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失恋し、裏切られた俺の家に、転校してきた幼馴染が毎日ゲームをしにやって来るようになった  作者: 有原優


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第71話 お母さん

「もう、お母さんはいないの」


 一葉は言った。それはつまり一葉のお母さんが死んでしまったからと言う事なのだろうか。


「どういうことだ?」

「もう、あの頃のお母さんはいないの」


 その言葉に、俺が首をかしげる。やけに抽象的な言い方だ。


「私のお母さんね、彼氏が出来たの」

「彼氏が出来たって、それ」


 一葉の父親は存命のはずだ。


「お父さんは私たちを捨てたの。浮気してたらしい」

「浮気」

「うん、そう。だから、そう言う事」

「そう言う事って言われても」


 理解が追い付かない部分がある。


「一から説明するね」


 そこから一葉の説明が開始されていく。




 ★



 一葉の転校の理由は、箔をつけるためだった。それはつまり、女学園に入った方が、勉学的にも学歴的にも上手くいく。それと同時に、学校の近くに引っ越すこととなった。


 そこで、一葉は少し息のしづらさを感じたが、楽しく暮らした。

 恭介とも連絡を取りたかったが、なんとなく気まずかった。

 遠くに引っ越すと思ったら、実は近くで恭介の家に行けるにもかかわらず、喧嘩になったからと言う事もあった。


 それから、暫く楽しい日々を過ごしていた。


 だけど、それが変わったのはすぐだった。


 一葉の父親の不倫がばれたのだ。そのせいで家の空気が悪くなった。一葉はただただ、その状況を変えたいと思った。その状況を変えるために子供なりに努力した。

 だけど、仲を取り持つことも出来ずに浮気が成立した。


 裁判の結果一葉の親権と家を手に入れた。それと養育費だ。

 そのおかげで、裕福になった。

 だけど、そこから、一葉の母親は家に男を入れてくるようになった。


 それは一葉にとっては辛い事だ。常に知らない男が家にいる。落ち着かない気分だった。恭介と連絡を取ろうとしたこともあったが、それは叶わなかった。


 何しろ、勇気がなかったのだ。


 常に知らない男と母親が一緒におり、その中で、邪魔ものみたいな扱いを受ける中、

 学校でも場を悪くしないように笑顔で振るまった。

 だけど、その中で、一葉への心労はたまっていた。


 そんな時に、恭介のお母さんから連絡が来た。


『恭介が落ち込んでるの。助けてくれない?』


 その言葉に一葉は悩んだ。今の自分が恭介に会いに行っても構わないだろうか。

 恭介と喧嘩は慣れしたのに会いに行ってもいいのだろうか。


 思ったがもう迷う必要性は無かった。

 一葉は即返答をし、

 そして、恭介の元へと向かったのだった。



 そこまでは良かった。恭介と会うようになって、楽しい日々が続いた。

 転校の申し出も即受け入れられた。

 だけど、恭介を家に連れてくることは出来なかった。

 恭介に今の家を見られたくないのだ。



 そんなある日。



「一葉一緒にフランスに行こうね」


 一葉の母が告げた。


「フランス?」


 そう一葉が訊くと、


「不服なの?」

 そう、怖い目でにらまれる。


 それに、少しびくっとした。


「一葉ならついてくれるよね」


 その目には逆らえぬ圧があった。


 その言葉に拒否出来なかった。

 ★




「それが私の過去、そして今置かれている状況」


 一葉のお母さんはとは、実の所そこまで会ったことがない。一葉が俺の家に来るときはたいてい俺の家に来るし、一葉の家に行ったことも数回だけのはずだ。


 俺自身、記憶力にはそこまでの自信を持ってはいないが、そうだった記憶がある。

 一葉のお父さんにも会ったことがある。

 あの人が浮気して、今の状況があるのか。

 彼が原因と言いたい所だが、一葉の母親も問題大有りなのだろう。

 人の親を悪く言うのは良くないが、話だけ聞いていると毒親という結論に易々と辿り着くことができる。



「それで、つまり」

「うん。そのフランスの彼氏の家についていくらしくて、私も一緒に……」

「理解したよ」


 そう、つまり今の問題点に感じてだ。

 それが早急になんとかしなければ問題であるという事は、俺でも分かる。



「で、フランスなの?」

「うんフランス」

「マジで?」

「マジで」


 なんでフランスなのかよ。

 確かにフランス人はクールなイメージがある。、イケメンのイメージも。

 勝手ながら女受けは良さそうなイメージだ。

 しかし、



「なんで、俺の問題が解決した途端に一葉に問題が出て来るんだろうな」

「ごめんね」

「謝る事じゃない」


 謝らせるために言ったわけじゃない。

 だけも


「ごめんね」


 そう言って彼女は謝った。


「なんで、謝るんだよ」

「厄介事を持ち込んだから」

「謝る事じゃないだろ」



 それを言うのはまさにおかしい話だ。

 いくら考えても、一葉が悪い道理が見つからない。


 それに、その理論で言えば、俺の方が明らかに悪い。



 と言うかそもそもこれは誰が悪いとかいう話でないと思う。悪いのは、どう考えても、一葉の両親なのだから。


「だから、家に来て欲しくなかったんだな」


 俺が言うと、彼女は静かにうなずいた。

 首肯したという事だ。


「それは、どうにか出来ないのか?」

「出来ないと、思う。だって逆らえるわけないと思うし」


 一葉が弱気だ。それこそ、俺に対する一葉の熱情とは大違いだ。


 それはきっと、恐怖なんだろうな、と思う。一葉には恐らく失敗体験がある。

 それはたぶん、一葉の両親に対してだろう。


 俺が理子に対して強く出れなかったのと同じだ。一葉は自身の両親に苦手意識を感じているのだろう。

 だけど、俺の場合は一葉が俺の理子に愛する恐怖心を解消してくれた。

 

 だからこそ、俺が外してやらなければならない。 一葉の、両親に対する恐怖心を取り払ってやらなければならない。

 となれば、一葉に提案することは


「一葉」

「なに?」

「俺の家に住め」


 その言葉に一葉は、「なにそれ」と笑って見せた。



 

 

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