第五話 恐怖の学校
翌日。俺は怖い気持ちを持ちながら、学校に向かった。
……学校に行くのが怖い。
この場に、一葉がいればいいのに……
だけど、それはないものねだりだという事を、俺はよく知っている。
むしろ本当に一葉が転校して来たらどうしようか、なんて思ってる。
実際に俺の隣の席は空いている。クラスメイトが一人転校したからだ。
一葉が転校してきたならば……俺は嬉しいのだろうか。
……いや、嬉しい事には間違いないだろう。
だけど、そんな俺のためだけのためには転校して欲しくない。
一葉には一葉の人生がある。一葉の人生は俺のための物ではないのだから。
――っ
周りからの視線が痛い。
あれから数日たっても、相変わらず俺の事を簒奪者なんて思ってるんだろう。
女子はともかく、男子の視線もまた、痛い。
……当たり前か。
理子は男子からも人気だった。理子の彼氏である俺を羨ましがる人もいたのだ。
あいつらからしたら、俺が理子という彼女を有しながら、浮気をしたクズ野郎だという見方だろう。
事実ではないから、文句を言ってやりたいところだ。
……だけど、それは不可能だ。
俺は周りを見ずに、そっと下を向きながら、歩いていく。
……一葉
……やっぱり無理かもしれねえ。
俺には……無理なのかもしれねえ。
……情けないが、学校に向かうのは無理かもしれない。途端に足が動かなくなるのを感じた。
足が震えている。
無理だ。学校には行けない。
俺にはどうしても無理なのだろうか。
だけど、今更家に帰るというのも情けない話だ。
逃げたと思われる。
一葉に弱い姿は見たくない。
くそっ、仕方ねえ。
俺は震える足を抑え、頑張って学校に向かっていく。
学校につくと、俺は席に着いた。
その中で、俺は恐怖に震えながら、授業開始を待つ。
ああ、周りを意識してしまったらいけない。
ただただ、ただただ無心になるのだ。
……視界の端に理子の姿が見え、気分が悪くなった。
そして、気分を悪くさせられる俺自身が嫌になる。
理子に負けた気がして、悔しい。本音では、平然となんですか?みたいな感じで堂々としていたい。
だけど、どうしても、イライラが募り、ストレスがたまる。
俺はストレスを自身の肌に爪を食い込ませて、なんとか耐え忍ぶ。
痛いけれど、いい感じにストレスが吹き飛んでいるという感じがした。
そして、俺はそっとスマホを開く。
そこには、俺と一葉の再会記念のツーショット写真がある。昨日理子との写真から一葉との写真に入れ替えたのだ。カフェでの一枚。
これを見るだけで、非常に嬉しくなる。
こう言ってしまえば、変態みたくなってしまうが、一葉の顔を見ると、ひとりじゃないと知って、少しだけ安心するんだ。
本当に俺は一葉に助けられ続けている。
「何見てんのよ」
その声に俺は咄嗟にスマホの電源を切った。
そこにいたのは、理子だった。
一瞬心臓がバクバクとする。
……怖い。
……震えが止まらない。
一瞬にらまれただけで、こんなことになるなんて、俺自身が恥ずかしく感じる。
結局俺は弱いままでなにも変われていない。
俺には何の変化も生じていない。
一葉から、バフを貰ったはずなのに、その効力は一睨みだけで消えてしまった。
あとに残るのは只の恐怖だ。そう、今日何が起こるんだろうか、理子に何をされるのだろうかという恐怖だけだ。
心臓がバクバクと鳴る。早く、授業が始まってくれという気持ちでいっぱいだ。
そして、ホームルームが開始された、と同時に俺は安堵の感情を覚えた。
これで一先ずは理子の絡みを避けられる。そう思い、一旦安堵の息を漏らした。
—―だが、その時にはまだ、これから先、自身に何が起こるのかを理解していなかった。
今日はもう一話更新する予定です




