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エンシェントドラゴンの暴走

負傷、出血シーンがあります。

苦手な方はご注意を。





キシャアアアアアアアアアア!!!!


甲高い怒号のような咆哮に洞窟全体が揺れ軋んだ。

すると、洞窟の湖の水がエンシェントドラゴンの叫びに共鳴するかのように一塊の水の塊がいくつも湖の水面から浮がってくる。

その大きさは大小様々。

そして、その水の塊はエンシェントドラゴンを囲む様に漂っている。


「ッ!!!」


ドカ!!!


ユージーンは咄嗟にに近くにいたオーガスタの腹を蹴飛ばした。


「ぐが!?!?」

「うわ!?」


オーガスタの直ぐ後ろでオーガスタを連行しようとしていたジョンも蹴飛ばされたオーガスタに押され同時に後ろに倒れた。

次の瞬間、


キシャアアアアアアアアアア!!!


エンシェントドラゴンの叫びと当時に浮かんでいた水の塊が一斉に四方八方飛弾した。


「くっ!!」


ユージーンはオーガスタを蹴飛ばした反動でその場を飛び退く。


「な、なんだ!?」

「ッッ!!ふ、副隊長、?!?!」


突然蹴飛ばされ、何が起きたのか分からない様子で辺りを見渡すオーガスタ。

ジョンは倒れても直ぐ様体を起こし、立ち上がろうとするが、自身の目に映った物に言葉を失う。

つい先程までジョンとオーガスタが立っていた地面が抉れていた。

ただ、物がぶつかって抉れている訳ではない。

飛んで来たであろう握り拳大の水の塊のそのまま形で綺麗に地面に穴が空いていた。

まるで、鋭利な刃物でその場をくり抜いた様だった。


「ジョン!!」


ユージーンはすぐに体勢を立て直し、ジョンに呼びかけるが、ジョンは抉れた地面の穴を見て固まっている。

岩だけの地面を抉る水弾の威力に固まっていた。


「ッッ!!立て!!ジョン!!!!」

「はっ!!」


ユージーンの鋭い叱責にジョンは我に帰る。


「結界魔法を張れ!!」

「は、はい!!」


ユージーンの言葉にジョンは直ぐに結界魔法を発動させる。


「防護結界魔法『シールド』!!」


ジョンとオーガスタの周りに半透明な光の壁が出現した。

次の瞬間、


「「「結界魔法、鎖状捕縛『チェーン・キャッチ』!!」」」


入り口にいた隊員がエンシェントドラゴンの動きを抑える為に結界魔法の鎖をエンシェントドラゴンに向かって放った。


ブン!!

パキン!パキン!パキン!


だが、エンシェントドラゴンは、向かってくる魔法の鎖を自身の長い尾ですべて打ち払ってしまった。


キシャアアアアアアアアアア!!!


魔法を放たれた事にエンシェントドラゴンは更に激しい雄叫びを上げ、尾を地面に打ちつける。

その雄叫びに同調する様に周りを漂う水弾の動きが早くなっていく。


「ッッ!!」


次の瞬間、再び水弾が周囲に飛弾した。

ユージーンは、その場を飛び退き、剣を構える。

すると、


「わあああ!!!」

「ぐあ!?」


洞窟の入り口で、悲鳴が聞こえた。

応援に来たアンディ達が被害を受けたらしい。


「くっ、ジョン!!そのまま結界魔法を維持、その場を動くな!!」

「は!?副隊長?!」


ユージーンは咄嗟の判断で結界魔法を張っているジョンとオーガスタは大丈夫だと判断し、負傷した部下を助けに走り出そうとしたその時、


「た、卵が!!」

「は?」


オーガスタの叫びにユージーンは思わず足を止めた。

そう言えば、エンシェントドラゴンの近くに皮袋が3袋あった。

もし、その袋の中に今回生まれたエンシェントドラゴンの卵が入っていたとしたら。

ユージーンは、今も怒り狂い暴れ、水弾を乱射しているエンシェントドラゴンに目を向ける。


「ッッ!!」


あった。


エンシェントドラゴンからすぐ後ろの岩陰に先程、ユージーンが見た皮袋が見えた。

もし、エンシェントドラゴンが尾を振り下ろせば最悪の場合、確実に皮袋は叩き潰される。


部下の安否か、国の宝か。

ユージーンの中で二つの選択肢がせめぎあった。


その時、


「副隊長!!」

「ッ、!!」


ジョンがユージーンの横を駆け抜けた。


「アンディ達は、俺が!!」

「ジョン?!っ、待て!!オーガスタは、」

「邪魔になるので、結界内に閉じ込めました!!」

「は?!」


後ろを振り向くと、ジョンが張った防護結界魔法『シールド』の中でオーガスタが気を失い、白目むいて横たわっていた。


「大丈夫、死んでません!!」

「っ、よし、よくやった!!アンディ達を頼んだ!!」

「ウス!!」


ユージーンは抜いていた剣を納める。ジョンにアンディ達を任せ、暴れ狂うエンシェントドラゴンの元へ走り出した。


グルルルルル!!!!!!


エンシェントドラゴンが自身に向かって来ユージーンに気が付き、深紅に染まった眼でユージーンを睨んだ。

エンシェントドラゴンの周りを漂っていた水の塊がユージーンに狙いを定め、飛んできた。


「ッッ、ふっ!!!」


ユージーンは飛んでくる水弾を掻い潜り、皮袋のある岩陰へと走る。


「くっ!!!」


水弾が途絶えた一瞬、必死に手を伸ばし、皮袋に触れようとしたその時、


ブン!!!

ドバン!!!


エンシェントドラゴンの尾が、頭上から振り下ろされた。


「ッッ!!!」


間一髪、避けることが出来たが、先程の衝撃で皮袋が吹っ飛んだ。


「くそ!!」


焦るな。冷静になれ!!


ユージーンはそう自分に言い聞かせ、すぐに吹っ飛ばされた皮袋を探した。すると近くに飛ばされた皮袋の一つを見つける事が出来た。

吹っ飛ばされた衝撃か袋の口が開き、袋の中が見えた。

その中には、血に汚れた不揃いの鱗と藍色の宝石のような球体が見えた。


「ッ!!」


ユージーンは僅かな希望を見出し、その皮袋に駆け寄った。

その時、


キシャアアアアアアアアアア!!!


「ッッッッ、がぁ、!?」


強い衝撃がユージーンを襲いユージーンはその場で倒れた。

左肩と左脇腹に鋭い痛みがユージーンを襲った。


「ぐっ!!く、くそ!!」


右手で痛みと熱を感じる左肩を押さえると、血が流れ落ちる感覚がした。

後ろを振り返ると、エンシェントドラゴンの鋭い爪に血が滴っていた。

鎧を着ているのに、鎧をも引き裂くドラゴンの爪。

ユージーンは感じるよりも先に身体が動き、エンシェントドラゴンから距離を取ろうとした。

だが、次の瞬間、


ヒュン、ド!!!


水弾の一撃がユージーンの右脚を掠めた。


「ぐっ、がぁあああ!!!」


ユージーンの苦痛の叫びが洞窟内に響いた。

水弾に抉られた右脚、脹ら脛から大量の血が噴き出す。

痛みを通り越して燃える様な熱さ、頭が異常な程に冷たくなっていく。手が無意識に震え出す。心臓の鼓動が異常な程早くなる。

頭の中で危険を告げる警報が鳴り響く。


グルルル


視界の端に、エンシェントドラゴンが新たな水の塊を漂わせているのが見えた。


「はぁ、はぁ、はぁ、ッッ!!『火焔』!!!!」


ユージーンは咄嗟に炎系攻撃魔法を湖に放った。


ジュワ!!


炎系攻撃魔法の炎が湖の水で消火され蒸発した水蒸気が発生し、霧が立ち込め、一面霞がかる。

その水蒸気が一瞬の隙を生んだ。


「ッ、火よ!!」


ユージーンは自ら生み出した火の玉を、出血の止まらない右脚の脹ら脛に押し当てる。


「ッッッッ、グアアアアアア!!!」


気が狂いそうな痛みと熱さ。焼けた血の臭いと焦げ臭い肉の臭い。息が止まりそうになる。意識が何度も飛びそうになる。


「ぐ、ッッ、はぁ、はぁ、はぁ!!」


ユージーンは火の魔法で傷口を塞ぐ荒療治を自身に施した。

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