第77話 キス
そして俺たちは家に帰った。
リビングにはもうお母さんはいなかった。鏡花もだ。何をしているのだろうか。それぞれ自身の部屋に入ったのだろうか。
ちなみに父さんは今日も出張中だ、
そしてそのまま一葉を俺の部屋に連れて行った。
部屋の中で一葉は元気がないように見えた。
明らかに不安そうなのだ。
「一葉大丈夫だ。万事うまくいく」
「そうかな」
一葉は相も変わらず不安そうな表情を見せる。
「そうだよ」
俺は言って一葉を抱き寄せる。
「理子の件だってうまくいったんだし」
「あれは偶然上手く言っただけだから」
「それはすまん。俺もばかやったし」
「許す」
一葉は言って笑った。
「恭介君。私を抱きしめて」
「いいよ」
俺は答えた。
「恭介君、服を脱がせて」
「それはダメだろ」
「ばれた」
一葉は言って笑った。
「ばれたって」
「なんか。シリアスだったから」
「俺が本当に脱がせても良かったのかよ」
「大丈夫。そしたら成り行きで」
「成り行きでって」
どう言う事だよ。エッチな事でもするのかよ。
俺が言うと、一葉は肩を寄せてきた。
「だめだ」一葉は告げる。
「私恭介君が……」
「ん」
次の瞬間だった。一葉は俺の体を一気に抱き寄せて来る。
俺はそれに即座に対応できずに、一葉に唇を奪われた。
桐花ちゃんから頬にキスされたことはあった。しかし、唇にキスされるのは正直初めてだった。
つまり、ファーストキスを奪われた、そう俺は今唇を奪われたのだ。
今もドキドキとしている。
「緊張してる」
一葉が言った。
「いや、お前も」
その一葉の表情は明らかに赤くなっていた。
「うるさいっ!!」
そっぽを向かれた。
そして軽くはたかれた。くっそー、
「一葉」
俺は呟く。
「私の初めて奪ったんだから、責任取ってね」
「お前が取ったんだろ」
「えへ」
一葉はそう笑って見せた。
そこから俺たちは、一緒にベッドに横になった。ベッドは一人ようだから、ぎゅうぎゅう詰めだ。
「そう言えばまだ鏡花ちゃんには……私がこの家に住みたいって話、言ってないんだよね」
「そうだな」
とはいえ、賛成してくれるとは思う。勿論それは、一葉のお母さんが許してくれたらと言う話ではあるのだが。
「一葉は俺と一緒に寝れて」
「うれしいに決まってるでしょ!!」
一葉は即答した。
「私が恭介君がいない期間どれだけ寂しかったと思ってるの?」
「それを言うなら俺も寂しかったよそう、寂しかった。その気持ちに嘘はつかない」
「つけない、でしょ」
「そうだな」
つけるわけが無いんだから。
「それにしても、今日の恭介君積極的じゃん」
「一葉のせいだろ」
「恭介君もそんなムード作ってたじゃん」
「それに関しては否定しない」
否定が出来ない。
たぶん互いがムード作ってたんだろう。
キスを奪ったのは一葉だが、一葉を俺の部屋にさらったのは俺だ。
そもそも、キスを拒むことは出来たはずだ。それをしなかったという事は、俺は一葉を受け入れたかったのだろう。
「でも、キスしたのは一葉だからな」
「逃げなかった恭介君も同罪だよ」
一葉は言って笑った。
そこから俺たちは気が付けばベッドに寝転がっていた。
そして睡眠へと落ちたのだった。




