第68話 いじめ
その二日後の水曜日。まさに桐花ちゃんが言ったとおりだった。
早速理子の机に『嘘つき』『地獄に堕ちろ』『死ね』などと書かれていた。そこには『売春婦』何という言葉は書かれてはいなかった。しかし、それを見て若干気分が悪くなった。
理子が地獄に落ちて欲しいと思っていた、が。なんとなくそれは違うと、感じた。
理子に被害を受けていない奴らが何復讐しているんだ。それをするのは、それをしていいのは俺だけだと、思った。
そして、もう一つ変わったポイントがある。それは、竹下さんが学校にまた投稿している事だ。
あの日からずっと学校を不登校だった彼女が急に復帰した。
まさに入れ替わりといった形だ。
たぶん関係はないだろう。彼女の問題が解決したのだろうか。それこそ、彼女個人が抱えている問題に対して。
とはいえ、彼女は俺とは住む世界が違う。クラスメイトだが、本来なら関わる事がない人間だ。
彼女を味方に取り入れようとしていたのはもはや過去の話であり、今は関係がない。だけど、一つだけ、学校に戻ってきてくれてよかったな、と言う気持ちだ。
正直、理子のいじめに対して思うことがある。
俺はあそこまでの虐めは受けていなかった。
俺は、正直受けてきた虐めと言うのはただの無視と、悪意を受けただけだ。だけど、それだけで、暴力も振るわれてなければ、物も隠されていない。
机への落書きも受けていない。俺はあそこまでの辱めを受けてはいなかった。
だけど今の理子は何だ。机に落書きをされており、更に、軽く濡れている。恐らく水をかけられたのだろうか。
酷い光家小田。
だけど、これは、俺は喜ぶべきではないだろうか。
ァ彼女が絶望していることに対して、喜ぶ権利が俺にはあるのではないだろうか。
だけど、素直に喜べるほど俺の心は鬼ではなかった。
くそっ、何なんだよ俺は。
そして、それからは至極平穏な日々を取り戻すことが出来て行った。
俺の人生が上向いているのを日々感じ取れている。喜べよ、なんて思いつつも俺にはそれは不可能ならしかった。
「恭介君」
「なに?」
「怖い目をしてるよ」
知ってる。
「恭介君」
「何だよ」
「同情したらだめだよ」
「分かってるよ」
分かってる。分かっているはずだ。
だけど、俺以外の人が「いじめを行っているという事に正直むかむかを感じるのだ。
ただ、
「理子の絶望している顔は好きだけど」
そう、俺は言った。
「一葉は」
「なに?」
「今の状況に対してどう思う?」
「嬉しい」
嬉しいか。俺は一葉みたいに素直になるべきなんだろうなと、思った。
理子の目を真っ直ぐに見る。絶望をひしひしと感じているようだ。
今の理子の絶望は俺が感じていた絶望それ以上だろう。
しかし、女子という物は恐ろしい。ここまで鬼になれるというのだろうか。しかも前まで一緒に楽しそうに話していたのに、こうやって裏切るという事。
気に恐ろしいと思った。
★
ついに、と言う感じだった。ついにあたしは虐められ始めた。
もう見えていた結末だった。
あたし的には正直ムカつくものだった。だけど、あたしが反論したところで、何も状況が改善したいことを知っている。
だってあたしがいままで恭介を虐めてきた。その中で、あたしは恭介に反撃されないように、気を付けながらいたぶってきた。
それをやり返されたのだ。
あたしにはもう反撃する気力なんてなかった。
「赤松」
あたしは、声をかけた。その相手は、赤松だった。
「なんですか」
赤松は言う。
「あたしたち別れましょ」
あたしはそう言った。あたしはこいつを利用していただけだ。顔も平凡だし、テクもない。
お金もそこまで持っている訳じゃない。アタシにとって付き合う意味はほとんどなかった。
「なんで……」
「もう付き合う意味もないでしょ。もう学校行ってもいいよ、あたししばらく学校休むし」
「確かに俺は逃げた。理子から連絡をもらった時に、休むという選択を取った。だからなんですか」
「それもあるわね。あたしを助けてくれないんだもん」
一応彼氏ということになっているのに。
酷い男だ。
利用できると思ったから告白に乗ったのに、結局恭介のカラオケ音声くらいしか録ってきてくれなかった。
あたしは無能には興味ないし。もう恭介を貶められないのなら意味がない。
「じゃあね、一般クラスメイトくん」
あたしはそう言って手をヒラヒラと振った。




