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エンシェントドラゴンの行方

「~~~~!!!ぐっ、はぁはぁ、ッッ」


火の魔法で右脚の脹ら脛を焼いて止血したユージーン。

装着している兜の下では汗が止まらない。

だが、頭の中が妙に冴えてきている。

と、その時、


「「「「「結界魔法、鎖状捕縛『チェーン・キャッチ』!!」」」」」

「「「「「結界魔法、柵状捕縛『フェンス・アレスト』!!」」」」


ガシャン!!!

ガシャン!!!

ガシャン!!!

ガシャン!!!


キシャアアアアアアアアアア!!!


突如放たれた魔法の鎖がエンシェントドラゴンの体を捕らえ、動きを封じた。

更に、光の柵がエンシェントドラゴンの周りを取り囲む。


「副隊長!!」

「ご無事ですか!?副隊長!!」


少し遠い所からジョンとアンディの声が聞こえた。


「上手くいったか・・・。ああ!!大丈夫だ!!」


ユージーンは、安堵の息を吐き、返事を返す。


一瞬の隙を作る為の機転を、部下達、ベルディア保護区の警備員が上手く活かすことが出来たらしい。


「っ、早く、卵を!!」


ユージーンは激痛が走る右脚を引きずりながら、エンシェントドラゴンの卵が入っている皮袋に手を伸ばし、皮袋を掴んだ、

その時、


「オラァ!!」


ドカ!!


「ぐっ!?!?」


真横からのいきなりの打撃にユージーンは左に大きく倒れた。


「ッッ、かはっ!!!」


ユージーンは、倒れた時の衝撃で左肩と左脇腹を抉るような激痛の痛が全身に走り、息が詰まった。だが、痛みに耐え、顔を上げる。


「ッッ、オーガスタ!!」


そこには、ジョンによって拘束され、更に気絶させられていた筈のオーガスタが不敵な笑みを浮かべ、仁王立ちしていた。

拘束されていた筈のオーガスタの両手は自由になっており、左手にはエンシェントドラゴンの卵が入った皮袋を抱え、右手には犯行に使われていたナイフが握られていた。

よく見ると、オーガスタの右脚に真新しい血痕がついている。恐らく、さっきの打撃はオーガスタが蹴飛ばしたものらしい。


「ズタボロで無様に地面に這い蹲る姿がよくお似合いだぜ?副隊長殿」

「ッ、オーガスタ、貴様!!」

「よくもまあ、人の計画を散々邪魔してくれたなぁ?おかげで当初の目標よりも取り分がかなり少なくなっちまった」


体中を襲う痛みと倦怠感で身体が思うように動かないユージーンをオーガスタは嘲笑うように見下ろす。


「だいたい、父上は甘過ぎるんだ。唯の魔獣を古臭い与太話を神聖化して保護だの国の宝だの、コイツらの体にどれだけの価値があるのか、父上は解っていない!!このエンシェントドラゴンの卵も卵一つ他国では相場の数倍の値が付く。他の魔獣だってそうだ。この保護区にいる魔獣共を死体、生体共に売りに出せば、世界中から我が国に金が舞い込んでくる。魔獣は金になる」


口元を歪め笑い、喋るオーガスタは、もはや、この国の王族とはとても思えなかった。


「・・・・オーガスタ、こんな事をして、タダでは済まないぞ。此処から、逃げられると本気で、思っているのか」


息絶え絶えにオーガスタを睨むユージーン。


「俺達、第7騎士団だけ、では無く、ベルディア保護区の全方位網が、お前を逃す筈がない!!」

「悪いな、これでも頭のキレはいい方でな。お前らの考えの上を行く事なんざ、訳無いんだよ」

「なに?」


訝しむユージーンを嘲笑うオーガスタ。

次の瞬間、


ドン!!ドンドン!!!

ドドドド!!!!


「ッッ!?!?」


背後から一瞬の閃光が走り、次の瞬間、周囲から爆発が起きた。洞窟内の壁が各方向から崩れる音が聞こえた。


「地面に埋めていた罠魔法は気が付いても、壁に仕掛けていた時限式罠魔法には気が付かなかったようだな?」

「、オーガスタ!!何をした!?」

「言っただろ?お前らの考えの上を行く事なんざ、訳無いってな」


徐に右手に持っていたナイフを腰のベルトの鞘に納め、右手を懐に手を入れ何かを取り出した。


「お前が期待していたご自慢の部下とベルディア保護区警備員はドラゴンを抑えるので精一杯。更に、ここまで来るにも壁の崩れた瓦礫で足止めされる。追加の応援が来る前に俺はコレで逃亡させてもらう」


それは、手のひらに収まる、ガラス玉。

ガラス玉の中には薄い円状の羅針盤と円状に目盛りが刻まれた金の細い輪っかが入っている。


「ッッ、転移魔法魔具!!魔具の持ち込みは、ベルディア保護区に入る際に、魔力検査によって、所有物は全て調べられる筈だぞっ」

「この転移魔法魔法魔具は旧式でな、魔力を込めなければ、魔力検査には引っかる事はない」

「くっ、」

「魔力検査と言い、マークの入れ替わりと言い、罠魔法と言い、随分と確認が甘かったなぁ、ハンレス副隊長殿?」

「ッッ、お前は、俺達第7騎士団だけでは無くこの国、いや、父親である国王陛下さえも、裏切るつもりか!!」


素行の悪い第3皇太子殿下が第7騎士団で公正し、立派になった息子と向き合いたいと、隊長と副隊長である自分に告げた国王を想うと、ユージーンはオーガスタの言動に怒りが込み上げる。


「・・・・・、俺は、俺の事を認めないこの国も親兄弟も、もう要らない!!規則ばかりのつまらない王宮生活を捨てて、俺は、この国を出て自由に生きるんだ!!」

「馬鹿な、事を!!」

「うるさい!!!」


オーガスタはそう叫びながら転移魔法魔具に魔力を込める。

ガラス玉の転移魔法魔具が光を帯び、中の薄い円状の羅針盤と円状に目盛りが刻まれた金の細い輪っかが回転し始める。


「ッ、待て!!オーガスタ!!」

「おっと、もう一つ仕事が残っていたな」


重い身体を引きずり、オーガスタを止めようと動くユージーン。だが、オーガスタは何を思い止まったのか、持っていた皮袋を地面に置いた。

そして、左手を倒れているユージーンに向けた。


「目障りな上官殿の後始末をな」

「!?」

「火よ」


オーガスタの左手に火の玉が集まる。


「ッッ!!!」


その玉の標的はユージーンだった。

劣悪な笑みを浮かべ、動けないユージーンを嘲笑うオーガスタ。


「じゃあな、副隊長殿!!炎弾『ファイア・ボル、」


オーガスタが無情にもユージーンに火炎系攻撃魔法を放とうとした、その時、


キシャアアアアアアアアアア!!!!!!!


バキン!!

バキン!!

バキン!!

バキン!!!


「ッ、!?」

「な!?」


エンシェントドラゴンの甲高い叫びとジョン達の鎖状捕縛『チェーン・キャッチ』と柵状捕縛『フェンス・アレスト』が砕ける音がオーガスタの言葉を遮った。

だが、拘束されていた魔法の鎖と魔法の光の柵が壊れても、エンシェントドラゴンは尚も激しく暴れる。

首を大きく振り回し、脚で激しく地団駄を踏み、長い尾を岩にぶつけ、暴れ回す。

そして、


ヒュン

ドガッ!!!!!


「がっ!?」


エンシェントドラゴンの長い尾で弾き飛ばされた岩の一部がオーガスタの顔面に直撃し、オーガスタは後ろへ大きく吹っ飛んだ。

その時、オーガスタが持っていた転移魔法魔具がオーガスタの手から離れ、地面に落ちた。

中途半端に魔力を込められた転移魔法魔具。

落とした衝撃でガラス玉にヒビが入った。

次の瞬間、転移魔法魔具から円状の魔法陣が現た。


「ッ、これは!?ッッ!!!」


円状の魔法陣の中に入ったユージーン。

ユージーンは、咄嗟に鍛冶場の馬鹿力で、立ち上がり、オーガスタが置いた卵が入った皮袋を拾い上げ、


「うりゃああ!!!」


ポチャン!!


ギリギリ魔法陣の外、湖の中に放り投げた。


ヒビが入ったガラス玉の中、薄い円状の羅針盤と円状に目盛りが刻まれた金の細い輪っかが回転が徐々に加速度を増していく。

そして、魔法陣が眩い光を放った。


「ッ、」


その光に包まれたユージーンは意識を保てず、意識を失った。


「ッッッッ、副隊長!!!!」


遠くでジョンの声が聞こえた。


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