ココロの胸の内
話し合いの結果、ブラウニーはルウの服を普段着、寝間着を含め5着を作り、シェナは対価にブラウニーにお菓子を作る事になった。
ココロさんに許可を貰い、
「よし、始めるか」
早速、お菓子作りに取り掛かる事にしたシェナ。
ちなみに、ルウはゼノンさんに任せて別室でブラウニー達が早速、服のサイズの採寸と服作りをしてもらっている。
ルウがゼノンさんの首周りの羽根を掴んだまま寝てしまったからだ。
ココロさんは汚れた服を着替えに、ユージーンは自分の部屋に戻った。
「さて、何かを作るにも、コメはこのままじゃ扱い辛いよね」
先ずは、コメを着手することにした。
コメはこのままでは硬すぎなら、先ずはコメを水で濁りがなくなるまで洗い、そこの深い器に洗ったコメとコメを覆うくらいの水を入れ、放置する。
「ついでに、あれも準備もしておきますか」
そう呟きながら、ムム芋、オニオン、ニンジン、肉と材料を次々と調理台に乗せる。
拳大のずっしりと重みがあるムム芋を5つ取り出し皮を剥いていく。
皮を剥き終えたら6等分に切り分け、鍋に水とムム芋、そして塩少々を加え火にかける。
次に、3日前に狩ってきたワイルドボアの売れ残りの塊肉を取り出し、
「風よ」
魔法で生み出した風の球の中に肉を入れ、
「『ミキサー』」
風の球の中で発生した風の刃でワイルドボアの肉はあっという間にミンチになった。
この方法はまな板や包丁が汚れ無くて便利なんだよね。
2分足らずで、塊肉は綺麗な挽肉になった。
次に、オニオンの皮を剥ぎ、荒く微塵切り。ニンジンも皮を剥き、細かい微塵切りにする。
そしてフライパンで野菜が透き通ってくるまで炒め、そこで挽肉を投入し炒め、塩、胡椒で味付け。
キッチンに野菜と挽肉の焼けるいい匂いが広がる。
フライパンの火を止める。
火を止めても、炒まった野菜と挽肉はジュージューと美味しそうな音を出している。
次に鍋で茹でているムム芋の一つに串を刺すと、ムム芋は難なく串が入る。
火が通ったムム芋をザルにあげ、
「あち、あちちち!」
茹でたての熱さに耐えつつ出来るだけ、水気を切る。
水気を切ったムム芋を熱い内に大きめのボールに移し、熱い内に潰す。
半分くらいムム芋が潰したら、炒めた野菜と挽肉、牛山羊のバターを一緒に混ぜ込む。
しっかり混ぜ込みつつ胡椒とショウユ少々で味付け。
味見。味見。つまみ食いと言う名の味見。
ホクホクしつつ、しっとりとした舌触りのムム芋に塩気の効いたワイルドボアの挽肉の強い旨味、野菜の甘味が口の中で広がる。
「うん。美味しい」
混ぜたタネがある程度冷めれば、タネを小分けにし、楕円形に成形する。
バッドに楕円形に成形タネを並べ、乾燥防止の結界魔法をかけ、冷魔庫で暫く寝かせる。
「これで、よし」
一通り料理の下拵えを終え、水に浸していたコメを見るが、まだ固いな。
もう少し浸けておかないと。
「うふふ、シェナちゃん、シェナちゃん」
「あ、ココロさん」
服を着替えに行っていたココロさんがキッチンに入ってきた。
だけど、なんだか、嬉しそうな顔をしている。
「ん?何かあったんですか?」
この数分の間に。
「あら?うふふ、分かっちゃった?」
ココロは嬉しそうに笑いながら、シェナに向かって小さく手招きをする。
「??」
「ちょっと来てみて」
そっと人差し指を口に立てて、静かにするように合図する。
嬉しそうに笑うココロの後を追うと、そこは、隣の部屋だった。
「そっとね」
そう言うと、ココロさんはそっと、部屋のドアを少しだけ開ける。
すると、
「~~、~~~、~~~」
ドアの隙間から小さな歌が聞こえた。
低く少しだけ掠れた声。小さくて、何を歌っているのかよく聞き取れないけど、だけど、どこか優しい、子守唄。
ドアの隙間から見えたのは、安楽椅子に座り寝ているルウを抱き抱え子守唄を歌っているゼノンさんの姿だった。
緩く揺れる安楽椅子。
角度でゼノンさんの顔はシェナ達からは見えなかったが、武骨で逞しい腕に抱かれたルウは安心したように寝るっている。
近くに置いてあるテーブルではブラウニー達が大きな紙の上に乗り何かを相談しながら書き込んでいる。
ブラウニーは体が小さいせいなのだろうか?
小さな子供がテーブルの上でお絵描きしているようにも見える。
なんだか、この部屋の雰囲気がとても暖かく感じる。
「・・・・・・ありがとう。シェナちゃん」
「え?」
小さく囁くようなココロさんの声。
ココロさんの方へ目を向けると、目尻を細め、微笑むココロさん。
だけど、その笑顔は優しいけど、どこか悲しみを感じた。
「あの人はね、子供が好きなのに、口下手で無愛想だから、小さい子に怯えられる事が多いの」
「ココロさん、」
「でもね、本当はね、ゼノンに、私の子供を抱かせてあげたかったの。
私が子供を望めない体だから、ゼノンから子供を無意識のうちに遠ざけてしまっていたのかも知れなかった。
だけど、シェナちゃんが此処に来てくれて、ルウちゃんやユージーンさんが来てくれて、ゼノンはとっても楽しそうなの、だからね、」
「すみません。ココロさん」
どこか思い詰めた思いのうちを話すココロの言葉にシェナは思った事を告げた。
「私にはゼノンさんが楽しそうなのかはよく分からないです」
「え?」
「だって、ルウを抱き上げるゼノンさん、いつもと変わらないんですもん。
ココロさんが側に居る時と同じ、無愛想だけど、とっても優しい、大切なモノを見守る目をしてますよ?」
「え?」
シェナの言葉にココロがポカンとした顔をする。
そんな時、
「ココロ、いるか」
「っ!は、はい」
部屋から聞こえていたゼノンの子守唄が途切れ、ココロを呼ぶゼノンの声が聞こえた。
ココロさんはゼノンさんの声にすぐに答え、部屋へ入る。
「どうかしましたか?ゼノン」
「少し、持ってきたい物がある。この子を少し頼めるか?」
「え?だったら、私が、」
「いや、私が、持ってくるよ」
そう言いながらゼノンさんは腕の中で寝ているルウをそっとココロさんに手渡す。
「あ、」
ゼノンに手渡された少し慌てながらもルウを優しく抱き止める、ココロ。
腕の中でグズる事もなくスヤスヤ眠るルウが可愛らしく、ココロは無意識に表情筋が緩んでしまう。
「・・・・可愛いな」
「・・・ええ、そうね。ルウちゃん、可愛いわねぇ」
「・・・・ああ、」
「あ」
ドアの向こうで部屋の様子を伺っていたシェナの目にゼノンさんが少し屈みココロさんと顔が重なるの姿が映った。
「ぁ、」
「・・・・・、すぐに戻る」
そう告げ、ゼノンさんが部屋から出てきた。
「ッ、」
「わぉ、お熱いですね」
「・・・・・・・ん」
少し笑いを含んだシェナの言葉に、ゼノンは小さく返事返し、そのまま部屋を後にどこか歩いて行ってしまった。
その時のゼノンさんの顔は赤くなっていた。
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