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第61話『重罪』


 「ヴァレンシュタイン家はずっと、とある事件を追っておりました。ですが、その最中にローゼンベリア伯爵家の不可解な動きが目に留まりましてね」


 ありありと、この場にいる貴族に聞かせるように、ヴィクトリアは語る。

 そして、視線を向けた先はシャロットだった。

 シャロットはその視線に招かれるようにしてヴィクトリアの隣に立ち、王族の方向へと一礼した後でいつもの手帳を取り出す。

 新顔のシャロットの発言を、誰も止められない。シャロット自身は貴族に名を連ねたばかりの伯爵家の養子であっても、庇護を示すように隣に立つのはヴァレンシュタイン家当主に一番近い人物だ。


「ローゼンベリア伯爵家は孤児院を経営しております。ですが、確認してみると、そこにいるはずの人数と実際の人数が合わなかったんです。最初は帳簿の記載ミスかと思いました。でも、調べれば調べるほど消えた子供の数が増えていって……。その内の何人かは、貴族へ売られていたことが分かっています」


 今までで一番低い温度で、空気が凍った。


「人身売買……」


 そう呟いた誰かの声が、異様に響いた。


「戯言を申すな、小娘!」


 呟きを掻き消すように、ノワールの父が叫ぶ。手元に何かあったなら、それを投げ付けていただろうという勢いだ。

 ノワールが殴られていた時に見上げた顔に、それはよく似ていた。

 父は国王へと振り返る。


「国王陛下! アルベルト殿下! 何かの間違いです、これは――」


「静かに。今は続けなさい」


 アルベルトが片手を上げて制止を掛ける。そしてシャロットの言葉の続きを促した。


「孤児院の管理書類には、ローゼンベリア家の奥様の名前が書いてありました。が、それとは別に、ノワール様が二十歳の誕生日を迎える日に名義を移すための書類が、破棄される予定だった書類の中から見付かっています。その日を迎えるより早く、ヴァレンシュタイン家と婚約されたので不要になったのでしょう」


「公になった時、ノワールに罪を被せようとしていた……というところか」


 ヴィクトリアの隣で、わざとらしくレオンハルトが口を挟む。


「ち、違います……! それは、ノワールに役目を残すためのもので……!」


 普段は面倒事に傍観を決め込む母が、叫ぶように口を開いた。

 人身売買は、限りなく重い罪だ。自分の命が掛かっていると言っても過言ではない。

 それを誰よりも理解している母の顔は、青を通り越して白かった。


「その証拠は」


 国王が苦々しい面持ちで口を開く。

 ヴィクトリアが頭を下げて応える。


「はい、全てございます」


「……子供の売買か。事実であれば、極刑も免れまい」


 動揺した貴族達のざわめきが、徐々に大きくなっていく。

 そんな中、セレスティがアルベルトの腕に指を添え縋り付いた。


「アルベルト様……! 私は、何も知らなかったのです。どうか、どうか信じてください……!」


 

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