第72話 告白(?)
「恭介君だけの意思でできる事なのそれ」
一葉は俺の宣言に笑って返した。それは、嫌味とかじゃなく、ただ単に微笑ましい笑みに俺は思えた。
「分からねえよ」
俺は言った。俺個人で決められることなのだろうか。
分からないけど、
だけど、
「そしたら、毎日一緒に寝られるだろ」
純粋なメリットであり、俺がぜひともしたいことの一つだ。
俺が言うと、
「そうかもね」
言ってまた笑って見せた。
そして、軽く冷め始めたご飯の残りを俺たちは口に入れていくのだった。
そして、午後はイルカショーを見る事にした。
そこでまたシリアスな空気はまた消えていた。
今の俺たちはまた水族館を楽しむ幼馴染デートとなった。
イルカショーの席に一葉とともにつく。
その中で、
「なあ、一葉?」
「なに?」
「イルカショーって一葉は見たことが」
「ないかな」
そう、一葉は告げた。
「だよな、俺も見た記憶が無くて」
「前は確か、時間が合わなくて見てないんじゃなかった」
「そうかもな」
見た記憶がないという事はきっとそう言う事だろう。
自慢じゃないが俺は記憶力が良くない。だからこそ、これ関しては一葉を頼るしかない。
何しろ、俺の見た記憶がないは、『見ていないから記憶がない』、じゃなくて『見たけど覚えていない』の可能性があるからな。
二人で、イルカショーを見る。
それは、生まれて初めてのイルカショーだ。
「なあ、一葉」
「なに?」
「もっと前に行こうぜ」
きっと前の方の席の方が、イルカショーをもっと楽しめるだろう。
「水飛ぶけどいいの?」
「ああ」
「男だ」
そう言って一葉は笑った、
そして、目の前の景色を眺める。今は静かな水面のみが見えている。だけど、始まるとここで、大きなイルカたちがジャンプして、水が跳ねるのだろう。それが、今から既に楽しみだ。
そして、時間が来た。早速イルカたちが中央に集まってくる。
かわいいイルカたちだ。
そして、早速飛び跳ねた。空中に飛び跳ねて行く。
そして、空に飛び、水面に戻っていく。その時に大きな水しぶきを上げた。
それが一気に、俺たち向かって飛んで来る。
水しぶきがかかる。それを受け、俺たちの服はびしょぬれになった。
「あはは」
一葉はそう言って笑う。
「びしょぬれだな」
「恭介君も」
「ああ」
お互いにびしょぬれだ。だけど、それがなんとなく気持ちがいい。
服の布地にしみ込んだ水が気持ちがいいのだ。
この濡れた服も思い出の一つだ。
後ろにいる人たちが可愛そうに思える。何しろ、この水を浴びれていないのだからな。
「前に来てよかった」
一葉がそう呟くと、またイルカが水に飛び込み、水が俺たちの方に跳ねるのだった。
そして、水が飛び交う中。
「恭介君」
「なに?」
「お母さんに相談してみる。恭介君の家に住めないか」
「急だな」
「うん。急。だけど、なんか、恭介君と一緒に見るの楽しいし、ね」
「まあな」
正直一葉が一緒じゃなかったらここまでは楽しくなかっただろう。それに関して一葉に感謝をすると同時に、
「俺も一葉と一緒の家に住みてえよ」
俺は言った。
「エッチ」
「エッチって何だよ」
「同じベッドで寝たいってことでしょ?」
「それ自体おかしいんだよ。この前のお泊りだって、一緒に部屋にしたの一葉だろ」
「そうだっけ」
「そうだよ」
「で、恭介君は私にどこで寝て欲しい?」
「っは?」
「きいてるの。答えて」
「答えてと言われてもな」
どう返事しても、良くない結果になってしまいそうだ。
でも、
「そりゃ、一緒の部屋に寝て欲しいよ」
ドキドキするし、寝つきは悪くなるかもしれない。
だけど、この前一葉と一緒に寝たことは、気持ちがいい時間だったのだ。
そう言えば理子と同じ部屋で寝たこともあったな。あの時はどうなったんだったっけ。
ああ、そっか。理子が性行為の誘いをしたけれど、俺はそれを断ったんだったな。
今は、理子の事は考えるのは辞めるか。理子の話はすでに済んだ話だ。今更考えても仕方がないだろう。
「エッチ」
「エッチじゃない!!}
俺は叫んだ。
その言葉に、周囲の人たちがこちらを振り向く。正直軽く恥ずかしいと感じた。
イルカショーよりも大きな声を出したのか、飼育員の方もびっくりした顔で、こちらを見た。
流石はプロだ。次の瞬間には、真剣な顔をして、イルカショーに集中を戻して行った。
そして俺たちは周りからバカップルと思われているだろう。うー恥ずかしい。
「なあ、一葉」
俺は声を細めて言った。
「なに?」
「俺を煽るのもいい加減にしてくれ」
「なんで?」
なんでじゃねえよ。
「俺だって男なんだよ。そりゃ、一葉みたいな可愛いやつと一緒に寝たいに決まってるだろ」
思わず言ってしまった。
こんな言葉、イルカショーの真っ最中にいる言葉じゃねえだろ。
「ふうん」
一葉は言って笑った。
「そうなんだ」
「そうなんだって何だよ」
「だってそりゃ私も恭介君みたいなかっこいいやつと一緒に寝たいに決まってるじゃん」
「っ照れさせるようなこと言いやがって」
「先に行ったのはそっちでしょ」
言って一葉はまた笑った。
こいつ。相変わらず俺の欲情を招いてくる。
「私、負けたくない。恭介君を勝ち取れるなら、私は何でもするよ」
「おう、それがいいさ」
そして二人で笑った。
そして、水族館デートはあっという間に幕を閉じた。
楽しい時間は早々に過ぎ去るものだ。
一葉は一葉の戦いがある。「一緒について行こうか」なんて、俺は言ったが、一葉は断った。
どうやら、俺が一緒に居たほうがややこしくなりそうだからと言う事だ。
だけど、何かあればすぐに言ってくれ、とも言った。
それはそうと、一葉のお母さんの彼氏はフランス人か。
どう言う事なんだよ、と思ってしまう。




