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治療

こんな大怪我を負って更に自虐行為か?と思ったが、直ぐに考えを改めた。


「・・・・・・、違うか。そうするしか無かったのか」


これだけの大怪我。並みの治癒魔法では痛み止め程度にしかならない。

どう言う状態に陥っていたのか知らないが、負傷して出血死を防ぐ為にショック死覚悟で傷を焼く方法を取ったのだろう。

ある意味究極の選択だ。


とにかく、今は治療だ。

カマクラ内は外よりも幾分か暖かい為、男の体温は保たれている。


「土よ」


男が寝ている寝床の土を魔法で出来るだけ柔らかくほぐし、結界魔法でほぐした土を覆い、傷に障らない様にする。

寝床が出来たら、壊れた甲冑と手甲を外し怪我の個所を露わにする。

シェナは男の身体に上位治癒魔法の『エクストラヒール』をかけまくった。


「・・・・はぁ、はぁ、『エクストラヒール』、あー、しんどい!!」


『エクストラヒール』をかけたことで中傷までの傷が癒え、男の顔色が大分人間の顔色に戻ってきた。

だが、怪我による発熱の危険もある。


「次。水よ」


シェナは宙に手のひらサイズの水の球を作り出し、火の魔法で水の球を温める。


「ちょっと、もったいないけど、仕方ないか」


シェナは昼間森で採取した痛み止めと小回復系の薬草を温めた水の球に投入する。

沸騰ギリギリの温度で温めると薬草はお湯の中で溶けていく。

完全に薬草が溶けきったのを見計らって、さっき採取したばかりの『月花の花』を瓶の中から一本取り出す。

花を覆っている薄い膜が破れない内に細心の注意を払って素早く温めた水の球の中へ花と茎ごと入れる。

すると、『月花の花』は花も葉も茎も水の球の中でまるで砂糖菓子の様に溶けてしまった。

そのまま沸騰しないように温めていくと、水の球が全体が緑色になり水飴のようなトロリとした粘度が出てきた。


「よし」


トロミがついた水の球を大と小と二つに分け、風の魔法で薬湯を冷ます。


薬草はそのまま食べても体力は回復は出来る。

出来るのだが、生の薬草はとても苦いし青くさいエグい。ようはとっても不味い。

普通は薬草類はギルド関連の錬成屋で依頼してポーションや薬として作って貰うのだが、今回は急な事だし、謹慎中だけど、錬成ではないし、仕方ないよね?


人肌に冷めた大きい方の薬湯を手に取り深皿に移すと球の形に留まっていた薬湯が溶けるように深皿の中に収まった。

シェナはトロミがついた薬湯を左肩、左脇腹、右脚脹ら脛の傷に出来るだけ丁寧に、傷に障らないように塗っていく。

特に一番ひどい右脚脹ら脛を念入りに。

薬を塗り、森で採取した抗菌効果がある『ガルフ』と言う大きな葉を2枚から3枚と上から貼り付ける。


「よし。これで、塗った薬の乾燥と傷の化膿は防げる」


傷の処置はこれで大体終わった。

後はこの男の体力次第。

回復するだけの体力が無ければ、どれだけ外から回復魔法をかけても回復は乏しい。

その為、薬湯を作った。

シェナは予め魔法で水の球を作り出し、小さい方の薬湯を手に取り一口に口に含む。


「ッ、・・・・・んんん」

(苦ッ!!)


口に含んだ薬湯の味に思わず顔をしかめる。

薬湯にしたことで多少は青くささは緩和されてはいるが、苦いしエグいし、やっぱり不味い。

出来れば飲み込むか吐き出すかしたいところだが、グッと我慢する。

傷の処置を終え、未だに意識を失っている男。


「・・・・ん」


おもむろに、か細い呼吸をする男の唇に自分の唇を重ねた。


「ッ、ゥンン、グッ!」


突然、口内に感じた苦味とエグ味。そして、粘度のある何かに男は苦しそうに顔を歪め、肩がビクリと動いた。


「ァ、ンン、ン!!」


まだ、覚醒はしていないが、無意識的に逃げようと顔を背け、まだ動ける右手で眼前のシェナを押し退けようとする。たが、その力は弱々しく、まるで意味がない。

よほど不味いのだろう。

だが、苦くてエグい薬湯を口にしているのはこちら同じ。


(早く、飲み込め)


と思いながら、シェナは男の顎を掴み、舌で口をこじ開ける。

抵抗する右手も掴み抵抗出来ないように押さえ込み、男の口の中に薬湯をで流し込む。


「ン、ッンン!!・・・・ふッ、あ、ハァハァ」


薬湯を飲み込んだのを確認して、口を離すと男は未だに気を失いつつ苦しそうに荒く息をする。

だが、間髪入れずに今度は水の球を口に含み、再び、男に口移しで水を飲ませる。


「ッ、ング、ゥンン・・・・・」


今度はそこまで抵抗は無かった。

むしろ、口の中に残る苦味に弱々しく水を求めるように口を開いてくれた。


「ぁ、ハァ・・・・・」


水を飲み込んだのを確認して口を離し、そっと額に手のひらを乗せる。手のひら感じる男の体温を感じた。


「うん。熱は今のところは無いね」


後は飲んだ薬湯の効果で男の体力が回復すれば一先ず大丈夫だろう。


「っ・・・んん、」

「あ、起きた?」


額で熱を計っていたら、男の瞼が震え薄く瞼が開く。


「ぅぁ、ぅぅ・・・・」


だが、まだ意識がはっきりしないのか、男の目に多分シェナは映っていない。夢現つの状態だろう。

よく見ると、よほど苦しかったのか目尻に涙が溜まり、男の頬を滑り落ちた。


「・・・・・何泣いているのよ。男でしょう。これくらい我慢しなさい」


そう言ってシェナは男の目尻に溜まった涙を指で拭い、そっと頭を撫でる。

そうすると、男は気が抜けたのかそのまま目を閉じた。その後直ぐに静かな寝息が聞こえてきた。


「とりあえず、こんなモノかな」


カバンから持って来た毛布を男にかけ、立ち上がり、カマクラの外に出るシェナ。


「いい加減、私も着替えないと」


そう、言いながら外の外気に身を震わせるシェナ。

湖へ潜ったそのままのシャツにベルトに下着姿の格好だった。


「風邪引くわ」


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