怒りの叫び
「・・・・オーガスタ。お前は今回の任務には加わっていなかった。・・・・だが、思い返せば不可解だった」
抑揚の無い淡々とした、だが静かな怒りを感じるユージーンの言葉。
無理矢理ユージーンに魔力を注ぎ込まれ激痛をもだいぶ収まり、荒い鼻息でユージーンを睨み上げるオーガスタ。
「今回の任務はベルディア保護区での王族護衛。
目立ちたがりで自分の利益ばかり考えるお前が希少な魔獣が集まっているベルディア保護区に興味を持たないわけが無かった。
だが、今回の任務にお前は志願をしなかった。
任務に志願しても隊長に拒否される事が分っていたからだ。
だから、真面目で隊長格にも顔覚えがいいマークに成り済まし、部隊紛れ込んだ。希少な魔獣達を狩る為に」
「そ、そんな身勝手な理由で!?下手をしたら第7騎士団全隊員極刑に罰せられる可能性だってあるのに!?」
「知ったことでは無いのだろうな。この男は」
「え?」
ジョンはにわかにユージーンの言ったことが信じられなかった。
「ここまで用意周到でこの場に居るんだ。発見されても逃げる算段もあっただろうし、捕まったとしても、マーク・ロドムだと言い張り、マークに罪を被せるつもりだったんだろう。
下手をすれば国外逃亡も考えていただろう。
そして、明らかにSSS級のエンシェントドラゴンを狙っていた。・・・・・つまり全部承知の上でこの男は重罪を犯したんだ。第7騎士団を巻き込む前提でな」
「そ、そんな・・・・」
ユージーンのその言葉にジョンは言葉を失った。
と、その時、
「ッッ、あああああ!!!!!クソが!!!」
いきなり、キレたオーガスタが怒声で叫んだ。
「!?!?」
「・・・・・・」
ジョンはいきなりの怒声に驚いて、オーガスタを見ると、怒りで目を充血させ、歯を食いしばり、自分と副隊長を睨み付けて来た。
「貴様等!!この俺にこんな仕打ちをしていいと思っているのか!?この高貴なる俺を、下賤な貴様等の上に立つべきのこの俺に!!絶対に、後悔させてやる!!許さない!!許さないぞ!!!」
「な、何言っているんだ、オーガスタ」
「その偽りの名で俺を呼ぶなぁ!!!」
「は??、偽り??」
体を揺さぶり拘束する鎖を引きちぎらんばかりに暴れ、身勝手で理不尽に怒り狂うオーガスタ。
異常なまでのオーガスタの暴れる姿に、ジョンはただ混乱していた。
「ふ、副隊長、コイツは一体何を言っているんですか?、なんで、」
「・・・・ジョン、気を抜くな」
「で、でも!」
「、今は負傷したエンシェントドラゴンの保護とコイツをベルディア保護区警備員引き渡しが先決だ」
「・・・・副隊長」
ジョンは納得できない様な表情をするが、
「・・・後で、必ず隊員全員に説明する」
「・・・・・分かりました。必ず話して下さいよ?副隊長」
「ああ」
ユージーンの真剣な目と言葉にジョンはそれ以上の詮索を止めた。
だが、
「何が「分かりました」だ!!この愚民がぁ!!くだらない話をしている暇があるなら今すぐこの拘束を解け!!役立たずがぁ!!お前等なんか、父上の元では足元にも及ばないだろうが!!父上に進言してお前等を消してやる!!抹消してやる!!」
ここに来て親の威光をチラつかせるのが、この男の底の浅さが目に見えた。
短い間だったが同じ隊の同僚ではあったオーガスタを冷ややかな目で見下ろすユージーンとジョン。
「・・・・・」
「・・・・・コイツ、前々から俺達隊員を見下した事を言っていましたけど、今日は特に酷いですね」
「重罪犯の言葉に耳を貸すな、ジョン」
「誰が重罪犯だ!!無礼者がぁ!!」
重罪犯と言う言葉に顔を真っ赤にして怒るオーガスタ。
「お前が犯したのはアーガルジア王国魔法魔獣保護法律違反第1級犯罪。アーガルジア王国最高峰と言われるベルディア保護区でのSSS級魔獣への損傷及び希少魔獣素材乱獲の罪に科せられる。
お前がどんなに父親に泣いて縋ろうがこの罪は逃れられない」
淡々とした口調で諭す様にユージーンに
「ッッ、そんな筈がない!!父上が俺を見捨てるなんて、ある訳が、」
「黙れ」
「な!!なんだ、」
「・・・・今まで、あのお方がお前をどれだけ気にかけ、お前の改心を望んでいたのか、まだ解らないのか!!!」
「ヒィッ!!」
オーガスタの言葉を遮り、静かな口調だが低い声を張り上げ怒鳴るユージーンにオーガスタは恐怖で身をすくめ、ジョンも思わず、体を強張らせた。
「ジョン、コイツを押さえておけ」
「は、はい!!」
「エンシェントドラゴンを呪縛している魔法をコイツに解除させる必要がある。油断はするな」
「はい」
ジョンに拘束されたまま立たされたオーガスタは、抵抗しようと身を捩るが、ユージーンの鋭い眼光に大人くなり、
「クソ・・・」
小さく悔しそうに零した。
ふと、入り口の方が騒がしくなって来た。
おそらく、入り口前で別れたアンディが応援を呼んできてくれたのだろう。
これでひとまず、傷付いたエンシェントドラゴンの治療ができる。
だが、
「・・・・・・・・・」
傷付き、鱗を剥ぎ、角を折られ、翼を切り落とされた2体のエンシェントドラゴン。
見ただけでも瀕死のの重症。手遅れと思った方が、いいだろう。
ユージーンの表情は険しく、固いものだった。
と、その時、
ピシ、ピシ、
何かの音がユージーンの耳に届いた。
「?、なんだ?」
「副隊長、今、なにか音が」
ピシ、ピシ、ビシッ!ビシッ!
ジョンも今の音に気が付いたように当たりを見渡す。
何か、ヒビが入るような、亀裂が走るような、そんな音が不気味に辺りに響いて来た。
そして、その音は段々と大きくなっていく。
この音は一体どこから?
嫌な予感がユージーンを襲った。
ビシッ!ビシッ!ビシッッ!!!!
キシャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
バキィン!!!!
けたたましく甲高い叫び声にユージーンはエンシェントドラゴンの方へ振り向く。
そこには、傷だらけのエンシェントドラゴンが自分を縛っていた黒い蔦をガラス細工のように砕け散っていた。
甲高い叫び声を上げ、金色だったはずの眼が段々と真っ赤に染まった。
「ッッ!!!」
真紅に染まった紅い眼がユージーンを睨んだ。
グルルル、キシャアアアアアアア!!!!
呪縛の闇魔法を打ち破った瀕死の重症のエンシェントドラゴン。
唸り声を上げ、痛々し傷口から止めどなく血を流しながら、近くにいたユージーンとジョン、そして、オーガスタを激しく威嚇した。
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