第六十話 バトミントン
食事の後三人で出かけた。
バトミントンだ。
とはいえ今日は見学だけだ。鏡花が楽しむ姿を目に映すだけ、の予定だ。
俺たちがバトミントンしてもいいが、そうなると足手纏いになる。
バトミントンは軽くやったことはあるが、鏡花の足元にも及ばない実力だ。それで強化と肉薄しろと言われる方が無理な話である。
「それにしてもうまいよね」
鏡花がバトミントン絵を行う姿を見て、一葉が呟いた。
「憧れるなあ」
「憧れるのか?」
「うん。私運動できないし」
一葉が頬をポリポリとかきながら言った。
確かに一葉に運動できる印象は全くと言ってもいいほどない。
失礼ながらだ。そしてそれは俺も同じだ。俺も運動は全くと言っていいほどできない。もし俺に運動ができるなら鏡花と一緒にバトミントンをしているはずなのだ。
それに、昨日一葉にニヤニヤされながらぷにぷにとか言われなかったはずなのだ。
そして一葉と二人でバトミントンしている様子を目に見続けている。
今日、結局強化にとってどうなのかと、思う部分もあった。だけど、鏡花は見るからに楽しそうだった。
俺はそれを見ていいなと感じた。鏡花の楽しそうな表情を見るのは良い事だ。
「私たちも何か運動しちゃう」
「え?」
「部活とかじゃないけど、でも二人で運動習慣をつけるの」
「確かにそれもいいかもな」
そう、感じたのは間違いなく一葉と一緒だからだ。
一人なら運動なんて絶対にごめんだ。だけど、それが一葉と一緒ならば途端に楽しそうな物へと変わっていく。
なんかいいなと、感じたのだった。
そのまま鏡花は午前中汗を流した。
「結局どうだった?」
「満足はいかない」
鏡花は言った。
「楽しそうだったのに」
一葉が呟くと、
「いいんだけどね。でもまだいいところありそう」
「次はどこがいいんだ?」
俺は訊くと、
「うん、ついて来てもらっていい?」
その言葉に俺は一葉と顔を見合わせ頷いた。
次の場所では流れで俺たちもバトミントンをすることになった。
それと、今まで知らなかったが、鏡花はかなり、俺たちが思っていた以上に名が知れているらしかった。
だからこそ、鏡花は結構VIPに近い待遇を受けている。
そこで、部内でも元から鏡花が悪い訳ではないのに、嫌われていたのだろう。嫉妬だ。
「行くよ」
一葉が言った。そして一葉は羽をこちらに飛ばしてくる。俺はかろうじてそれを受け跳ね返す。
それを一葉が受け止める。だけど、三ラリー程度で落ちてしまった。
そこから先も中々ラリーは続かない。毎回羽が思わぬ場所へと飛んで行ったり、変な場所に落ちたりとか、強く弾きすぎて場外(線の外)に落ちたりとか。
様々な失態を重ねて行った。
想像以上に難しかった。
「お兄ちゃん、手伝ってあげる」
鏡花が俺の元へと飛んできた。
「お前、あっちはいいのかよ」
「大丈夫休憩中だし」
それを聞き、鏡花を見ると汗びっしゃりだった。
「こういうのにはコツがあるの。ほら」
そして、彼女は俺の手を掴む。
そして、ラケットを動かして行った。
鏡花の力がラケットに上手くかかっていくそれを受けて、普段彼女が意識している事。それがなんとなく気持ちいい。
上手く力をラケットに伝達し、跳ね返せている気がする。勿論それが気のせいとかじゃない。
ちゃんと跳ね返していけている。
「力が強かったらいいとかじゃないの。力任せにはなっても上手く力が伝達できなくて、変な方向に言っちゃう。だから相手コートに帰すことを意識して」
その言葉に、俺は頷いた。
「そして返すことを意識する。鏡花曰く、返す事にはそこまで神経を使わなくてもいい。ただ、慣れれば自然にできるからだそうだ。
それでも失敗したので次の動きを鏡花に教わる。
その中で、最後の方にはようやくうまくラリーを続けられるようになった。
「あたし、ここにする」
そう言ったのはすぐ後だった。
「お父さんの許可が出てからだけどな」
「うん。分かってる。……お父さんの許可出るかな」
少し心配そうな目渕をする鏡花に、
「大丈夫でしょ」
そう、一葉が言った。




