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失恋し、裏切られた俺の家に、転校してきた幼馴染が毎日ゲームをしにやって来るようになった  作者: 有原優


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第六話 幼馴染との昼ご飯

 ホームルームが始まると、先生は「静粛に」と、手をバチンと叩いた。


 その音で騒がしかった教室が一気に静かになっていく。


 その光景を見て、先生はにやにやとしていた。俺たちの学校の先生は、名前を若槻沙耶(わかつきさや)と言って、その長い長髪と凛々しい眼鏡姿で生徒から、人気を博している。



「今日は、重要なお知らせがあります」


 先生は開口一番に、そう言い放った。


「なんですか、せんせ」クラスのお調子者の、沢木美優が手を上げる。


「女子よりも男子の方に重大ニュースかもしれんな」

「それって転校生ですか」男子、大内大吾が言う。「正解だ」先生はそう答えた。



「じゃあ、早速入ってきてもらおうか」


 そう言って先生は教室の外に出て言った。恐らく教室の外に転校生がいるのだろう。

 そんな状況下の中、少し面倒くさいと感じていた。



 ただでさえ、理子の事で頭がいっぱいなのに、これ以上情報量を増やさないでほしい。


 そして、一人の女子がドアを開け、教室の中に入っていく。

 だが、その転校生を見て、俺は開いた口がふさがらなかった。


 そこにいたのは奇麗な茶髪をした女の子、そして、よく知ってる顔。



 そう、一葉だった。




 その転校生を見て、皆は、口々に「美人だな」「K女子校からって、進学校じゃん」「え、かわい」なんて、言っていた。

 だけど。俺はその状況を瞬時に把握することは出来なかった。

 というよりも、なぜ、彼女がここにいるのかが分からない。


「K女子高から来ました、浦部一葉です。家の事情で転校することとなりました。よろしくお願いします」


 そう、頭を下げた。


 なんで、ここに一葉がいるんだ?

 一葉は、転校してきていいよ。そんなことを言っていた。


 まさか有言実行で、俺が助けを求める前に助けにでも来たというのか。


 俺の気持ちは嬉しさ半分、戸惑い三割。そして……がっかりな感情が二割だった。


 一葉が転校してくれて、嬉しいとは思う。

 ……だけど、俺のためにわざわざ転校してきたのなら、それは俺のせいで一葉の運命を変えてしまったという事と同義で、それは大いに悲しいことだ。

 そして――


 理子のターゲットになる恐れがある。

 理子が誰かをターゲットにいじめを行ったなんて言う記憶はないし、無くてあってほしい。振られたとはいえ、数日前までは俺の好きな人だったのだ。


 だけど、一葉が俺にかまってきたらどうなる。

 理子は恐らく、一葉を虐めこそしないかもしれないが、小さな嫌がらせはしてくるかもしれない。

 しかもそれは周りにばれない様に小癪な手段を有事て。


 そうなれば絶対に嫌だ。

 俺に関わることで、一葉が苦しい思いをする事。それが絶対に嫌なのだ。


 そして、次の瞬間、俺はとあることに気が付いた。

 俺は、一番後ろの席だ。そして、俺の隣は空いている。先程、冗談交じりに思考に出したことがぴったりと当てはまっていて、外れていてくれたらよかったのに、なんて思った。



 こんなのどこぞのラブコメ漫画の状況だよ。

 ほんとうになぜ、俺の隣だけ席が開いているのだろうか。


 だけど、もう運命は帰られることはない。


 一葉は俺の隣に座って。


「よろしくね」


 と言った。



 詳しい事は後で聞くとして、今はとりあえず。


「俺にはあまり話しかけない方がいいですよ、俺は嫌われてるので」


 あくまでも、他人行儀で、言った。

 彼女はどんな反応をするだろうか、嫌がるのだろうか。

 しかし、彼女は一言、


「分かりました」


 と言ったのだった。



 その後はメールでのやり取りだ。当然、口で会話をするわけにはいかない。

 俺は、トイレの個室に入り、メールを打っていく。


『一葉、これは一体どういう事なんだ?』


 俺はまずメールを送った。


『転校してきた!! 恭介君に会いに!!』


 まずふざけてるとしか思えない内容のメールだ。


『いや、転校するにも、早すぎるし』いや、違うな。一瞬送って即座に送信を取り消す。そして――


『なんでここに来たんだよ』と送った。


 今の俺には訳の分からない事ばかりだ。


 だけど、俺はこれだけははっきりとさせておきたかった


『俺の為なのか?』



 そう、送った。

 10秒、20秒、返信が来ない。

 来ないのは当たり前だそこまでの時間は経っていないのだから。


 しかし、焦りの感情がわいてきた時だった。


『違うよ』


 そう、送られてきた。

 その言葉には安堵をし、同時にがっかりとした。

 なぜ、がっかりする必要があるんだよ、と自分に言いたかった。


『これは私の、私だけの選択だから」


 いまいち意味が分からない。一体どう言った意味なのだろうか。


『とりあえず意味が分からないけれど、ちゃんと教えてくれるんだよな』

『うん。でも、メールじゃあやり取りが難しいから、直接話したいな』

『分かった。ゲームでもしながら一緒に話そう』


 そこから、2分、返信が来ない。


 そして、来た返信は、


『昼ご飯食べながら話すね』



 という物だった。




 そして、昼休みとなった。

 一葉は、


『屋上に行こ』と、メールを送ってきた。

 そのメールを見て俺は、唾をのんだ。

 本来屋上は特別な用事でもなければ入れない事にはなっている。


 だけど、それはあくまでも一応そうなっているっていうだけだ。


 実際に破っている生徒もそこそこの数いる。

 それに先生もわざわざ注意することもないのだ。


 そして、


 屋上に来ると、そこには既に一葉がお弁当を広げて待っていた。

 今日は他に生徒はいない。二人きりだ。


「食べよ」


 にっこりと笑う一葉の笑顔は今日も眩しかった。


 そして僕はカバンからサンドイッチを取り出した。コンビニの物だ。


「それでいいの?」

「ああ」

「だめだよ。栄養も取らないと」

「入ってるだろ」


 俺はサンドイッチに挟まれているレタスを指さす。


「駄目だよそんなんじゃ」


 一葉がお弁当を開ける。そこには多種多様な野菜が入っていた。一葉は一体どれだけの野菜を取ろうとしているのだろうか。というか、


「野菜の割合、50を超えてね?」


 明らかに、野菜>おかず+ご飯なのだ。


「……俺からしたらそっちの方がおかしいと思うよ」

「え、ほんと? 私からしたら、恭介君の方がおかしいけど」


 歯をむき出しに笑う。


 なんだかもう、いつものペースになったな。

 一葉が着ているうちの学校の制服にももう慣れてきている。

 この前家に来た時は、前のK女子高の制服だったはずだ。


 さて、と。


「なあ、一葉。本題に入ってくれないか?」


 急かすのも良くはないと思っている。だけど、話してもらわないといけない。なんで一葉がこの学校に転校してきたのか。


「いいけど、条件が一つ!!」


 指をぐいっと突き出す。


「私のこれ、食べて」


 そして箸でレタスを掴む。そして、俺の方に差し出してきた。


「なんで」

「いいじゃん」


 頬を膨らませた。こうされては仕方がない。

 一葉は元々こう言った行動が好きなのだ。こういう一見意味のなさげな行動が好きなのだ。


「分かったよ」


 そして、俺は、すでに食べ終わったサンドイッチの袋を差し出す。すると、一葉はぱっと野菜を置いた。


「こんなことしなくても、家で野菜くらい食べてるよ」

「でも、カップ麺のゴミが沢山あったよ」

「っあれは」


 言い逃れが出来ない。何しろ、俺は荒れていた時、カップ麺を食べて過ごしていたのだ。

 勿論最初は家で、母さんたちのご飯を食べていた。だけど、所謂カップ麺の俗っぽい味にひかれてしまった。


「言い逃れ出来ないでしょ」

「いいから、話せよ」


 いい加減に、この話題から離れていたい。


「はーい」


 一葉は野菜を自身の口にくわえ、そして再び口を開いた。


「私がこの学校に来るのは、もう決まってたの。前から」

「前から、それは俺たちが再会したあの日に?」

「うん。だって転校の手続きがこんな早くに済むとは思えないでしょ」

「それは、まあそうだな」


 最低でも二週間はかかるはずだ。


「だから、転校したのはあくまでも私の意思。勿論転校先には、恭介君がいるところに決めたけどね」


 そしてプチトマトを口に入れる。


「私は、失敗したの。自分のキャラを変えようとして失敗したの。根暗だったキャラを変えるためにね、友達を増やそうとしたの。だけど、それがいけなかったみたい。いつしか、八方美人だとかぶりっ子とか言われるようになった。だから、私も不登校みたいなものだったの。だからあの日は、学校に荷物を取りに行くために学校に向かってたの」


 なら、俺に対して偉い口きけねえじゃねえか。なんて、この空気では言えない。

 その数はの顔は沈んでいて、まるで苦しい過去を示しているようだった。


「がんばったんだな」


 俺は一葉の頭をポンポンと撫でる。


「そういうところずるい」

「ずるい? 何が?」

「言わないもん」


 そして、つくねバーグを口にくわえた。


「何だよ」


 ふうっと小さな息を吐いた。 


「ねえ、恭介君と学校でも話させてくれない? 寂しいもん」

「寂しいっつってもなあ」


 今の俺と学校で仲良くするっていう事はこの学校の多くの女子を敵に回すっていう事だ。

 勿論男子も。


「家でのゲームだけじゃダメか」

「だめっ!!」


 強く叫ぶ。その声量が大きくて、正直かなりびっくりした。


「知ってるよ。恭介君がわたしと一緒に居たくない理由なんて。でも……」


 そして、一葉は頬を膨らませる。


「でも私は、恭介君に会いたくて転校してきたから。……でもいいの。これは只の我儘だから」


 途端に俺の中に申し訳ない気持ちがわいてきた。

 一葉に話しかけて欲しくないのは、一葉を守るためだ。だけど、俺のエゴでもある。そうだけど、一葉の気持ちを思うなら一緒に居るってことだろ。


 どうしようか。俺は考える。

 だけど、答えはすぐに出た。


「俺と一葉は隣の席同士だ。だから自然と会話を増やせるはずだ。幼馴染であることは伏せて、でも仲良くするでどうだ?」

「幼馴染ってところ伏せる必要あるかなあ」

「無いかもしれないけど、仕方ねえじゃねえか、そこを漏らしちゃうとなんか嫌がらせされるかもしれないし」

「もう!」


 再び頬を膨らませる。


「私がいじめられても、嫌み言われても別にいいよ。だから、学校では一緒に居ようよ」


 その言葉には覚悟が込められていると感じた。



「分かったよ」


 俺がそう言うと、「やった!」と一葉は喜んで見せた。


 だけど、俺の中には不安の感情があった。


 何しろ、何をしてくるか分からない。そんな中俺に一葉を守り通せる自信が無かったのだ。




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