29.牧 由貴ですが、何か?②
牧くん視点です。ちょっと胸の内が覗けそうです。
今の部署に戻った頃
あの上司に
あれこれと振り回され
毎日クタクタになって帰っていた。
昼飯も食わなくなって
おっ。痩せたなー。。。
とか、無意識に伸びた無精髭をじょりじょり触って、ぼんやり思っていたら…。
『あれっ?牧くん!どーしたの?めずらしいっ!…って言うか痩せたね』
ぢゃなくて、ヤツレタ?
といぅ声に、ハッ…と気付くと
小さなあの人が、アーモンド型の大きな目をまんまるにして
俺をじっ…と見上げていた。
いつの間にか、前の部署の廊下をボーーッと歩いていたらしぃ…。
「…いや別に。昼飯食わなくなったからじゃないすかね」
ちょっと、ごまかすよーにポリポリ…と、無精髭をかいて。
「今から、皆で食事ですか?」
『うぃ!一緒に行く?と…言いたいとこだけど。
あいにく、予約しててねー…』
あの人は、見慣れた同僚たちと出かけるとこだったらしい。
「いや、別に…俺は遠慮しときます。皆さんで楽しんできてください…」
俺…とか言っちゃったし。はぁ〜別に…とか多発してるし。
『ホントに?大丈夫?』
と、まるくした目を細めて心配そーなあの人から
視線をそらした…。
…あぁ、そうか
俺、話聞いて欲しくて
ここに自然と足が向いたのか…。と、
あの人たちが、出かけていく後ろ姿を見送りながら、何ともいえない残念な…居心地悪い気持ちに、ふっ…と気付いた。
『そういや、いつも近くで、顔つき合わせて。話聞いてもらってたもんな…』
それが出来ない距離感に
“寂しい”とは口がさけても言えんっ。
クスッ…
「…しかし、まあ相変わらず。周りの人間に、食い物の心配されてんだな」と、おかしくもあり…
クックックッ…
ほんわりとした気持ちになって、足取りも軽くなったかな…
もと来た道を戻っていった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『でねっ!聞いてんのー?!ちょっと!牧くん!』
「…あー、聞いてるよーな?聞いてないよーな?」
そりゃ聞いてないんだよ…。と、ツッコミつつ。
右下で武勇伝、語ってきかせている人を見下ろしてると
向かいに座っている所長が嬉しそぅ…。
なんで?
そんな俺の顔みて、所長が
『そーよ。大変だったんだから。チーフ泣きそーになるし、他の社員のフォローで残業続きだし…。かわいそーなんだからっ。嫁にもらってやって!』
ハイハイ…またその話ですかい。
『かわいそーじゃなーいっ!ヨーコ、それはイタい子といぅイミですか?!貧相な子といぅイミですかっ?!』
と、てんであさっての質問を叫んでるよ。
やれやれ…。
ふぅ〜…と、ほんわりとした気持ちで、俺はため息をついた。
この人は、この人なりに
がんばってるんだよな。
相変わらずの社員想い
俺にはマネできねー…。
「たぶん“胸が”貧相というイミですよ」クスッ
ぎゃー!セクハラッ!!
女の胸は、“でかさ”ぢゃないもんっ。感度だもんねっ!
これで、いいって言ってくれる人いるもんねっ!
だそうな。
俺をポカポカ叩きながら、酔っ払い?…いやいや、この人飲んでないし。
ナチュラルハイかよ。
ハイハイ。俺も、そー思います。同感。
まっ。面白いから
あえて口に出さず
放置プレイ。です。
だって一人で、エスカレートして面白いもん…。
フッ…。
大丈夫ですよ。
あなたには、俺みたいのじゃなくて。
もっといいヤツいるから…。
きっといるから。
次からは、主人公の過去に触れていきます。




