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ZONE  作者: 北斗 白
春季大会編
41/46

ep19~紅葉の誘い~

ZONEは毎週日曜日21時更新です

 「……以上でHRを終わります、起立!」

 

 ガラガラと椅子を引いて立ち上がったクラスメイトたちが、「気を付け」という呼びかけで姿勢を正すと、揃って「さようなら」と言い、各々の机を下げ始めた。

 蹴也が通っているこの高校は帰りのHRが終わった直後に、その日の当番に当たっている班が教室掃除を行う。トイレ掃除は業者のおばちゃんにやって貰っているのに、何故か教室だけ各クラス掃除を行っている。

 ちなみに今日は僕と紅葉が所属している班が掃除当番に当たっているので、放課後の部活には少しだけ遅れていかなければならない。

 今週末に春季大会の二回戦目を控えている僕にとって今日の遅刻は結構な痛手だ。


 「はい、蹴也君。一緒に箒掃除やりましょ」

 「あーうん、ありがとう」


 僕は手元に持っていた携帯で、サッカー部のグループトークルームに「僕とマネージャー、掃除で遅れます」と連絡をした後、紅葉の後ろに付いて教室の隅からゴミを払い始めた。


 「紅葉さん! あの……この問題教えてくれないかな?」

 「今掃除中ですが、少しだけならいいですよ」


 入り口近くで歩くのを止めた紅葉は、問題を聞いてきたクラスメイトに持ち前の丁寧な言葉遣いで解説を始めた。今日も彼女の休み時間には自然と人が集まってきて、ネイルやら勉強やらあれやこれやの話題で盛り上がっていた。

 どうやら入学時から続いていた紅葉の人気は右肩上がりで上昇しているらしい。奏真から聞いた話だが、学校内の生徒が学年の壁を突き破って手を取り合い、「紅葉様ファンクラブ」というのを結成しているらしい。

 本人はその存在を知らないらしいが、信仰がエスカレートして彼女に被害が及ばなければいいと思う。


 「あのー風谷いますか?」

 「あ、風見キャプテン」


 風見キャプテンは紅葉に軽くあいさつした後、その横を通り過ぎて暖房の下に溜まっているほこりを除去していた僕のところに歩いてきた。


 「あー実はな、今日風谷が遅れるって聞いたから用件を伝えに来た」

 「何ですか用件って」

 「今日の練習場所だが、グラウンドではなく、海聖海岸の浜辺でサッカーするぞ」

 「は、浜辺?」

 「んじゃな!」


 「あ、ちょっと」と呼び止めて詳細を聞こうとしたがその思いは虚しく、風見キャプテンは僕の話を聞こうともせずに急ぎ足で教室を飛び出していった。

 そして少し経つと携帯の通知音が鳴り、画面を表示してみてみると「今日の練習場所は海聖海岸なのだ」とふざけた文字で風見キャプテンが連絡していた。


 「あ、あの蹴也君、海聖海岸ってどこですか?」

 「いやー僕も分かんないんだよね。こりゃマップ使わないと駄目だな」


 マップ……というのは携帯の中にある地図アプリで、高校入学と共に形態を所持した蹴也が感化された便利ツールだ。

 さっそくマップを使って海聖海岸を調べてみると場所は思ったよりも遠くなく、この高校から徒歩十分くらいで着きそうな場所だった。


 「多分普通に行けるよ」

 「そうですか! じゃあ一緒に行きましょう!」

 「うん、いいよ」


 そして僕と紅葉は掃除を終わらせた後、それぞれの私物を持って校舎を出た。


 「いやぁ、蹴也君と同じ班で良かったです」

 「奏真も同じ班だったら同じクラスのサッカー部三人揃ったのにね」

 

 紅葉は「そうですね!」と笑って見せると、持ち手の位置がきつかったのか、鞄の持つ位置を試行錯誤し始めた。

 紅葉がどんな意味を込めていったのかは分からないが、僕も紅葉と一緒の班でよかったと思う。あのファンクラブまでできている学園の高嶺の花様と一緒の時間を過ごす事ができるんだ。

 これはどの生徒でも喉から手が出るほどに羨ましいと思うだろう。

 それに間近で見るほど、本当に美人なんだなと感じる。しかもお嬢様ときたら、数年後結婚するのはどこぞの大規模会社の御曹司かイケメンアイドルグループのリーダーとかだろう。

 

 「あの……蹴也君、帰り道って海聖橋渡りますよね?」

 

 海聖橋というのは僕の家を出てすぐ近くにある橋で、いつもその橋を通って学校に行っている。海聖橋の話題を振ってくるなんてどうしたのだろうか。


 「お願いがあります、明日から私と一緒に帰ってください!」

 「……は?」

お読みくださってありがとうございます。もし時間がありましたら「恋が始まらない」の方も読んでいただければ嬉しいです。


北斗白のTwitterはこちら→@hokutoshiro1010

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