。
そのせいで多くの人を傷つけた。
「あなたが父に指示を……?
では尚更、メアリーたちの命を狙う意味がわからない!」
ゼインが驚きと困惑を露わにする。
国王から返答が降ってくる。
「何も驚くことではない。
親が子を殺し、また逆に殺されるのは珍しいことではなかろうて。
ゼイン、お前もそうだろう。
お前の親はお前を殺そうとしていたではないか」
ゼインがスッと悲しい表情に変わる。
それを確かめ国王の話は続く。
「それを助け、お前の父と母を殺してやったのに」
「そんな……!!
国外追放したと言ったではありませんか!?」
「国外追放しても、死んでも、
会えないのだから殺してもよいだろう。
お前は生かす価値があったから生かした。
メアリーに魔力をコントロールさせるという役目があった」
また私の方に視線が来るので目が合う。
こんなに離れているに恐ろしさを感じる。
「お前の魔力は、大きいだけで何の役にも立たなかった。
使えないその力は、いつ爆発するかわからないただの爆弾でしかなかった。
そこで、ゼインにそれをコントロールする役目を与えた。命を落とすかもしれないというのに、ゼインは快く承諾した。
まあ、結局レアン王の力を借りたようだが、コントロール出来れば何でもよい」
なんだこの人は。
人を利用するだけ利用して、自分は高みの見物か?
「だが、また使えなくなるとは情けない。
何のために生かしたかわからんではないか。
たった一人の野獣の子供を殺したぐらいでなんというザマだ」
「あんたは命の大切さを全然わかっていない!!」
国王を睨み上げ大きな声を発する。
しかし、もちろん国王は顔色を変えず、
私の言葉など耳に入れない様子で話を続ける。
「まあいい。国を創るのは人手がいる。
いらないものは殺そうと思ったが、それらを乗り越えたのだからそれなりの力はあるのだろう。
殺して国を奪う予定だったが、お前たちをこの国に引き入れてやってもいい」




