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怪我した者

負傷シーンがあります。

苦手な方はご注意を。



顔を全面的に覆うタイプの兜をかぶっているから顔は目視出来ない。高い身長に甲冑を着ていても解るがっしりとした体格。おそらく人間の成人男性だろう。


だが、フラフラと覚束無い足取り、身に付けている甲冑は左肩と左脇腹辺りが大きく抉れ、赤黒く染まっている。怪我をしているみたいだ。

よく見ると、右脚の脹ら脛辺り雑に布を巻いているのが見える。


「怪我?、何でこんな所に?」


いや、違う。

あの怪我で、なんで、此処に来れた?

遠目から見ても、左肩、左脇腹、右脚を負傷。

手負いの人間なんて、森に住む魔獣達には動く餌に見える筈なのに。

もしかして、実は人間じゃなくてアンデット系の魔獣か?


そう思案していると、甲冑男は湖の辺りで崩れるように膝をついた。

震えている右手で顔を覆う兜に手を伸ばす。

上手く外せないのか少し手こずっていたが、顔を覆う兜が外れ地面に落ちた。

灰色がかった白髪がシェナの目に入った。

月明かりに照らされた、灰白髪と彫りの深い男の顔が露わになる。


「・・・・、顔に肉がある。人間か」


アンデット系だったら、顔は骸骨の筈。


男は、無造作に右手を湖に突っ込み、震える右手で掬った湖の水を飲み干した。

そして、そのまま、その場で倒れた。


「・・・・、さて、どうしようか」


シェナは人並みの良心は持ち合わせている。だが、自ら進んで面倒事に首を突っ込むは避けたい性分だ。


倒れたまま動かない男。

死んだか、気を失っただけか。


結果的に男の生死の確認をして生きていたら助ける。死んでいたら身元確認出来るものを押収して湖に放流しようと判断し、男の元へ近づくシェナ。


「・・、・・・ハァ・・・・、・・・・ハァ・・・・・」


結果的に男は息をしていた。

気を失った男は文字通り死んだようだった。でも、


「・・・・・・・生きてる」


生きていると分かったシェナの行動は早かった。


死んだように動かない男の身体に風の魔法を纏わせ、浮遊と同時に体重を軽減さる。

そのまま、寝床の場所に運ぶ。

寝床の結界内へ入りすぐに寝床のカマクラの中へ。

結界内に入れば、外敵になる魔獣から襲われる事もない。

出る前にカマクラの中を暖かくしていたおかげでこれ以上身体を冷やす心配はない。

風の魔法を解き男の身体を横たえる。

改めて、男の顔を見ると短い灰白髪に彫りの深い整った顔立ち。

色事に疎いシェナが見ても男前な顔付きをしている。

年齢は三十代前半と言ったところか?

だが、その男前な顔も今は死体のようだ。


首筋の脈動を確認しながら身に付けいる甲冑と手甲を慎重に外しながら負傷している傷の状態を確認をする。

だが、その時、シェナの表情が険しくなった。


「ッ、この人、かなり無茶なことしたな」


シェナの見た限りの傷は全身に切り傷や打撲。大きな怪我をした左肩、左脇腹、右脚脹ら脛。

左肩と左脇腹は血が滲んだ大きな三本の爪痕。

だが、この傷は甲冑を着ていたからか、傷の割には出血は少ない。

だが、問題は一際目立つ右脚の脹ら脛の怪我。

大きく肉が抉られた傷。そして、その傷を覆うような大きな火傷。

抉られた傷を一点集中に覆う火傷のつき方を見て攻撃を受けたものでは無い。

おそらく血を止める為に自分で火の魔法で傷を焼いて止血をしたのだろう。

抉られた傷から肉が火で焼き固められ傷は赤黒くただれている。

見ているだけで、顔を背けそうになる。

あの時、シェナが嗅いだ血と生き物が焼けた匂いはこれだ。


この世界では怪我で出血多量を起こした場合に傷を焼いて止血する治療法は存在する。

だが、傷の上から高温の火の魔法や道具で傷を焼く。

それは想像以上に苦痛な治療法。

適正な治療で小さな傷を塞ぐだけでも気絶する程の痛みが伴うのに、こんな大怪我を焼くだなんて。


「この人馬鹿なの」


思わず口に出てしまった。

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