共に生きる
「アストラ!?」
「大丈夫か!?」
泣きそうな顔で覗き込んでいる。
小さなナイフで腕の縄を切り始めた。
「何でここに……?」
「ここを通りかかったら、君が運び込まれるのが見えたんだ。
何人か人がいたから、そいつらがいなくなるのを待ってた」
縄がほどけるとアストラに抱き寄せられる。
「心配した。本当に良かった。良かった……」
「ありがとう……」
頭の上からアストラの声が聞こえる。
「俺とここで暮らそう」
「……え?」
驚いてアストラから身体を離す。
「でも私……みんなのところに帰らないと……」
「どうして?
もう魔力が使えないなら戻っても意味ないだろ?」
優しく諭すように言われるが、笑顔なのにどこか冷たい。
アストラの言う通りだ。戻ったところで何になる?
みんなの邪魔になるならいない方がいいのかもしれない。
「何で魔力のこと……」
「俺、子供の頃からわかるんだよね、魔力の強さとか。
わからない人も多いみたいだけど」
改めて私を観察するように眺める。
「君の場合は魔力が無くなったのではなく、
封じ込められてる感じがするけどな……」
「そうなんだ……また使えるようになるのかな……」
「なりたいの? 使えるように」
その言葉で目が覚めたような感覚になる。
魔力を使いたいか?
いや、使いたくない。怖い。自分が怖い。
また誤って人を殺めてしまったら……?
「じゃあ落ち着くまでここにいてよ。
自分の気持ちもよくわからないようじゃ、
何かあった時に乗り越える事が出来ないどころか、
潰れてしまうよ」
あれ? 私、なぜみんなと一緒にいたんだっけ。
何が目的だった?
「わざわざ辛いところに行くの?
嫌なことに接することなく、ここで幸せに暮らしてほしいな」
辛い……よね?
これまで誰かが死んだり、恨まれたり、裏切られたりして泣いたり苦しんだりしてきた……
ふと今の状況把握に戻る。
「アストラ! 早く逃げなきゃ!!
さっきの三人が戻ってくる!!」
「ああ……それは大丈夫。もうここには来ないよ」
「え? なんで……? まさかあの三人を……」
吹き出すアストラ。
「ハハッ……そんなこと出来る訳ないじゃないか〜。
他の国に向かってたから、しばらくここには来ないと思うよ」
立ち上がり手を伸ばされる。
「俺の家に行こう。今よりマシだ」
手を取り立ち上がろうとするが、数日の疲労や空腹で膝がガクッと折れてしまう。
もう片方の足で試すも同じ状態。
見兼ねたアストラが抱きかかえてくれる。
「もうこんな目に遭うことはない。俺が遭わせない。
さあ、行こう」
アストラに抱えられて案内された家は、こじんまりとした木の家だった。
森の奥にあり秘密基地みたいだと思った。
家の中は綺麗に片付けられており、また古さから長年ここで暮らしているのだろうと推測できた。
一旦、ベッドに下ろされる。
「ゆっくりお休み」
目を瞑ると身体が溶けていくような感覚になった。
次に目を覚ました時、外は暗くなっていた。
窓から森が見えるが暗くて遠くまでは見えない。
目の前のテーブルには、スープやパン、焼いた肉などが並べてあった。香ばしい匂いに食欲を刺激される。
そういえばここ何日かちゃんと食べてなかったな。
「よく眠ってたね。さあどうぞ。
好きなだけ食べていいよ」
笑顔のアストラを見てふと思い出す。
「トニーが……!
私が捕まった時に、私の仲間が縛られていて痛めつけられてたの!!
助けに行かなくちゃ!!」
なんで忘れてたんだろう。こんなに大切なこと。
自分が嫌になる。
いつも私のことを心配してくれていたのに。
「私たちが初めて会った丘にまだいるかもしれない!!
お願い! 行かせて!!」
アストラが静かに口を開く。
「無理だよ、そんな身体じゃ。
また倒れるに決まってる。それにこの暗闇じゃ迷って森から出れなくなる」
「そんな……
どうしよう……今も苦しんでたら……」
ミアが見つけることが出来なかったら。
ケガだけじゃなく命も……
考えれば考えるだけ悪い方に考えてしまい、涙が出てくる。涙を拭いても拭いても止まらない。
私のせいで……
「俺が行くから」
「え……?」
涙を拭きながら顔を上げる。
「見てくるよ、あの丘。
俺はここらの地理に詳しいから迷うことはない」
「本当に!? 行ってくれるの!?」
アストラが上着を着ながら後ろを振り向く。
「うん。だからメアリーはちゃんとご飯食べててね」
笑顔でそう言い、外へ出て行った。




