ep18~いつも通りの日常
「ZONE」は毎週日曜日21時更新です。
「……たに。……風谷!」
「……は、ふぁい!」
周囲に座っているクラスメイトたちから「くすくす」という僕を嘲笑する声が聞こえる。それもそのはず、今丁度授業中なのに意識が上の空で先生の話を聞いていなかったところを先生に当てられてしまったからだ。
「風谷……これ解いてみろ」
「えーっと……」
先生が指差す先には、「√4×√16=」と、いつもの汚い字で黒板に書かれていた。
ここで先生が教科書に視線を移した瞬間に、隣の席に座る紅葉がぼそっと呟くように僕に言った。
「……蹴也君、助けましょうか?」
「いや、いいよこんな問題」
僕のノートを見ると、今日の分の板書がされておらず、まさに白紙のページとも呼べるものが形成されていた。普通の人では自分が授業を聞いていない状態で当てられると、答えられずに口を噤むのが一般的だ。
ただ、僕は授業を聞いていない状況で当てられても口を噤む必要なんてなかった。……特に数学の授業であれば。
「8……です。」
「お……おお、正解だ。何か目付きが鋭くなってないか? 不満でもあるのか?」
「いや。俺、先生の授業は聞いていてわかりやすいのでそんなもんはないです」
「そうか、では次の問題に……」
そう、俺は気づいてしまった。勉強とは集中すればするほど理解力が培わる……つまり、集中力さえ極限に高める事ができれば、計算系の問題であれば一瞬で暗算ができるということだ。
そこで授業中にZONEを発動することで、集中力を極限に高めて理解力の質を上げるというプロセスを発明する事ができた。
だが、地歴公民系の授業は暗記系なので事前に覚えていないと分からないという欠点がある。それと、普段の人間の集中力の最高ボーダーラインを何分も越してしまうせいか、ZONEを発動して授業を受けてしまうと疲労の蓄積が著しくなってしまう。
だから普段は普通に授業を受けて、ピンチになった時にZONEを発動することにしているのだ。
「……おい蹴也、ずるいぞ」
「奏真、僕も悪気はないんだ。ただ、ZONEって便利かもしれない」
「次、雨宮、この問題を解いてみろ」
「げっ……」
先生が僕の時と同じように黒板に指をさした先には、僕が当たった時とはは比べ物にならないような難しい長文が並んでいた。
僕は一分あれば答える事ができるが、多分、奏真には厳しいだろう。イケメン・スポーツ万能という二拍子が揃って、一見完璧な人物に見えるが、実は蹴也は勉学がかなりの苦手で、入学後最初に行った実力テストでは最下位近くの順位を取っていた。
「すいません、難しすぎて解けません」
「そうか、じゃあ一緒に解いて行こう」
先生はそう言うと、奏真を起立させたまま全体に向かって説明を始めた。この先生の授業では、答えられなかったものはその問題の解説が終わるまで、ずっと立ったまま授業を受けなければならないという謎のルーティンがある。
簡単な問題はすぐ座る事ができるが、今奏真が当たった長文で難しい問題についてはかなりの時間がかかるだろう。もしかすると、もうすぐこの授業が終わるので、鐘が鳴るまで奏真は立ちっぱなしかもしれない。
僕は窓の外を眺めながら、頭の中の仮想空間で次の試合に向けてのイメージトレーニングを始めた。
お読みいただきありがとうございます。今回は次のエピソードの問題上文字数がすくなくなってしまいました。申し訳ないです! 最近はずっとサッカーの試合だったので、日常編も読んでリラックスしてください!
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