閑話3.かぐや姫でも、反省しますけど何か?
すみません。ご無沙汰の更新です。紫野さん視点です。
「…で?それが?で?それは、それ以上は無理なのね?それはもういいんだけど…もう少し考えて報告してくれると助かるんだけど…」
ガチャンッ…。
いま私は、機嫌が悪いんです。
フンッ。態度や表情に出るのは、社会人として…いやアラサーすぎた大人として、どーーなのー?って思ってます。自分でもっ。私の悪いクセ。
−あ、申し遅れました。私、紫野真美子と申します。周りは、よく『クールで、冷静よねー?』と言います。自身では、そんなつもりありませんが−
「うーん。イマイチこの子は、わかってないのよねー」
私が望むコンセプト通りの仕上がりではないし…
突っ込んで聞いても、欲しい答えは返ってこないし…
私が単なるイジメやワガママで要求しているワケではないのですよ。
フンッ…。
「…はぁ〜。また言ってしまったぁ〜」
『?なに、また何か言っちゃったの?』
向かいの席で
季節の限定メニューにするか、定番メニューにするか迷って、メニュー表と格闘してる彼女が
ボソリとつぶやいた私のコトバに反応して
目線だけで、ちょろりと見上げました。
「うん…。…メニュー決まった?」
『店員さん来たら決めるから、呼ぼうか』
すみませーーんっ。
と、どちらからともなく店員さんを呼んで、それぞれ注文を済ませて…。
『んで?何を言っちゃったのかな?』
と、彼女がおしぼりでコップから落ちてテーブルに作った水滴たまりを拭きながら、聞いてきた。
それを何とはなしに目で追いながら、私は昼の会社での電話を思い出して、彼女に話した。
仕事においては、妥協も時には必要…と、理解できる歳にはなっていますよ?
だからこそ、納得できない状態でも、納得せざるを得ない時には、イライラするというもの。
で、そのイライラを当ててしまった…と。
『うんうん。アルヨネー。私も思うよー。
ただ〜…相手はそんなヒトなんだーって思って
、それなりに接するしかないよねー?』
そうかもしれないけど、腹立つでしょ?
『そうなんだよねっ!だから怒っちゃったりするし。どうやったら、ヤツラが理解しようと努力するよーになるのか考えるよねー』
はぁ〜…イライラしたり、自分に余裕がない時でも他人を思って行動できるのって…すごい。
私は、自分の仕事で気持ちをコントロールするのが精一杯です。
『お待たせいたしました〜』と、やけに間延びした声の店員さんが、注文した品を運んできたので
それぞれ食べながら、仕事のグチや近況報告して
「また明日ねーー」と帰路についた。
〜♪あ、メール。
きっと彼女だわ。
いつも、一緒に食事や出かけたあとは必ずメールをくれる。
『いろいろお話でけて楽しかったよー。ありがとう。またご飯食べに行こうね。
イライラしても、自分が納得するようにやればいいよ〜。じゃなきゃ、もっとイライラして後悔するんだからね。
大丈夫よー。紫野さんの思うように行こーぜー!おやすみーー』
そういえば…
同じコトバを、前にも一度言ってくれたね…。
思い出すのは、2年前。
母が闘病の末、力尽きて逝ってしまった時。
亡くなるほんの一週間前、病状が小康状態で安定していることもあり、一時的に家に連れて帰ることにした。
妹と二人で看病しつつ、妹は看病に専念する為に、仕事を辞めていたから…私が実質大黒柱だった。
でも、これが本当に最後の親孝行だと決心して
上司である清瀬部長に休暇を願い出た。
それまでも母のことで、ちょくちょく休みをもらっていたのに
『いいよ〜。休みとってこい。そのかわり、あいつには言っておけよー。なんとかするだろ…。そしたらあとは、俺たちに任せとけ』
と、力強く送り出してくれたので。
彼女にも
「明日から一週間休みをもらうの。母を家に連れて帰ってあげようと思って。今しかないから…。母の介護しようと思ってねーー」と、わざと明るく言ってみたんだけど。
だから、迷惑をかけると思うけど…
と、続けようとした私のコトバを遮るように
『自分が納得できるようにやればいいよ。大丈夫。あとは、紫野さんの思うようにね。がんばって』
と、穏やかな笑みを浮かべて、まんまるな目をほっそりとしながら
彼女が言ってくれた。
…結局、母が家に帰ってくることはなかったけれど。
私は後悔しなかった。
納得いくまで、がんばったから。
彼女も、きっとそうなんだろうと…思った。
自分が納得できるまで、納得できなかったとしても。
やっぱり他人を思いやって、自分の思うがままにやり遂げた。
…後悔ないよねー。
がんばってたもの。
「またご飯食べに行こうね!今日も(・)、ありがとう!!」
と、メールを返信しつつ。
やっぱり、不機嫌な態度は反省しようと…
…きっと思うだけ、の私なんでしょうね〜。
納得できるまでやり遂げないと、後悔しますね。でもこれくらいなら納得できるかな…という妥協点が難しいですね。




