49.打ち上がるのは花火以外も
ヤツの包囲網。こんなところにまで。
『でねー⁈「私は、何もしなくてイイッて言われて、責任者になったんだから。私のせいじゃないのよ!」とか言うのよっ!』
もぉ〜!信じられなくてっ‼
と、紫野さんの隣で酔っ払い…もといウザくなった酔っ払い…の同僚が焼肉用の鉄板がついたテーブルをバン!バンバン!と叩いて、興奮気味に話している。
『まあまあ。だからね〜。そんな自覚のないヒトだと思って付き合っていくしかないよ〜…ね?』と、これまでも何度となく繰り返したであろう会話を、紫野さんが酔っ払いと交わしている。
しかもあれだけ毒舌…辛辣…いや冷酷…
コホンッ…クールな紫野さんが、同僚を慰めている。
「ここで花火の音が聴けると思いませんでしたね〜。お?酔っ払いさんどちらへ?」
フラフラと立ち上がった酔っ払い…もといウザくなった同僚…コホンッ…に声をかける。
『ちょっとヤボ…ゴメンなさいね』
すみませんスミマセンと周囲のお客さんや店員さんに頭を下げながら、ヤボ用へ。
「大丈夫かね?だいぶんまいってる感じだね」と、紫野さんに目を向ける。
紫野さんは、肉を網に並べながら焼きに入っている。
『今のうちよ?食べとかないと続くよ〜』と、焼けた肉を返しながら私の皿にもドンドン肉を追加してくる。
どうやらかなり根に持っているらしい。やれやれ…夏祭りがグチ祭りになるのも早いな。
仕方ない、最後まで付き合うかっ。
『去年の花火で来年は〜…(彼氏と〜)って言ってたけど叶わなかったねぇ?』と、帰ってきた酔っ払い…同僚が紫野さんが追加してくる肉を食べながら言った。
「でもまぁ、焦らずに行くしかないさっ」と、肉奉行よろしくせっせと肉を焼いている紫野さんに「女子力高〜い」『なぜ彼氏出来ないのかね〜』と、やや失礼な発言もありつつ女子会続く。
『チーフの仕事って大変なんですね。今回の件で、つくづく責任者って大変だな〜と感じましたよ』と。
ちょっと酔いがさめたのか、同僚が私に向かってビールジョッキを掲げるように持ち上げて言った。
ちょうど乾杯みたいな感じ。
「まぁ、責任をとる為にいるんだからね。それも仕事の内さ。そんな人なのだから…仕事上だけの関係として割り切れば、どうでもよくない?」
ダメ?あら…部下にあたる人たちには聞かせられないな。
『なんか変わったね…?誰かさんの影響かな』(笑)と付きそうな感じで紫野さんが笑ってる。
ある意味あなたには、必要なスキルだよね。良いことだ。ウンウン。…と、紫野さんが独りごちて納得。
『そうですね〜?珍しくクールな感じ。でも今にも壊れそうな、繊細な感じがなくなりましたね。私は好きですけど』と。
ビールジョッキをアイスクリームに替えて、酔いをさました同僚が私にスプーンを向けて(良い子は真似しちゃイケマセン)言う。
『んで?誰のおかげです?紫野さん!』
ふっふっふ…。
『良い兆候だね。人の感情に振り回されずに済むし。逆に人へ安心感を与えるよね〜。誰かさんに良く似てる』
は?誰だ?
〜♪ あ。メールだ。
『楽しんでますか?花火きれいでしたよ』
⁈ 珍しい人からだよ。
「牧くん。花火行ったの?仕事なかったのね」ピッ 返信っと。
あぁ…もう花火終わったのか〜。
〜♪
『そうですね。予定空けてたんですけどね?』
???けどね?んで、どうした?ん?
「予定空けてたって…花火に行けたんでしょう?」ピッ…
〜♪
『行かないですよ。家の前から観えたので。まあ、食い気よりはマシです』
くぉらっ!
「なにおーう⁈こっちは、違うものが打ち上がっとるわぃ!」ピッ!
〜♪
『それもいいですけどね、そろそろ色気も出してもらえませんかね?』
「ダダ漏れしとるわぃっ!肉臭ではなくて!フェロモンがっ!…はぁ。花火きれいだった?」ピッ。
〜♪
『前に好きだって言ってたやつも上がりましたよ。降ってくる近さで観たらきれいでしょうね。にぎやかに観ましょう。また。』
?観ましょう?誰が?誰と?
それからは、牧くんからの返信なく女子会もお開きになった。
牧くんらしくないメールに…てか、牧くんの何を私が知ってるのかな…?
彼にはよく言ってた言葉をフッと思い出した。
「私のこと、よく知ってるよね…てか、よく理解してる」
…もしくは扱いに慣れてる。
珍獣かっ!
はぁ…よく分からないな。
来年は花火行こうっ。
こんなモヤモヤも花火は、きっと打ち消してくれる。
私は、来年の今頃、誰とどこでどんなことをしてるかな〜と妄想しながら…帰路についた。
〜♪
『風呂入ってました。また、一緒に行きましょう』
包囲網は、ココロの中までも。




