再会
「すまん! 遅くなった!!」
聞き覚えのある落ち着いた声に見覚えのある黒いマント。後ろから見ただけでもすぐわかる。
「ゼイン!!」
ゼインは片手で大きな剣を持ち、ドラゴンの爪を食い止めていた。そしてその剣でドラゴンの手をはじき、よろけさせる。
右上に剣を高く上げ、ドラゴンの首へ目にも止まらぬ速さで振り下ろした。
肉を切る大きな音と共に切り口から血が噴き出し、草木に激しく飛び散る。
ドラゴンには抵抗する暇も与えられなかった。
ゼインが素早くマントで私を守ってくれたので血しぶきを浴びずに済んだ。
マントの中の私にゼインから声がかかる。
「大丈夫か?」
私を見た途端にゼインが沈んだ表情を見せる。
「傷一つ付けさせたくなかったのに、こんなにたくさん……
もっと早く来ることが出来ていれば……」
「そんな……!
来てくれなかったら今頃生きていたかどうかもわからないよ! こんな傷くらい大丈夫!」
しっかり目を捉え笑顔で言う。
「本当にありがとう」
ゼインの目尻が下がる。
「優しいなお前は……
そばに置いておければこんな目には遭わせることはないのに……」
「メアリー様!」
ミアがこちらに走ってくる。
マントから出て声の方へ目をやる。
「ミア! 大丈夫!? ケガは!?」
「私は大丈夫です。かすり傷くらいで。
メアリー様は!?」
ミアは見たところ足を引きずることなく歩いているし、大きな傷もなさそうだ。
「私もこの通り!」
笑顔を見せ安心してもらう。
ミアはそれを聞いて安堵した顔になった。
だが、実際は全身に痛みがある。動かせば動かした部分に痛みが走る。ただ骨折まではないだろう。
……まだ動ける。
「ゼイン様がメアリー様を助けてくださったのですね!」
その時、遠くから私とミアを呼ぶ声が聞こえた。
アーシュの声だ。
「アーシュ!!」
アーシュは私の声に気付き、こちらへ向かって来る。木々の間からようやく姿が現れ始める。
「メアリー! ミア! 大丈夫か……!?
……ってゼイン!?」
「ゼインが助けてくれたの!」
「それは良かった……」
「それよりそっちは!?
トニーの姿が見えないけど……」
「ああ、俺もトニーもこの新しい剣のお陰で助かったよ」
と、剣を自慢気に見せてくる。
「ほう……魔剣か」
ゼインが面白そうに剣を見つめている。
「トニーは今、あの女の子を捕まえてる」
アーシュの後をついて行くと、トニーが黒髪の少女の前に立っているのが見えてきた。
剣を少女に向けており、少女から杖を取り上げている。
少女は抵抗することなくその場に座り込んでいる。
それを見たゼインが呟く。
「賢明な判断だな」
「え?」
ゼインの方へ目をやる。
ゼインが話し始めた。
「あの子供は大した魔力を持っていない。
あの杖で小さな魔力を増大していたに過ぎない。
杖を取り上げれば何も出来ないだろう」
少女が声を張り上げる。
「さっさと殺せ!!
どっちみち失敗すれば殺される!!」
「誰に殺されるの?」
思わず近づきながら訪ねる。
「……この国の王に……」
少女は俯き、消えるような声を出す。
「じゃあ一緒に来てもらうしかないね」
「は!?」
「はぁ!?」
トニーと少女の声が同時に発せられる。
「だってこのままここにいたら殺されるんでしょ?
それなら置いていけない」
「命を狙ってきた奴を連れて行くのか……」
ゼインが呆れたような声を出す。
「ゼインが言ったじゃない。
この子の魔力は大したことないって。
それは近くにいても大丈夫ってことでしょ」
「そういう意味で言ったのでは……」
それに続けて大きな溜め息をつく。
「ああ、もう勝手にするがいい。
どうせ言っても聞かないのだから……」
トニーたちも観念した表情を浮かべている。
「我が王!!」
また聞き覚えのある声が聞こえた。
息を切らし、ピンクの髪を揺らしながら筋肉隆々の身体から汗を噴き出しているのが遠目からもわかる。
「ドレイク!!」
アーシュが明るい声を上げた。
「何も言わず、いきなり、走り出した、と思ったら……」
途切れ途切れドレイクが言葉を発している。
「やっと来たか」
ゼインがフッと笑い、空に向かって声をかける。
「お前も隠れてないで出て来い!」
強風が吹いたかと思うと、空から真っ黒な生き物が勢いよく降りてきて着地した。
その姿に喜びを抑えきれず駆け寄る。
「カイト!!」
呼びかけると目が合い、照れ笑いを浮かべている。
「元気にしてた!?」
「はい……」
と、目線を逸らしながら返事をする。
「コイツがお前に会いたがって、しょっちゅう俺の国へ来てはいつ行くのかと聞いてきてな。
今回連れて来てやったのだ」
ゼインが笑いながらカイトに目をやる。
「フフ……私も会いたかったよ」
カイトに目をやりながら伝える。
赤面しているカイトが可愛らしい。
「それより! ゼインは、どうしてここにいたの?」
素朴な疑問をぶつける。




