50.平常心は、どのように保てばよいのでしょうか。
かーなーりーのー。ご無沙汰更新です。読んでくださっている方がいたら申し訳ありません。少しずつ縮まる距離と、きっかけ作り…楽しんでください。
いっ…⁈一緒に?
あの肉食…焼肉女子会のあとに届いたメールに、モヤモヤしながらも。
夏は終わり、まだ残暑厳しい季節を迎えても、仕事の忙しさは変わらない。
そのまま夏の花火のように、モヤモヤは霧散して過ぎていった。
『チーフー!外線二番に樫本所長からお電話でーす!』
はいはいはいはい。ガサゴソと、デスクの上が書類で覆われ、電話捜すのも一苦労。
「はい!お待たせしました。お電話かわりまし…『チーフ!ちょっと外に出て来れるぅ⁈デスクに忘れ物してきたの!』
えぇっと。…あぁ!あの封筒かっ。
所長のきれいに整頓されたデスクに視線を送ると、今日の商談に持っていくと話していた封筒が目に入った。
「○○オフィスさん宛の封筒ですか?所長はいまどちらへ?」
『○○オフィスの近くのコンビニなんだけど』
そこまで行ってたら、戻る時間はないかぁ。
「私は次の訪問時間まで、あと一時間あるので、届けた足で向かいます。所長は、そこのコンビニでお待ちですか?」
こうしてはいられないと、私は受話器を耳と肩に挟んだまま、外出準備をバタバタと始めた。
『コンビニで待ってるから、あ。牧くんにさっき連絡入れたから一緒においで。これから○○オフィスの商談は牧くんと一緒なの』
ドキン…
「ま…牧くんですか?…わ、かりました」と、なぜか名前を聞いてドキドキし始める自分の胸に「平常心平常心…」と言い聞かせ。
所長との電話を切ったあとに、社内の内線番号を押した。
プルルル…プルルル…
「?あれ?出ないなぁ…」ガチャッ
『はい。○△です』
あら?牧くん…いやいや牧部長ではない?
と確認すると、もうオフィスを出たとのこと。
やっば!もうこっちに向かってる⁈
内線電話を切ってあたふたと、準備しようと椅子から立ち上がりかけた私の後ろから
『まーだ準備出来てないんですか?』
と、クスクス笑う、妙に懐かしく感じる声が聞こえた。
えっ⁈
振り向くより、頭を後ろにのけぞらせて、仰ぎみる格好になった私を、すでに準備万端の牧くんが見下ろしていた。
「は…早かったのね!今さっき所長から連絡受けたから。まだ準備出来てなくって…」と。改めて頭を戻した私は、今度こそ立ち上がり外出準備を始めた。
ちゃんと普通に出来てるよね?
話せてるよね?顔は…ちょっと赤いけどバレテナイよね?
ドキドキしながらも、平常心を言い聞かせ。
社用車の鍵を取りに行くため、牧くんと並んでオフィスを出た。
「私次もあるから乗って行くけど…牧くん帰りは所長と一緒に帰ってくるでしょ?」と、社用車の貸し出し手続きの書類を書きながら、後ろにいるハズの牧くんへ声をかけた。
『そぅですねぇ…そうします。行きは私が運転しますよ』!…ひゃっ⁈
思ったより近くで聞こえた、掠れ気味の低い声にドキッとしてしまった…。
それと、私が握っていた車の鍵を、そっと手を添えて開かれ取られたのにも…。
はぁ…いちいちドキドキするぅ。
もぉ!これで車内大丈夫なのっ⁈
どーした私!と、頬をパチパチと叩きつつ、駐車場に向かう牧くんの後を小走りで追いかけた。
思えばですよ。
いつも私が運転することが多かったから、牧くんの運転とか久しぶり?
助手席に座る違和感と、小さな動揺…いや、かなりの動揺を隠しつつ。
二人と隠した想いを乗せた車を、牧くんはスムーズに発進させた。
『で?なんで、そんなに静かなんですか?』と、クスクスと笑いながら、顔を前に向けたまま牧くんが私に視線だけ送ってくる。
「し…静かですよ?私はいつも!な…何か不思議が⁈」…明らかに不自然な返し。
ふっ…
と、牧くんが笑った気がして、私は視線だけを向けた。
機嫌が良い?と思わせるような表情で、前を向いて運転していた。(当たり前…)
ん?と、牧くんが信号待ちで停車させて、こちらに振り返って笑った。
「あ。いや…牧くんが運転してる車に乗るのは、久しぶりかなぁとか…」と、ドキマギしながら答えた私に。
『そんなに心配ですか?私の運転は。ジッと見張られてましたが?』
え?…!そんなに見てた⁈ 私!やだっ!
カァァッと、赤くなる頬を感じて私は思わず手で押さえた。
クスクス…穴が開くかもしれませんねぇ。
と、信号が変わりまた車を発進させながら、牧くんが言った。
が、私の耳にはボンヤリとしか聞こえず。その後の話や言葉は、ほとんど頭に残ってこなかった。
『……着きましたよ。チーフ?』
ハッ⁈
と、声をかけられるまでの記憶がぁぁ。。
欠落。
『チーフありがとうねぇ!助かったわ!』
「いえ。気をつけてくださいよぉ?私が出れたから良かったものの…」
『うん。大丈夫!ちゃんと把握してたか…ら。ん?いやいや!ほんとありがとぉ!』
バシバシと、私の肩を叩いて所長は○○オフィス社屋へ入って行く。
『…はぁ。やれやれ。してやられたな…。さっ!私も行きますよ。ありがとうございました』と、牧くんも何やらブツブツ言ったあと、後ろ手を振って所長のあとを追って入って行った。
「なんだろねぇ?おっ…と!私も急がなきゃ!」と、また次の仕事に追われるために、車に乗り込んでエンジンを始動させた。
あれ…ブレーキに足が届かないや。
座席を動かして、前に出してセッティングしていたら。
コン…コンコンッ。
と、助手席の窓を叩く音に顔を上げる。
あ。
『やぁ。久しぶり?元気そうだね…』
元旦那。正史くんだった。
距離が縮まると同時に、一気に距離を詰める手段を出さないとまた一年かかっちゃう…。あの方の登場で。二人の関係が変わるでしょうか?←いや。変えるのあんただろー。




