閑話5.ハロウィンですけど何か?
ご無沙汰して申し訳ありません。
本編は夏ですが、季節感出してみました。
佐藤所長視点です。
「どうよ?牧くん。仕事のほうは?」と声をかけた自分に、彼は…
『どうもこうも…私はクレーム受付係ですか?って言うくらい、社員やパートから要望やら相談やらきますね…』あとの仕事内容としては、やってることは変わりませんよ。
と、ボソッと遠い目をして言った。
申し遅れました。自分は、佐藤裕之と申します。牧くんの上司と、樫本ヨーコの弟を長いことやってます。
この度、昇格異動となりまして、久しぶりに牧くんのいる部署に復帰してきました。
が、前任者が全くのワンマンだったので、書類もほとんど残っておらず、申し送りも全くに近いほどなされないまま引き継いだ。
出来る限り現場の現状を知りたいと、オフィス内の社員と同じフロアにデスクを持ってきて過ごしている。
が、牧くんの動きが凄まじく速くて、なかなか姿を捉えられない。
やっとのことで捕まえて冒頭の問いかけである。
もっと、ドンと構えていて良いほどの役職なんだがな…。
現場にどっぷりはまっていて、それでいて役職付きの仕事もこなしている。
やっつけではなくて、きちんとこなしているのは、さすがと言うべきか…異常と言うべきか。
「少しは現場に任せて、楽にやってはどうだね?」と言う自分に、
『そうですね。任せられるようになったら…』と、牧くんは言いにごる。
「じゃ任せられるようにするには、どうしたらいいかね?」
ヤレヤレ。彼も大変だったろう…。
自分が就任したからには、ちっとは楽にしてやらないと…。
あの姉に何を言われるやら。
☆ ☆ ☆
『佐藤さん…いえ、所長。牧くんどんなです?』
と、隣の席でのほほんと会社のパンフレットを眺めながら、樫本さんとこの小さなお嬢さんが言った。
ここは、学生向け会社説明会会場の当社ブースの中。説明会が始まる前のひと時。
ここ数年は、この小さなお嬢さんとコンビを組んで、新人発掘に勤しんでいる。
コワモテ、坊主頭、ガタいのデカイ自分では恐がって誰もブースに座ってくれないだろう…ということで、見た目可愛らしく人懐こい彼女に白羽の矢を当てた。
人事に少なからず関わってくるデリケートな立場であるので、人選は慎重だ。
そんな微妙な立ち位置に、見事に彼女は応えてくれている。
もうひとつ別の会場に出しているブースには、うちの会社で1、2位を競うイケメン楢山くんとべっぴんさんを配置している。
男女ともに、見た目に惹かれて座ってくれれば、コッチのもの作戦。
そしてこちらは、アメとムチ。
ブースの前を通る人が、思わずニッコリと笑って返すような愛嬌のある彼女の人懐っこさ。思わずおじさん「アメちゃんあげよう」と言っちゃうよ。
「いやぁ、なかなか腹を割って話してくれないよー」と、自分は答えながら、ポケットに入ってたアメちゃんを本当に彼女へ渡す。
『はあ、そうなんですか〜。あ、ありがとうございます。極度な“人見知りちゃん”ですからねぇ』と、アメちゃんの包装を開けて彼女は口に投げ入れた。
コラコラ…今から面談始まるぞーっ。と横目で見ながら、自分も会社から連絡が入ってないか携帯を眺めていた。
「嫌われてるのかな〜?寂しいなぁ。こんなにオープンにして、胸に飛び込んできてくれるのを待ってるのにな…」と言う自分に、隣でクスクス笑いながら彼女が言った。
『大丈夫れすよ。嫌いじゃないれすから』と、アメちゃんガリガリ噛んでるよ。
彼女曰く、嫌いな人には目も合わせず、近寄らず、極端に丁寧な敬語になるそう。
今のところは、大丈夫そうですよ。とのこと。『胸に飛び込みはしないでしょうけどね〜』だとさ。
『あ。昔、会社の懇親会で出し物の劇をした時に、私よく佐藤さんの敵役やりましたよね〜。胸に飛び込んで、おでこ押さえられて、腕ふり回して当たらなーいっ。みたいなこと演出でやりましたねぇ!』と、キャキャキャッと笑ってる。
「そんなこともやったな〜。お互い若かったしね」と、仮装して顔にペイントして、楽しかったの思い出した…。
隣のお嬢さんにアメちゃんあげたの思い出し「ぷっ…。まるでハロウィンだな」
会場に到着するまでの道すがら、街中にディスプレイしてあったのを思って、おかしくなった。
「!お。そうかっ…!そういう手があったか」
☆ ☆ ☆
『わあ〜!所長ありがとうございます〜!皆で頂きます!ねっ⁈ 牧部長見て下さい!』
こんなに沢山、所長からお菓子頂きましたよ〜!と、丁度オフィスに戻ってきた牧くんに女子社員が声をかけた。
『…?佐藤さん…これは?』
「おう!牧くん、まあ遠慮せずに食べてくれ」
ふっふっふ…すでにリサーチ済みだ。
牧くんは甘いのもイケるクチだ。
これだけお菓子があれば。
さぁ!自分の胸に飛び込んでおいで〜!
トリックオアトリート!
ハッピーハロウィン!
『…確かに、牧くん甘いの大丈夫って、私教えたけど。佐藤さん…私は違うとおもうな〜』
やや天然さん。本編進まないのに、ハロウィン感出したかったんです…。ごめんなさい。




