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看護師が異世界の令嬢に転生しスキルを使って無双する話だったハズなのに!?  作者: VANRI


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避けられない対面

 人の話し声で目が覚めた。

両腕を後ろに縛られている。その状態で横たわっているので、床に触れる頬や腕から床の冷たさが伝わってくる。

 全身痛い。殴られたり蹴られたりしたのか、倒れた時にぶつけたのかわからない。


 どうやら私はまだ死んでないらしい。



 木で造られた小屋の一室。

この部屋は物置のようで人が一人やっと横になれるぐらいの広さしかない。


 隣の部屋から聞こえてくる声に耳を澄ませる。


「アンタがあの女忘れられないから殺そうと思っただけよ!」

モネの怒鳴り声が響いている。


「俺は戻って来たんだからもういいだろ!!

何で勝手に動くんだよ!!」

フランの懐かしい声も聞こえる。



 「今はその時ではないと言ったはずだ」

ギィーッと音を立て戸が開き、男がそう言いながら入って来たようだ。


 二人が口を閉じ、一瞬でしんと静まり返る。



「フラン、お前はモネの管理も出来ないのか」

「申し訳ありません……」


「使えないと思ったら殺せ。

たとえモネであっても容赦するな」

「は、はい……」



「モネ、お前のやっていることは、あのお方の命に背くこと。殺されても仕方ないと思え」

男が低い声で語りかけている。



 ちょっと待って……この声どこかで……



 木の壁の隙間から向こうが微かに見える。

特徴的な白い髪、それだけでレアン王の血筋だとわかる。

 この声からすると……



 アーサーの兄、ザイオン!?


 何でこんなところに……!?

あのお方? レアン王のことをそう呼ぶはずがない。

……それなら誰? 



「あの女は殺す前に俺が楽しませてもらう。

お前らの汚らわしい手で触るな!」


 戸を荒々しく閉め出て行った。



「くそッ! なんだよあのライオン!!

動物のクセに偉そうにしやがって!!

だいたい最初は殺せって命令だったのに、次は殺すなってなんなんだよ!!」

モネは苛立ちが収まらないようで壁を蹴り続けている。そのせいでドンドンと振動が伝わってくる。


 やはりモネは誰かに王女殺害を依頼されていたということか。



「いい加減にしろよ!」


 フランの言葉で一旦モネが静かになる。


「俺はお前の言うとおりになんでもやってるだろ?

これ以上何を望むんだよ……」

どんどん細くなるフランの声に切なさが伴う。


「あ? アンタの心の中にはずっとあの女がいるじゃない!!

身体だけ帰って来たところで中身は全然帰って来てない! 私が気付いてないとでも思った!?

 あの女がいるからよ!!

アイツが死ねばアンタは帰って来る!!」


「無茶苦茶言うなよ……」


「そうだ!!」

途端にモネの声が明るくなった。


「あの女の目の前で私を抱いてよ!

それならあの女も諦めるでしょ!?

あの女を傷つけたらあのライオンに何されるかわからない!

 でもこれなら出来るじゃない!!」


「は……? そんなこと出来るわけ……」

「私の言うことなんでも聞くんでしょ?」

今度はガラリと冷たい声に変わる。

「じゃなきゃライオンに殺されてもいいからあの女を殺すわ。

あの女を殺せるならその後にどうなろうと構わない」


「わかった。わかったから……」

 フランはモネをなだめるようにそう言うと、モネと小屋を出て行った。



 ……ここから逃げ出さないと!


このままでは、フランとモネに営みを見せつけられ、ザイオンにおもちゃにされ殺される!

 生き地獄じゃないか。


 縄できつく縛られているようでびくともしない。

何か尖った物はないだろうか。

縄を少しでも切れそうなものは?

 早く逃げないとあの三人が戻って来てしまう。


 炎はまだ出ないのだろうか。

手に意識を集中させてみるが、焦りもありうまくいかない。少しも出る気配がない。


 とりあえず身体を起こして周囲を見回す。

埃や蜘蛛の巣もあり、普段使われていない部屋なのだとわかる。

 敢えてなのか周りには何も置かれていない。



 途方に暮れている時、小屋の戸が開く音がした。

続いて私のいる物置に近付く足音。

音から察するに一人だと思う。

無言なので誰かはわからない。

物置の鍵をガチャガチャと音を立て開けている。


 しまった! 身体を起こしてしまった以上、

寝たフリは出来ない。

 寝ているならまだしも、起きているとわかれば何をされるかわからない。


 すっと物置の戸が開かれる。

息をすることも忘れてその様子を見守る。

戸が開くのがスローモーションにすら見えてしまう。

 無意味だろうが、壁にもたれかかり目を閉じる。



「メアリー……」


 

 聞き覚えのある声。

頬にそっと触れる指。


 これは……。


 恐怖が確信に変わり目を開ける。




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