55.アドバイザーの初印象
こちらご無沙汰更新でございます。オフィスらぶには程遠い…。辛抱強くお待ち頂ければ幸いです。
『…というわけで、辻チーフがアドバイザーで、こちらの部署にも出向いて下さるコトになりました。皆さんよろしく』
「辻です。遠慮なくご相談下さい。よろしくお願いします」
あの秘密の?会談から一週間後、私は牧くんの部署にアドバイザーという形で指導に入るコトになった。
もちろん今までしていた仕事を引き連れて…。出来る限りクライアントやお客様の電話などは内線で繋いでもらい、業務に支障が出ないよう配慮された。
佐藤所長に紹介された後、一通りの部署内の説明を牧くんから受けるため、二人で一旦オフィスを出た。
『…で?なぜ引き受けたんです?自分の仕事もままならないのに』
廊下を並んで歩きながら、前を向いたまま牧くんが言った。
それは、質問していると言うより責められているような?感じに受け取れた。
「うー…だって困ってるんでしょ…?助けになるかなぁ〜と思っ…?にょわぁっ⁈」
バタンッ! ガタンッ!
………。
えぇっと……?
ただいまの状況を実況いたしますと。
並んで歩いていたハズの牧くんが、立ち止まる。先を進んだ私が振り向こうとしたら、腕をつかまれ空いてる会議室に連れ込まれる。
きゃーっ!…な展開を予想されてる方…
ごめんなさいごめんなさい!
怖い顔の牧くんが、至近距離で睨んでまふ…はい。
『分かってるんですか?あなたは…。どんな大変なことを引き受けたのか。その覚悟があってのことなんですか?…私でも手を焼いているのに。ブツブツ…』
至近距離で、顔を突きつけられてる私の心情お察しください…。
そう…金縛り状態で、固まるしかないじゃないじゃないじゃ…ないですかっ⁈
『…分かってますかっ⁈てか、聞いてますっ⁈人の話を!』
私が放心してる間に、至近距離が更に縮まってた。
バカじゃないんだから、状況くらい分かってきてます!どんだけバカにしてんだか…。
「…聞いてます。私に白羽の矢が当たったのが運のツキ。なんとかします。それが私の任務です!」ちょっとイラっとして言った。
『はぁ…だから嫌だったんだ。楢山さんに相談するの…』と、私から距離をとって牧くんは、ガリガリとアタマをかいた。
知らんわ!そんな事情。と、ちょっとだけ現実に戻った私は心の中で毒づいてみた。
『まぁ…人事部の仰せなら仕方ないので。きっちり働いて頂きましょうか…』ニヤリ。と牧くんが笑ったように見えたのは、私の目の錯覚でしょうか…?
それから一通りの部署案内を終えて、オフィスに戻ったところ、さっそくの相談を持ちかけられた。
…そう。件の彼女だ。
『辻チーフ。改めてご挨拶させて頂きます。これから、よろしくお願い致します』と、やけに丁寧…というか慇懃無礼にもとれる態度で挨拶をされ、さっそくではありますが…と本題に入られた。
「…うーん。 その実お相手の方のニーズの把握は、どのようにしていますか?予想や雰囲気だけでは判断できないと思うのですがね…」
『いや。だから…それは面談の時や訪問した時に、相手の方がそうおっしゃったからですね…』
「…お相手の表立って言われた言葉だけではなくて、その言葉の裏を読まないと…『そうですね!その時は相手の方の言葉だけを鵜呑みにしてしまったので、これからはそうしてみます』
…かぶせてきたし。食い気味にきたし。
「…分かっているとは思いますけども。同じお相手から二度のクレームは、契約が解約され兼ねない事態に陥りますから…重々注意して、慎重に…『はい!二度とないように気をつけます!』
…いやだから。食い気味…
というようなやり取りを延々。
で?相談って何さ?
てか…ちゃんと私の話聞いてる?
というか…理解してくれてる?
という私の思いをよそに満足そうに帰っていく…。あ。彼女自身のデスクにね。
それからも、他の社員さんたちが入れ替わり立ち替わり。
…そりゃもぉひっきりなしに相談にやってきては、去っていく。
相談内容は様々だが、総評して言うなれば…
「…牧部長。どれだけ恐れられてるんですか?」
相変わらずの表情。シャレではなくて!
休憩をとる為にやってきた自販機室に、牧くんがいたから。思わず言ってしまった。
『なんで私には聞いてこないんでしょうかね…?あの人ならまだしも、他の社員も…』
…その表情のせいじゃね?
と言いたいのを、ぐっと飲み込んで。
まずは、この牧くんが指導必要なんじゃないのかしら?
…と、思い至ったアドバイザー1日目だった。
主人公の苗字初出でございます。牧くんへもテコ入れ。不器用な彼をどこまで救えるか…。そして、変えられるのか。




