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化けの皮が剥がれる

ジョンが不審者を取り押さえに向かった隙にユージーン、は囚われたエンシェントドラゴンを解放すべくドラゴンの元へ走った。

入り口では岩場の影で隠れて見え難かった、エンシェントドラゴンの姿の現状を目の当たりにして、


「ッ!!!」


ユージーンは言葉を失った。


重々しい黒い蔦のようなものに縛られ、身動きできないように地面に押さえつけられている二体のエンシェントドラゴン。


背中の4翼の翼は斬り落とされ、全体を覆う美しい藍翠色の鱗は何枚も剥がされていた。

ユージーンは兜のフルフェイスモードを解き、エンシェントドラゴンを目の当たりにする。

さっきまでは、散布された薬の匂いで分からなかったが、辺りにドラゴンの血の匂いが充満していた。

すぐ近くに血で汚れ中身が詰まった袋が3袋あった。その内の1袋の口から藍翠色に輝くカケラが見えた。


胸元にあった大きな藍色の宝石も無惨に剥がされていた。美しかった水晶のように輝く2本の角も折られていた。

二体とも目を閉じて動かない。死んでいても可笑しく無い傷だ。

だが、よく見ると一体のエンシェントドラゴンが微かに体が上下に動いている。


ヒュー・・・・、ヒュー・・・・、


だが、か細く呼吸する度に微かに空気が漏れる音が聞こえる。


その姿は、昼間この保護区SSS-D-921で見た筈のエンシェントドラゴンの姿とは明らかにかけ離れていた。


「ッ、」


エンシェントドラゴンを捕らえている重々しい黒い蔦は闇の魔法を媒介に発動した呪縛系の闇魔法。

この魔法は下手に触ることが出来ない。

魔法をかけた発動者でなければ魔法を解く事ができないからだ。

ユージーンはすぐに、ドラゴンを捕らえている蔦の解除をする為、術の発動者である今ジョンが押さえ込んでいる不審者の元へ向かった。

だが、


「・・・・・・は?・・・・・・・マーク?」


ジョンの溢れるような呟きがユージーンの耳に入ってきた。


「マーク?」


その言葉に訝しむユージーンは不審者を抑えているジョンの元へ向かった。


ジョンの元へ駆け寄ると、ジョンも兜のフルフェイスモードを解き、仰向けになった不審者に馬乗りになり、ローブの襟ぐりを掴んでいた。

ローブのフードが外れ露わになった不審者の顔は間違いなく自分の部下マーク・ロドムだった。


「おい、マーク・・・・。これは一体どう言う事だ?SSS級の保護魔獣でありベルディア保護区の保護下にあるエンシェントドラゴンを傷付ける事がどんな大罪か、新人のお前でも承知の筈だろうが。こんな事をして、タダで済むと思っているのか!!??」


ジョンの怒りの声が辺りに響いた。


「お前だけじゃない!!お前のせいで第7騎士団全隊員が罰せら事も有り得るんだぞ!?」


フルフェイスの兜でジョンの表情は見えないが、今見た事がない程のジョンの怒りが分かった。

だが、マークは不快だと言わんばかりにジョンをミラ見つける。


「うるさい!!離せ!!退け!!無礼者が!!」

「な、なんだと!?」


ッ、無礼者?


自身の上に馬乗りになるジョンを吠えるように怒鳴るマークにユージーンは一抹の違和感を覚えた。


「この野郎、」

「待て、ジョン」

「っ、副隊長」


反抗するマークに怒り任せに拳を叩き込もうとするジョンの腕を掴む。

驚いた様子で振り返るジョン。

フルフェイスモードを解いたユージーンの顔は険しい顔をしていた。


「副隊長」

「落ち着け」

「ですが!!」

「落ち着け、ジョン・ウォーカー隊員!!」

「!!、・・・・はい」


興奮気味だったジョンを一喝すると、ジョンは大人しく引き下がった。

大人しくなったジョンを見てユージーンは地面に転がるマークを冷たい視線で見下ろした。


「ッッ、」


眼光で人をおも射抜きそうな視線にマークは身を硬直させた。

と、その時、


ヒュッ

ドス!!!


「ッ!?!?、ヒィィ!!」


ユージーンの右脚がマークの顔のすぐ真横掠め、マークは情けない声を上げた。


「・・・・・マーク・ロドム」

「・・・・・ッ、」


抑揚の無い淡々としたユージーンの声にマークは大袈裟なくらいに体をビクッと震わせた。


「・・・・・・お前、本当にマーク・ロドムか?」


ユージーンの唐突な質問にジョンは思わず、困惑した。


「え?、副隊長??」

「・・・何を言っている。俺はマーク・ロドムだ」


震えながらも強気にユージーンを睨むマーク。


「確かに、顔も背丈も声もマークだ。

だが、お前と俺が知っているマーク・ロドムの言動とはあまりにもかけ離れている。アイツは人一倍正義感が強く、仲間思いだからな」

「そんなの、所詮アンタの勝手な解釈だろうが。本当の俺は、」


声を荒げるマーク。

だが、


「マーク・ロドムは左利きだ。お前はナイフを右手で持っていた」

「ッ、」


ユージーンの言葉が遮った。


「それに恐らく今着ているローブは対魔獣仕様のマジックアイテム。結界魔法により気配を消し、魔獣に察知されにくく、防御力も高い。更に耐熱、耐寒、魔毒耐性が付いた希少品。とてもマークが手に入れられる代物では無い」

「・・・・ぐっ、がっ!?!?」


するとユージーンはいきなり、悔しそうな表情をするマークの顔を思いっきり鷲掴みにした。


「そして何より、俺はお前を疑っている」

「ッ!?ギャ!?!?」


顔を掴む手が熱く感じたと思った次の瞬間、顔に激痛が走り、マークは悲鳴を上げた。


「副隊長!!な、何を!?」

「見ていろ」

「え?」


ジョンが慌てて止めに入ろうとしたが、ユージーンの手はすぐマークから離れた。

目の前には顔面の激痛に身動きとれ無い体でもがくマークの姿。


「グゥゥ、ウウウ!!!アアアアア!!!」


だが、次の瞬間、マークの顔にひび割れ出し、ボロボロと崩れ出した。


「副隊長、これって!?!?」

「変身魔法だ。恐らく、魔法薬の類いを飲んでマークに成り済ましていたんだろう。直接魔力を注ぎ込んで化けの皮を剥いだんだ。さぞや痛むだろうな」


冷たい目で苦しむマークを見下ろすユージーン。

崩れ出した顔の下からマークでは無い別人の顔が現れ、栗色だった髪色が徐々に燻んだ金髪に変わっていく。


「ッツ!!かは、はぁはぁ・・・・」


痛みが引き、荒い息を吐くマークだった男の顔が露わになった。

男は鳶色の眼でユージーンとジョンを睨んできた。


「!?お、お前は!?!?」

「第7騎士団で隊員に向かって無礼者なんて言葉を使うのは、オーガスタ、お前くらいだからな」


ジョンが信じられないと驚きの声を上げる。

マークに成り済ましていた男はオーガスタ・バウだった。

 

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