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失恋し、裏切られた俺の家に、転校してきた幼馴染が毎日ゲームをしにやって来るようになった  作者: 有原優


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第88話 映画



「今日、帰り寄りたいところあるんだけど」

「いいよ」


 俺は頷いた。


「二言返事? 行先も聞いてないのに」

「当たり前だろ。一葉と一緒ならどこでも楽しいしな


 すると、「ありがとう」と、一葉が言った。


「映画をみたいの」

「映画?」

「うん」


 一葉は頷いて見せる。


「恋愛映画」

「アニメ映画じゃなくて?」

「うん。恋愛映画。あ、でもアニメはアニメだよ」

「その心は」

「なんでそんなに不思議がるの? 私だって女だよ」

「知ってるよ。だけど、どうして今のタイミングなんだよ」

「駄目なの?」

「駄目じゃないけど」

「駄目じゃないなら、決定ね」


 そう、一葉は言って、俺の手を掴む。

 その力は強く、俺に抵抗する力を奪っていく。


 そのまま、俺たちは映画館へと向かった。

 

 映画館の前でポップコーンを買う。


「そう言えばお金はまだあるのか」

「バイトするから」


 そう言って笑う。

 

 バイトって……

 それ、生活費に消えていくんじゃないのか。


 なんて思ったが、口には出さなかった。交渉が上手くいけば生活費を貰える可能性もあるし。


 そして、映画館の中へと入る。

 そして、席に着いた。


 ポップコーンをつまみながら、予告映画を見る。それはいかにも面白そうな物ばっかりだ。

 正直この時間も好きだ。未知の映画を見る事が出来るのだから。


「一葉、これ面白そうだな」


 そう、シーズンものの映画の第四弾を指さして言った。


「確かにね」


 一葉は頷いて見せる。


「面白そう」


「次はこれ見るか」

「気が早いって」

「そうだな」


 そして、左側に、席に坐る人がいた。


 俺はそちらを見た。

 




 いや、何でだよ。




 俺はそう思った。その席に坐ったのは、理子だったのだから。





「なんで」


 理子は驚いたかのような表情を見せた。


「こっちのセリフだ」


 理子は一人の様だ。という事は、赤松とは一緒じゃないんだな、と感じる。



「なんで、いるんだよ」

「それはこっちのセリフよ」


 何はともあれ、気まずい空気感になっている。


 くっそ、なんでいるんだ。


「一葉」

「私のせいじゃないよ。それに私も困惑してるし」

「だよな」

「ねえ」


 一葉は理子に対し、口を開く。


「席変わってくれない?」

「無理……」


 理子は、腕を組みながら言った。


「混んでるみたいだし、あたしが映画館出禁になっちゃう」


 まあ、確かにそれもそうか。


 この逃げられない空間の中、理子がいる。

 嫌だなあ、なんて思う。


 その時、一葉に手を掴まれた。


「私だけを見て」


 その言葉にドキッとした。


 理子の方を見るのはただの裏切りだ。それをしてしまってはいけない。


「分かった」


 一葉だけ見て、照れていよう。

 理子に対しては結局は虫が一番だ。



 一葉と一緒に互いに手をつないだ。


 そして、寄り添いながら、互いにポップコーンを食べていく。


 二人の手が絡み合うたびにドキッとする。

 

 そんな中映画が始まっていく。

 祖も時にはもう、理子の存在に対しては空気のように感じる事が出来始めた。


 映画の内容は、ファンタジー要素を含んだものだった。

 自分の気持ちを周りに伝える事が出来ずに困っている主人公、雫。彼女は常に我慢をしていた。家では異母姉妹や義母に対して気を使い、学校ではボッチにならない様に、会話に参加をする。


 そんな毎日に雫は霹靂としていた。


 こんな人生が続いていくのかと。


 ある日、雫はビルの屋上にいた。

 自殺、を考えてはいない。だけど、一人になる時間を作るためだ。


 しかし、そんな時急に雫は空に吸い込まれて行った。


 そして向かった場所は異世界だった。


 そう、恋愛要素だけじゃない。そこには、ファンタジー要素もある。


 異世界は、それこそライトノベルタイプの異世界ではなく、アニメーション映画みたいな雰囲気だ。


 そして、雫は戸惑いながらも、王城へと向かう。異世界代表として向かうといった話だ。


 しかしその中で、王子、アレスは雫に対して、好感を持つと共に悩みを打ち上げる。

 それは、将来この国を背負って立つ覚悟が立ちないという物だった。


 そんな二人は仲良くなっていくが、その最中で戦争が起きて、両軍ぶつかり合う。


 その中で最後の決断を強いられる。


 そう言った内容のストーリーだった。

 

 最初恋愛映画と訊いて、ドキドキしていたが、実際はファンタジー要素もあって、面白かった。


「ふう」


 見終わった後、俺は息をそっと吐いた。


「どうだった?」

「面白かったよ」


 面白かった。少なくとも、見て損はなかったと思えるような内容だった。


「ありがとうな、今日連れてきてくれて」

「どういたしまして」


 そう言って一葉は笑った。


 そして、俺たちは手をつなぎながら、映画館から出た。


 その寸刻前に、理子の顔をちらっと見た。

 理子は、泣いていた。気色悪い。一体どういう事なんだよ、なんて思う。

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