第69話 相談
あれから理子は学校に来なくなった。当然だと思う。味方がいないのに学校に行くのもしんどいだろう。
たぶん、転校とか何かで学校を去るのだろう。
そんな中、そわそわしているのが見えた。桐花ちゃんだ。
俺の目の前に立ち俺と話したそうにしている。
一葉は先生から呼び出された。話したいことがあるからだそうだ。
というわけで、今この場にはいないのだ。
なぜ、先生は一葉を呼んだのか、それは分からない。
ただ、忘れがちではあるが、一葉は転校生だった。恐らくそこで話したい事でもあるのではないだろうか。
俺が息をそっと吐き、
「なに?」
俺はそう問うた。すると、
「理子さんの件で、話がしたいです」
そう言われた。
正直あまり気の進まない議題だ。
先ほどはちらりと考えてしまったが、理子とは正直会いたくもないし、思考の片隅にも入れたくない。
だけど、
「分かった」
桐花ちゃんの頼みなら聞かない訳にもいかない。
なにしろ、彼女のおかげで、今回の難題の解決への糸口が見つけられたのだから。
そして俺は一葉に『屋上に行ってるな。ちなみに桐花ちゃんと一緒』と打って桐花ちゃんと屋上へと向かった。
そして弁当箱を出す。
「それで、何だ話って」
「理子さんの事に関してですけど、何とかできませんか?」
その言葉には考えるまでもなく返答が出来る。
答えなんてNOに決まっている。それは考えるまでもない事だ。
悪いが、俺には理子の件に関して、何もできない。いや、したくない。
俺は答えた。
「お前が個人で動くならいいけれど、それに俺や一葉を巻き込まないでほしい。これは何も意地悪で言ってるわけじゃない。ただ、俺には優しくする義務がないんだ。だから、助けるなら、寄り添うなら一人でしてくれ」
正確には義務云々とかじゃなくて、心情的に嫌だというのが正解だ。
今理子がいじめを受けている件。
正直なところを言えば、俺にも思うところもある。なんでいじめを受けておらず裏切られてもいないお前らがいじめるんだと。
だからと言って天と地がひっくり返ったとしても、助けるなんて言う選択肢が生まれるわけが無いのだ。
これは理子の自業自得。同情の余地なんてほとんど存在しない。
「だから、ごめんね」
俺は頭を小さく、下げた。
「いいんです。分かってたことですから」
少し暗い表情で彼女は言った。
「恭介君」
そして、静かに呟き、
俺のほっぺに唇を合わせチュッとした。
そして、彼女は逃げるように下へと降りて行った。
なんだよ。
それとほとんど入れ違いくらいであろうか、一葉が上がってきた。
「お待たせしました」
そう、一葉は笑って言った。
「おう、待ったぞ」
そう言って笑う。
だが、声色は少し暗い物を感じた。
「どうかした?」
俺は訊くが、彼女は笑って、
「何でもないよ」
と言った。
本人が何でもないと言っているのに、問い詰めるのはいけない。
「分かった」
俺はそう答えるのだった。
「ねえ、恭介君。なんで桐花ちゃんと二人でいたの?」
「別に、彼女から話したいことがあると呼ばれただけだよ」
「何か話したの?」
「理子の件だ。助けてやりたいんだってさ。俺は断ったけどな」
「それ、正解だよ」
一葉は弁当箱を開く。
そして、口を開いて一言。
「もしさ、私がいなくなるとかなったらどうする?」
「どうするって、どういう意味だよ」
「そのまんまの意味だよ」
そして、彼女は笑った。
「ねえねえ。どうする?」
「嫌だよ、そんなの」
嫌に決まっている。嫌、意外の言葉なんてない。
それはもう、自身の半身が熱で溶け切ってしまうような、果てしない痛みを伴う事になってしまうだろう。
「そう言ってくれるの嬉しい」
「ちょっと待て、一葉」
「何?」
「いなくなったりするのか?」
「いなくなんかならないよ。ただの確認」
「確認って」
そんな確認なんていらないと思う。訪れる事のない仮定を置いたとしても。
「ところで」
再び一葉が口を開いた。
「この前遊園地に行ったことがあんじゃん」
「ああ、あったな」
桐花ちゃんとデートしたことがあった。
いや、一葉の許可はちゃんと取ったと思うから、勝手に、ではないと思うけど。
「でさ、その埋め合わせをしてほしいの」
「いいよ。じゃあ、遊園地に」
「ううん、遊園地の代わりに一つ付き合って欲しい所があるの」
そう、一葉が言った。
それはどこかと思っていると、それは水族館だった。
遊園地じゃなくていいのか、と聞くとそれはこの前いったから別にいいらしい。
と言う訳で俺たちは週末に水族館に行くことになった。




