32.女子の強さと、男子の気持ち。
あたしが中学3年の高校受験を控えた秋。
父がある日突然、失踪した…。
いつものように前の晩に着替えをして、『麻雀に行ってから、出勤する』と出かけて行った父。
何の疑いもなく、出勤していると家族の皆は思っていた。
翌朝、登校準備でバタバタとセーラー服に着替えて、小学校6年生の妹に声をかけていたところに電話がかかってきた。
こんな朝早くに珍しい…?と、母が電話をとったら、父の会社からだった。
“出勤していない”と連絡が入り、その日を境に母や祖母、伯父が慌ただしく動き回っていた。
妹の面倒をみながら、横目で眺めていたのを覚えている…。
受験を控えていたあたしは、塾が唯一の落ち着く場所だった。なぜなら、学校でも同じクラスの男子が先輩だった人や下級生と揉めて、担任の先生がてんてこ舞い…。
結局、あたしは受験失敗し、滑り止めの女子校へ。
父は、家族の心配(事故?事件?)をよそに、会社のお金を使い込み、自ら失踪した…と。
それ以来20年余り、父とは会ってもいないし、どこで生きてるのか死んでるのかも分からない。
唯一連絡をやり取りしていた祖父が、昨年亡くなり、いよいよ行方は分からないまま。
母は、高校生になるあたしと、中学生になる妹を座らせて約束をさせた。
『今から母は、あなたたちを生活させるために、仕事を始めなくちゃいけない。今までみたいには、あなたたちとの時間はとれなくなると思う。だから約束してちょうだい…』
“どっちでもいい”とか“どうしよう…と悩んでいる時間”を待ってる暇はないから。
母に伝える時には、はっきりと気持ちを自分で整理して、どうするか決めてからにしてね…。
分かるわよね?
…と。あたしと妹の顔を厳しく、でも哀しい目で見つめていた母。
高校、中学になりたての娘たちには、甘えやワガママは許されなかった。
自分たちで協力して“生きて”いかなければならない。
切実な、そして断腸の想いで娘に酷なことを告げるしかない母。
それぞれの想いで、母を見つめ返し、うなづいた…。
まぁ結局、こんなあたしに仕上がったんですけども。
決断したことは、きちんと伝えられるようには鍛えられたが、優柔不断だし…思ったことは伝えられないし…。
ダメダメじゃーん。
ケケケッ…。
『まあ、せめて自分で決断する前に相談はして欲しいですね。男としては、頼られてる感がプライドくすぐられますしね…』
だって。ふーーん…。
あたしってば、男心よく分かってないな〜。
牧くんのお陰で、男子のことが少し理解でけたかも…?
だから、また恋してみようと思うよーになったのかもね。
今度こそ、上手に恋愛できると思うし…
幸せになりたいもん。
女子の強さは、弱さと紙一重。男子気づいてくれますか?




