魔剣
促されるまま魔剣に触れてみる。
流れ作業のように次から次に剣に触れていくと、
触れた瞬間に他の剣とは違う感触の一本があった。
「これかな……?」
その剣を箱から取り出し、抜いてみる。
アーシュが背後から覗いてくる。
「吸い付く感じあった?」
「うーん……魔力を使えたらわかりやすいのかもしれないけど、なんか温かい感じ……」
「温かい? 俺のにはそんなのなかったけど……」
「おや? 変わった剣をお選びですね……」
その声の方を振り返ると、白髪で腰の曲がった年老いた男性がこちらに近づいてくる。
私は選んだ剣に目を戻した。
刀身は赤みを帯びており、窓からの日差しが反射すると赤い光を壁に映す。太陽のようなマークが鞘や持ち手に付いている。他は目立った飾りはない。
不思議と手に馴染み持ちやすい。
老人が私の横まで来て、同じように刀身を眺め、
そして刃先を指差す。
「この鮮やかな紅色は、人を殺して赤く染まったから」
「え!?」
驚いて剣を落としてしまいそうになる。
老人はフフと不気味な笑みを浮かべ口を開く。
「とも言われていましたが……
この美しい刃は人を傷つけたことがないでしょうね」
「温かい感じがするのは何故ですか?」
「それを感じるのは、お嬢さんだけでしょう。
他の人間が触れても何も感じないみたいですよ」
「そうなんですね……」
この剣に炎の魔力が加われば、さぞ威力のある武器になるだろう。魔力がなくてもなぜか伝わってくる。
「でもやっぱり、今の私が持っていても意味がないと思う……」
「それはその剣と過ごしてみないとわからないでしょう?」
老人が優しく続ける。
「魔剣は、それぞれ何か使命を持って産まれてくると言われています」
老人が私と剣を代わる代わる見ながら語る。
「この剣は、あなたにその使命を探して欲しがっているように見えますよ」
お金がなかったが、店主である老人が、今持っている剣との交換でいいと言ってくれたので手に入れることが出来た。
帰り道、アーシュも気に入っているようで大切そうに剣を握っていた。
私も大事に抱きかかえ道を進む。
この剣の使命は一体なんだろう。
あの店主の説明を聞いていると、剣がモノではなく生き物のように思えた。
なんだか新しい仲間が増えたような感覚だ。
――――――
元々、招待状の目的を調べるためにこの国までやって来た。途中で見たフランやザイオン達のことも気になる。誰に雇われているのかすらわからない。
そして、この国までやって来ても大して収穫はなかった。
あの城の近くまで行けば進展があるのだろうか。
途中で会った子供たちがここに招かれる意味がわかるだろうか。
森を越えれば城の周りにあった湖に辿り着く。
御者には森に入る前の街で待っていてもらうことにした。
馬車を守るという名目だが、危険な目に遭わせたくないというのが本音。何も言わないが御者も気付いていることだろう。
「どうかお気をつけて」
「ありがとう」
御者としっかり握手を交わす。
森の中は細い道が続いていた。
一本道なので迷うことはないらしい。
だが、道が狭く馬車は通ることが出来なさそうだ。
馬ならなんとか通れそうだが、その先がどうなっているかわからないため、歩いて行くことにした。
太陽が少し傾き始めた時、前から人が歩いて来ているのがわかった。
小柄な人が一人。木々の隙間から得ることが出来る情報は少ない。
そのうちはっきりと姿が見える位置まで近付いた。
黒く長い髪、灰色のワンピース。13歳前後の少女。
右手に杖を持っているが、歩くためではない。
大きな石がはめ込まれており、魔法が使えるのではないかと思った。
通り過ぎる際、その少女が軽くつまずき杖を落としてしまう。
私はそれを拾おうとしゃがみ込んで杖に手を伸ばした。少女も同じように背を低くする。
少女が私の方を見たので目が合い、にっこりと微笑まれる。
「ありがとうございます、メアリー姫」
パッと手を引っ込め急いで立ち上がる。
その言葉を聞いていたトニーとアーシュに二人の背後に行かされる。
姫としてここに来たわけではない。
街で名前を聞かれていたとしても、姫という言葉は使っていないので誰も知らないはず。
では何故この子は……
少女は自分で杖を拾い、ゆっくり立ち上がる。
そして私たちを見てニッと笑う。
「そして、アーシュ王子」




