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失恋し、裏切られた俺の家に、転校してきた幼馴染が毎日ゲームをしにやって来るようになった  作者: 有原優


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第四話 昔話

 

「はあ、疲れた」


 俺は大の字で床に寝転がる。

 すっかりと疲れた。


 そして一葉はしれっと俺のベッドで寝転がっている。

 本来なら俺がそこに寝転がりたかったのだが……


「そこは俺のベッドだぞ」

「別にいいじゃん」唇を尖らせた。「久しぶりの恭介君の家なんだもん」


「そんな特別じゃないだろ」

「子どもの時にはずっといた部屋だから特別だよ」

「ずっとではないだろ」


 とは言っても俺と一葉はすっかりと常に一緒にいたのだ。

 家でもずっと遊んでいた。週二くらい一葉はこの家に来ていた。

 そう考えれば一葉が感慨深い気持ちでいるのも分からなくもないだろうか。


「こっちおいで」


 そして、一葉は枕をポンポンと叩く。


「誰が行くか」

「ふふ、調子出て来たね」


 そう言って一葉は布団を抱きしめる。

 それこそ、愛情をもってぬいぐるみを抱きしめるかのように。


 ああ、くそ。


 こいつ。自分が女であるという事を理解してないだろ。

 今も俺がドキドキしているという事を分かっていないんだ。


 いや、分かっててわざと俺をいじっているのかもしれない。

 さっき肩が当たってたのだって、わざとやってるのかもしれない。


 制服姿でぺたんとベッドに座る一葉を見ると……何となく心臓が跳ねる。


 結局……わざとなのか、わざとじゃないのか。……その答えは俺には分からないけれど。

 どちらにしても俺の気を紛らわそうとしてくれているという事は、紛れもない事実なのかなと、思う。


 そして、少し休憩を取った後、俺たちは出かける事にした。


 その先はというと、近所のカフェだ。


「ファミレスの次はカフェかよ」

「いいじゃん」一葉は足をバタバタとさせる。「昔話をするには、ここしかないと思うんだよね」

「ほかにもあるでしょ」

「ここがいいの」


 そして、一葉は店員さんにケーキセットを注文した。


「私はね……K女学院に進学したの」

「K女学院?」


 まさかの女子高に進学していたのか。



「中高一貫校で、進学校なんだって」

「へえ」

「そこで、今は楽しくやってた、はず」

「……はず?」


 はずってなんだ。そこは確信するべきところだと思うけれど。


「でもね、恭介君にずーと会いたかったんだあ」

「そんなに?」

「うん」


 頷いた。


「でもさ、恭介君が彼女を作ったなんて聞いたから、気軽に話かけたらいけないかなって」

「うん。まあ、うん」

「でも、別れたって聞いて、しかも恭介君が辛そうって聞いて、チャンスだと思って」

「チャンスって何の?」

「仲直りするチャンス」


 仲直り。……仲直り!?


「俺たち喧嘩してたっけ」


 記憶がない。


「してたよ。覚えてないの?」

「残念ながら覚えてはないな」

「そっか。ならいいの」


 いいの、なんて言われたら気になってしまうところ。

 男子の子供の頃の記憶というのは儚い物なのだ。


 だけど、それを今話題に出すのも違うと思い、一旦その話は置いといた。


「友達はいるの?」

「いるよ。でも、仲の良さはまあまあかな。一緒に学外で遊ぶこともあるけどね」

「そっか」

「そっちは今友達いるの?」


 友達か。そう呼べる人間もいないし、いたとしてもあの噂の流布で消えてしまった。


「っ」


 俺は、上唇を噛む。それを見てか、


「ごめん。聞いちゃいけなかったね」

「いいんだ」


 俺は言った。良くはない。良くはないけれど、今気を使われたくはなかった。

 ……なんとなくそれは、恥のように思えたから。


「だから大丈夫だよ」


 そう、俺は言ったのだった。


「そう」


 とは言ったものの、その言葉もまた俺に気を使っている、と言えるような感じだった。


 この空気はまずい。こんな空気感の中で居たくない。


 そう感じ、


「さてと、……楽しいお話をしよう」


 俺は言った。


「会えなかった時期の楽しかった思い出を三つ、語ろう」

 俺は元気よく言った。


 その言葉に、「三つかあ」と、一葉が指を一つ折り曲げる。そして時間差で二つ目の指も折り曲げた。

 必死に考えてくれているのだろう。


「じゃあ、決めた。……恭介君は?」


 目を輝かせながら聞いてくる一葉。しかし、俺はまだ三つには絞り切れていなかった。


「……ちょっと待ってくれ」


 と言って俺は考え始める。

 どのエピソードがいいのだろうか……


 軽く思案し一つ決めた。



「俺から話していいか?」

「うん、どうぞ」


 そう言われ俺は小さくうなずいた。

 三つも話せない。だけど、これは話したい。


「これは、中学の話なんだが――」


 俺は話し始めた。

 一瞬笑い話として、理子との思い出を話そうかと思った。

 だけど、それはやめた。俺の心が持つとは到底思えなかったのだ。それに、易々と笑い話にしたくなかった。



 俺が話したのは、中学二年の時の文化祭の時だ。

 理子の事を思い出さないように、

 理子の存在は封印して話した。


 中学の文化祭で俺たちのクラスでは、展示物の発表をすることとなった。本当なら幽霊屋敷等の遊び系の展示をしたかったが、内容は古墳の内容をまとめたいたって真面目な内容の展示だ。

 だけど、その中で俺はとにかく頑張って展示のために必死に働いた。


 その中で、必死に努力して出した展示は素晴らしい物になったという思い出だ。



「……いい話」


 一葉はそう、一言言った。勿論これがすべてではない。あえて触れなかった部分もある。だけど、概要としては何も間違ってはいないだろう。


「俺に話せるのはこれだけだ。そうじゃないと……嫌な事を思い出してしまう」

「うん……大丈夫だよ。じゃあ、次私が行くね」

「おう」


 そして、一葉の話が開始されていく。



「私は中学高校と女子校なのは言ったよね」

「うん」


 俺は頷いた。


「私最初は心細かったの。だって……恭介君がいないんだもん。だけどね、私は頑張って、交友関係を広めたの。だけど、私ってさ、知ってると……思うけど」

「ああ、人見知りだったよな」


 一葉は昔からずっと人と関わるのを恐れてた。

 不安で不安で不安そうだった。


 それこそ、人と会うのがいやすぎて、俺の後ろにずっと隠れていた。


「……だから、最初は苦労したんだよね。でも、恭介君に誇れる自分で居ようと思って。だから、頑張って人と話しかけたの。そしたら簡単な話だった。私って、恭介君に頼ってばかりだったから、自分を必要以上に卑下してたみたい。だから、努力したらすぐに話せるようになったし、コミュニケーションも撮れるようになった。それで……今、友達が沢山いるの」

「そうか」

「あ、悲しそうな顔しないで、恭介君がわたしの一番だから」

「……四年間会ってなくても?」

「うん」



 一葉はにっこりと笑った。

 だけど、その表情には少し悲哀が込められているように思えたのは俺の気のせいなのだろうか。


 それからも軽く話をこなし、お開きにすることとなった。




「じゃあ、明日は学校に行ってね」

「……ああ、頑張るよ」

「もし無理なら、私が転校してくるし」

「何、言ってるんだよ」


 それは流石に冗談だよな。




「まあ、本当に転校してもいいんだけどね。……寂しいから」

「そう言ってくれて嬉しいよ」


 そして、二人して笑った。

 そして、一葉といざ、さよならになった時は、少し寂しかった。


 その様子を一葉が察したのか、


「週明けもまた、会おうね」


 と言ってくれた。その言葉に、俺は少し安心感を覚えたのだった。

明日以降は暫く毎日一話投稿を続けようと思います。


ここまで読んで面白いと思ってくださったらブックマークや星を入れてくれると嬉しいです。

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