子ドラゴン
「キュ!キュイイイ!!!」
いきなりの子ドラゴンの甲高い叫びに4人は驚いた。
今いる部屋にはエマが結界を張っている為、子ドラゴンの声は外には漏れていない筈だが、小さな体似つかわしく無いほどの大声で叫んでいる。
「ちょ、どうしたの?おチビ、うお!?」
一番近くにいたシェナは、驚きながも、いきなり叫び出した子ドラゴンを慌てて宥めようとすると、
「キュウウ!!!!」
子ドラゴンがシェナに飛び付いた。
「ちょ!?おチビちゃ、っ!イタタタ!!爪!!また爪、首に刺さってる!!」
「キュウウウウ!!!!」
飛びついた子ドラゴンはそのままシェナの首筋に両手両脚の小さな爪を立て、今度は離さないと言わんばかりにしがみついていた。
「え?こ、これは一体??」
目の前の突然の出来事にユージーンは驚き呟いた。
「恐らく、シェナとまた離れる事に勘づかれてしまった様子ですね」
「本当にシェナに懐いているみたいですね」
「うーん、そうなんですよね」
ロベルトさんとエマさんが苦笑しながら話している。
「キュウウ!!キュウウ!!」
「痛い、痛い、おチビちゃん、落ち着いて、」
だが、シェナは、そんな2人に気付かず、首筋に刺さる爪の痛さに耐え、なんとか鳴き叫ぶ子ドラゴンを落ち着かせようと小さな体を支え、頭を撫でるが、
「キュイイ!!キュウウ!!」
子ドラゴンは鳴いてばかりで離してくれない。
「エ、エマさん~!!」
シェナは途方に暮れた表情でエマに助けを求めた。
「あ、はいはい」
シェナに助けを求められ、エマは手を貸そうと席を立ったその時、
「キュ、キュウウウウ!!」
カッ!!
「、え!?っ!!」
「!?、シェナ!!」
突然、子ドラゴンの胸の小さな魔宝石の秘鱗が光出した。
首にしがみつかれたシェナは光に思わず目を瞑る。
その光は一気に子ドラゴンを包み込んだ。
突然の事にロベルト、ユージーンも反射的に席を立ち、臨時態勢をとった。
だが、シェナにしがみついたエンシェントドラゴンの子ドラゴンに迂闊に近く事が出来ない。
光の眩しさに目を開けないシェナ。
その時、
「ッ、え?」
違和感を感じた。
柔らかい?手が重い?
首筋に刺さる子ドラゴンの爪の痛みは無くなったが代わりに温かな柔らかさを首筋に感じ、子ドラゴンを支えている手に重みを感じた。
すると、光が徐々に収まり出した。
「んん、あ・・・・、え??」
光の眩しさに閉じていた目を開けると、
「は?」
「キュ~~~!!」
目の前に柔らかな淡藍の髪。金色の大きな円ら瞳がシェナを見上げながら涙が溜まっている。
首筋に刺さる爪の痛みの代わりに柔らかくふくふくとした小さな手が必死にシェナの首にしがみついている。
「は?え?え?何?何が起きたの?」
シェナは目の前の事態が理解出来ず混乱する。
かろうじて了解できたのは、推定年齢一歳くらいの可愛い幼児に抱き付かれていると言う事。
白い背中には小さな四枚の翼が生えていた。
「って、裸!?」
文字通り生まれたままの姿で裸坊の幼児にシェナは慌てて頭に巻いていた青色のターバンを幼児に包んであげる。
だが、
「キュ~」
ターバンに包まれても、なおシェナから離れる事を拒否をする幼児。
「ロベルトさん、これは」
「これは流石に私も予想していませんでした」
その様子を見ていたエマとロベルトは顔を見合わせる。
「人龍化『ヒューマドラゴン』」
ユージーンの呟いた言葉にシェナが顔を上げた。
「え?」
「魔力が強い一部のドラゴンが使うことが出来る人間への変身魔法だ」
「うん?魔力が強いドラゴン?」
「ああ、俺も見たの初めてだ。殆ど伝承で伝えられているような魔法だからな」
「え、」
ユージーンの言葉に思わず動きが固まるシェナ。
「え、ちょっと、待って、この子おチビちゃんなの!?」
やっと頭の中で状況を理解したシェナは自分の腕の中にいる幼児を改めて見る。
柔らかな淡藍の髪。金色の大きな円ら瞳。白くまろい肌、背中には小さな四枚の翼。
よく見ると、淡藍色の髪の頭に小さな角が見え隠れしている。
そして、シェナを見上げる金色の瞳が子ドラゴンの面影があった。
「ええ~~」
「本来なら200年以上生きたドラゴンが使えるような魔法なんですけど、この子は相当潜在魔力が強いようですね」
冷静に幼児を観察するロベルトさん。
「でも、どうするのですか?」
「そうですね、・・・・人龍化したとは言え、元はドラゴン。預かってもらう事は出来るでしょうが、」
「・・・難しいんじゃ、ないか?」
そう言ったユージーンの視線の先には、
「キュ、キュ、キュ・・・」
「おチビちゃん、ほら泣かないで、良い子だから」
「キュ~~」
未だに涙を流して泣いている人龍化した子ドラゴンを、困りながらも抱えてあやすシェナの姿。
「無理ですね」
「無理ね」
その光景を見たロベルトとエマが即答した。
「懐いていると言うと言うよりも、最早、母親と子供ですね」
「はぁ、この状態ではその子をシェナから離すのは難しいでしょう。仕方ありません。
シェナ」
「え?あ、はい」
ロベルトさんに呼ばれてロベルトさんの方を見ると、そこにはまたいい笑顔のロベルトさん。
あ、なんか、デジャヴの予感。
「その子も一緒に預かってください」
「・・・・・マジですか?」
シェナは子ドラゴンを抱えたまま、がくりと肩を落とした。
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