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一切れのパウンドケーキと温かいお茶

シェナとエマが事情聴取をしていた部屋の前に着くと、


ガチャ


「お疲れ様です。エマ、シェナ」

「ロベルトさん」


ドアを開ける前にロベルトさんがドアを開けてくれた。


「そろそろ、来る頃だと思いましたよ。2人とも両手が塞がっていますからね」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます、ロベルトさん」

「ふふ、はい」


ロベルトさんは私とエマさんが部屋に入りやすいドアを大きく開けてくれた。

すると、


「キュー!!」

「おっと!」


また、子ドラゴンがシェナに向かって突っ込んで来た。

だが、小さな四枚の翼を駆使し、シェナに打つかる事なくシェナの右肩に無事着地する。


「翔ぶの上手くなったね、おチビちゃん」

「キュ!」


嬉しそうに一声鳴き、シェナの首筋に身を寄せる子ドラゴン。


「かなりシェナ懐いていますね」

「ええ、その事についてもお茶を飲みながら話しましょう。さぁ、お入り」

「はい」


ロベルトさんに招かれ部屋に入るエマとシェナ。

部屋の中は特に変わった様子は無い。

強いて言うのなら、席についてユージーンが困惑している様な顔をしているくらいだった。


「??。どうかした??」

「あ、い、いや、何でもない」

「んん??」


言葉を濁すユージーンに首を傾げる。


「シェナ、お茶が冷めてしまうわよ?」

「ッ、あ、はい」


部屋に新しい結界を張り直し終えたエマさんに言われ、持っていたお盆をテーブルの上に置く。

ついでに、子ドラゴンも肩から降りてもらった。


まずは、パウンドケーキを切り分けよう。

大きな皿の上にドンと乗っている長方形のパウンドケーキ。

このパウンドケーキは具を入れないプレーン。

焼いてから大分時間が経っている為、冷めているが、全体的にしっとりとなり、焼き立てのフカフカ感とはまた違った魅力がある。

いい具合に焼き色がついた茶色の表面にナイフを入れ、端を切ると淡黄色の断面が見える。

具や他の色生地を練り込んだパウンドケーキの断面もいいが、このシンプルで飾り気のない淡黄色の断面も中々魅力的だ。


「あ、ユージーンは甘い物大丈夫?食べられ無いモノある?」


少し厚目に1人一枚づつ切り分けながら、ふと、シェナがある事に気付き、ユージーンに問いかける。


「っ、あ、ああ。大丈夫。食べられる」

「そう、よかった」


ユージーンの答えに、シェナはお茶の準備を進める。


次はお茶を入れよう。

四枚のソーサーに四つのカップ。保温していたポットのティーサーバーを取り、茶漉しを使いティーカップにお茶を注ぐ。

温度が保たれた綺麗な琥珀色のお茶がカップに満たされていく。


「この香りは、ポポル茶ですか?」

「はい」

「いい香りですね」


フワリと漂う薄い湯気と共に甘い香りが鼻をくすぐる。


部屋中に穏やかな雰囲気が漂う。


「・・・・・本当に、休憩するんだな」

「ん?」

「いや、普通尋問中にこんな風に休憩をする事は、」

「無いけど、有ってもいいでしょ?」

「え、」

「自分で言うのもなんだけど、私のパウンドケーキ、結構美味しいんだよ?」


そう言って微笑むシェナを見てユージーンは、ただ面食らったように呆然としていた。


ユージーンが呆然としている間に、お茶とパウンドケーキを用意が終わった。


「用意が出来ましたよー」


4人の席にお茶と切り分けたパウンドケーキが行き渡った。

ロベルトとエマも自分の席に着いた。


「ユージーンさんも、どうぞお召し上がり下さい」

「・・・・、あ、ああ」


朗らかにユージーンに声を掛けるロベルトにユージーンは、些か戸惑っていた。

ユージーンの目の前にも小皿に乗せられた一切れのパウンドケーキとティーカップから湯気が上るお茶が置かれ、


「・・・・・」


どうしたものかと、少し困っていた。

だが、シェナも自分が座っていた席に座る。

両手を胸の前で組み、食材へ祈りを捧げる。


「我の糧になる尊き命よ 命を生み出し天と大地よ 天地の恵みに感謝します・・・・・・・・いただきます」

「いただきます」

「いただきます」

「・・・・・いただきます」


皆、各々に手を伸ばした。


添えられた小さなフォークを手に取り、小皿に乗せられたパウンドケーキにフォークを入れる。

スッと柔らかく入った。


「・・・・・・・」


フワリと柔らかいソレを一口大に切り分け口に運ぶ。


「・・・・っ」


口に入れた途端、パウンドケーキがホロリと崩れ、優しい甘味が広がった。

クドくない優しい甘味とふんわり感じる卵の味。

どこか懐かしさを感じる味だ。

今度は緩やかな湯気が立つティーカップに手を伸ばす。

ティーカップに満たされた琥珀色のポポル茶。

口に運ぶと花にも似た甘い香りが際立った。ポポル茶独特の苦味。だが、決して嫌味の無い。飲みやすい苦味だ。

温かく爽やかな苦味が、口の中に残っていたパウンドケーキの甘味をリセットしてくれる。

そうなると、またパウンドケーキの甘味が欲しくなった。


「・・・・・ふぅ」


一口パウンドケーキを食べ、温かなポポル茶を飲む。

ユージーンは満たされたように溜息をついた。

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