28.牧 由貴ですが、何か?①
いよいよ!牧くん視点です。意外と…内弁慶かも。
『あー…もうこんな思いは、やだーー。二度としたくなーーいっ』
ぼやいてるぼやいてる。
「なーい」とか全然可愛くないですよ。
て、言ったら。
あっ。スイッチ入った。
顔歪めてる。
にらんでるにらんでる。
『可愛くなーいでーすよーっ。でも、もう“どうせ”とは言わないもんねっ!』
おっ。言わないのか。
昔はよく“どーせあたしは”って、言ってたのにね。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
元の部署に戻って、二ヶ月。
正直、しんどい。
直属の上司が最悪だ。
いわゆる“ワンマン”
何の根拠があるのか知らんが、部下と皆で考えて決定した(やっっっと、まとめてこぎつけた…が正しい)
ことを
『こんなのできない!私は嫌よ!…ねぇ、こうしない?いいよね!牧くんあとは頼んだよ』
おいおい…何なんだよっ…。
ていうか、おまえらっ!!
なんで何も言わねーんだよっ!
あんだけ苦労して
やっとこぎつけたんだろーがっ。
ちっ…。
俺がいない三年間、こうやって抑え込まれてきたんだろな。
…こりゃ大変なところに、戻ってきたな俺…。
前の部署に異動になったのも、別に俺が希望を出したわけじゃぁない。
この女(…呼ばわり)に、突然言われて異動になったんだし…。
☆ ☆ ☆
「そっか…あそこには、あの人がいたなー」
初めての異動だから、俺なりに(若かったし…)不安や緊張はあった。
でもまぁ、少しでも知った人がいるのと、いないのとじゃ大きな違いがある。
『牧くん!こっちに異動だって?!聞いたよー!よろしくねっ!』
あー相変わらずの明るさだな。
俺には、まぶし…。
「あー、はい。よろしくお願いします。いきなり副主任とか言われましたけど、よく分かりませんけど」
『なんとかなるよー。一緒にやってこー!てか…暗ーい。というわけで、今日うちの部署の飲み会なのっ。所長に聞いたらOKだって言うから』
皆と親睦深めるには、いい機会でしょ?
おいでよーーって。
まぁ別にいいですけど…。いま思えば、人見知りの俺が、早く馴染めるよーにと。
あの人らしい配慮だったのかな。
行ってみるかっ…。
『なーにー!?暗いよー。頼むよー牧くーん。あ、ハジメマシテだっけ?ごめんごめん。ウワサは聞いてるよー。これからのうちを、担っていかなきゃならん世代なんだからーっ。頼りにしてますー』
この所長さん…酔っ払いなのか、素がこうなのか、よく分からんが。
俺に過度な期待はしないで欲しい…。
てか、この人いったい所長に、なに吹き込んでんだか…。
「ここにいる人で部署内全員ですか?いやにおとなしい人多いですけど?」
『うーん…そうねぇ。おとなしいといぅか〜、他人に興味ないといぅか〜。イマドキの子って、お酒飲まないから、所長が“はぶて”ちゃって大変よー。お世話係』
牧くん飲めるからって言ったら、ぜひにってさ〜。
…だとさ。
要は
酒のみ相手が欲しかったワケね…。
まっ タダ酒だったら
いいけどね。
え?タダ酒ですよね?
『昨日は急に誘って、ごめんねー。でも所長は喜んでたよ。ありがとねー』
「あぁ、大丈夫ですよ…。彼女の誕生日でしたけど」
『っ?!ぎゃあーーーっ!!それってダメじゃんっ?!…悪いことしたねーっ。彼女と約束あったんじゃないの?』
「いや別に、何も予定してないし。…なんか怒ってましたけど。…いいんじゃないすか?」
『…………』
あれ。なんで無言。
白ーい目で見てるよ…。
俺なにか言ったかなぁ〜…。
昨日の彼女と言い…
よくワカラン。
正直、記念日とか行事?とか面倒だし。
プレゼントしたいと思った時に、あげる方が良くね?
て、言ったら。
『あんたっ!女心が分かってないねっ?!サプライズも、他の記念日があってこそよ!』
突然なにもないのに、プレゼントされたら
やましいことあると思われるよっ。
だそうな。ふーーん…。
そんなもんなんかね。
…まっ、やましいことだらけだけどねっ。
でもまぁ、彼女のご機嫌とりはしとかないと。
部署も替わるし職場が離れる分、気をかけないと…ヤバいなこりゃ。
さて…
プレゼントでも買いに行きますか…と、俺は
重い腰をあげた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ふっ…と、物思いにふけっていて気がつくと
…あ、まだ隣で
ギャーギャー言ってる。
ほんと、にぎやかだね
あなたは。
あの頃と変わらないよねー。
見てて、飽きないよ…。
もう少し、牧くんを楽しんでくださいませ。




