目的地
「俺の国にもこれが届いたのだ」
そう言って懐から黒い手紙を見せる。
「お前もだろう?」
「うん……」
「そう思って、ここに来る前にお前の国に寄ったのだが、すでに国外に出た後だった」
「じゃあ、あちこちの国へ招待状を出してるってこと?
ゼインはここがどんな国かも知っているの?」
ゼインは少女へ目をやる。
「詳しくは知らん。だが、怪しい動きをしていることはレアン様も気付いていた。
それより……」
悲しげな視線が私の方へ戻って来た。
「お前はまた魔力が使えなくなってるのか……」
「わかる?」
「ああ。今回は以前より厄介だな。レアン様であれば何とか出来たかもしれないが……」
レアンの姿が昨日のことのように蘇る。くしゃっと笑う顔、誰よりも大きな身体と心を持ち、皆に愛情を惜しみなく与えていた偉大な王だった。
「そう言えばレアン様は?
レアン様の所にも招待状が届いたんじゃ……」
「レアン様は……」
ゆっくり小さくなっていくゼインの声に不安を覚える。
儚げな眼差しと視線が重なる。
「亡くなったんだ」
「そんな……誰かに命を……?」
そんな一言じゃ信じられない。あんなに元気そうだったのに。
「ハハ……あの爺の命を奪える奴はおらん」
ゼインが寂しそうに笑った。
「ただ命を全うしただけだ……
アーサーが教えてくれたから会いに行けたが、
とても穏やかな最期だった」
「そうなんだ……。また会いたかったな。
あんな偉大な王は今まで会ったことがなかった……」
「ああ……」
命はいつか終わることを再認識させられる。
死の前に人は抵抗出来ない。抗えない……
わかっているのにこんなに辛い……
と、その時、一本の矢が少女目掛けて一直線に飛んできた。魔力を帯びているのがわかる。一本だが黄色の炎で包まれているためか強大な力が込められているようだ。
少女に矢が当たる寸前、反射的に持っていた剣を振った。狙った通りに矢に当たり、真っ二つに折れた矢は勢いよく地べたに叩きつけられた。
少女に声を掛ける。
「あなた名前は!?」
「ナターシャ……」
「トニー! この子の杖を!!」
「は……?」
訝しんでいるトニーから杖を受け取り少女へ渡す。
「お前何してるんだよ!
またさっきみたいに……!」
トニーの声に耳を貸さずナターシャに語りかける。
「ナターシャ!
これを使えば魔力を増大出来るでしょ?
これを使って逃げたらいい」
周りを兵士が囲み始めている。鎧の音がガシャガシャとどんどん大きくなり、木々の間に兵士が見え隠れしている。
ナターシャが杖をしっかりと抱きかかえ、ほくそ笑む。
「これを使って自分の命が奪われるとは考えないのか?」
「杖があるのと無いのでは、あなたの生き残れる確率が大きく変わるでしょ?
確かに命を狙われる可能性もあるけど、
あなたが生き残れる選択肢を選ぶよ」
「お人好しが命取りになることもあるだろうに……」
ナターシャは眉間に皺を寄せ目を逸らした。
そう時間が経たないうちに、全周囲を甲冑を付けた兵士たちに囲まれた。矢や剣をこちらに向けており、いつでも攻撃出来るよう準備している。
顔も見えないため彼らの表情を読み取れない。
ゼインが前に出て、兵士たちを見回しながら話す。
「そちらが招待したというのに、この歓迎の仕方はいかがなものか。
これではまるで、各国の王を殺すためにおびき出したようなものではないか」
この状況からそうだろう。
何かのために殺すのが目的だったとしか思えない。
この人数であったとしても、ゼインの力やアーシュやトニーの力を合わせれば、戦ったとしても勝てるかもしれない。
だが、敵味方ともに皆無事にとはいかないだろう。
ゼインは兵士の一人に剣を向ける。
「城に案内しろ。王に会ってやる」
その兵士の元に数人の兵士が集まり、何やら相談を始めた。
それが終わると兵士の一人がゼインの元へ一歩前に出た。
「ご案内致します」
兵士たちに連れられて城に入ることになった。
前方にも後方にも兵士に囲まれていて、囚えられているのと変わらないと思った。
だが、こうしないと何も解決しない。
自然と剣を持つ手に力が入る。
ゼインは堂々と先頭を歩き始める。ドレイク、カイトがそれに続き、その後に私たちが続く形になる。
トニーは動揺せずそれに従い、アーシュは周りの様子をたびたび気にしているが冷静さを保っている。
ミアは不安そうな表情を見せたが、目が合うと力強く頷いてくれた。
ナターシャは杖を落とさないようしっかり抱きかかえ歩いている。
さあ、やっと終わりが来る。
いや、これが始まりなのか……?




