第58話 告白(?)
俺の部屋にお風呂から上がってきたであろう二人が入ってきた。
鏡花、こちらに関しては見慣れているから何も問題はない。
だが、一葉のパジャマ姿は刺激が強いな、と感じた。
一葉の姿を見て思ったことはまず可愛いと言う事だった。
そのパジャマは、高校生が斬る物にしては多少子供じみた格好だ。
だけど、それが可愛らしいと思う。一葉は美人だ。だけど、同時に可愛らしい。
そう、言うならば大人の美しさと子どものかわいらしさが両立しているのだ。
そんな一葉がこんな可愛らしいパジャマを着ているのだ。可愛いに決まってんだろ。
しかもあれ、胸元が開いていて、彼女の胸が軽く出ている。
エロさも同時に出ている。
しかも短パンから、太腿が出ている。
っ、それは欲情を招く。
やべえ、少し抑えきれねえ。
「な、なあ、一葉」
「なに?」
「可愛い」
俺がそう一言言うと、
「ありがと」
一葉が顔を背けた。
恐らく照れているのだろう。
それを見て、照れを与えられたという高揚感を感じた。
そして、俺はお風呂に入っていく。
★
SIDE一葉
「ねえねえ、一葉ちゃん」
「なに?」
「一つ聞いてもいい?」
「うん」
「お兄ちゃんの事、どう思ってるの?」
その言葉にわたしは驚いた。今それを聞かれるなんて思ってもいなかったのだ。
「何が……言いたいの?」
「そんな複雑な話じゃなくて、お兄ちゃんの事を異性としてどう思ってるの?」
正直その言葉はいつかは来るとは思っていた。思ってはいた、けれど。
でも勝手に来ないだろうと高をくくっていたのだ。それこそ鏡花ちゃんからは。
「妹の鏡花ちゃんがそんなこと言ってもいいの?」
「うん。一葉ちゃん相手なら」
『一葉ちゃんなら』か。
なんて、返すべきなんだろう。誰か模範解答を答えを教えて欲しい。
そう思ってると、鏡花ちゃんがまた口を開いた。
「理子、あの女はあたしから見て苦手だった。軽薄そうだったし、ああなる事もなんとなく予測で来てたんだ。でも、一葉ちゃんは違うでしょ?」
その言葉にわたしは静かに頷いた。
「勿論」
わたしは頷いた。
「恭介君を裏切る気はないよ」
その時が来るわけが無い。そんな日が来てしまったら私は私の事が嫌いになってしまう。
「じゃあ、好きってこと?」
「言っちゃっていいの?」
「うん」
鏡花ちゃんは頷く。
「じゃあいうね」
鏡花ちゃんはもう一度頷いた。
それを見て、
「私は——」
そして、自身の気持ちをはっきりと告げたのだった。
★
「気持ちよかった」
俺はぼそっとそう呟き、お風呂から上がっていく。
一葉は鏡花と、鏡花は一葉と、入ったが俺は残念ながら男だから一人ではいるしかなかった。
つまり、いつもと一緒だ。
そして、
部屋に入ると同時に、
「私は恭介君の事がっ!!」
そう叫ばんとする声が聴こえてくる。
その声に、俺は、軽く瞬きをする。
その彼女の声は、恥ずかしさを押しころそうとするような声だった。
しまったな。このタイミングに入ってくるべきじゃなかったかもしれない。
一葉が俺の方を見て、口をパクパクとさせている。その様子を見ると明らかに動揺しているように見えた。
ああ、くそ。如何すっかな、この状況。
「一葉、俺が何だって?」
ここはあえて、堂々と訊くことにした。
「何もないから、馬鹿!!」
馬鹿、馬鹿?
「ここは、女子会だから男子は出て行って」
恥ずかし気に言い放つ一葉。
俺は「すまん」と言って部屋から出て行った。
くそっ、なぜ俺の部屋を追い出されなきゃならない。
くそっ、訳が分かんねえ。
俺に理解できる範疇を超えている。
俺は、部屋の前でただ、佇んだ。
部屋に再び入る勇気はなく、俺はリビングへと向かった。
★
「危なかったあ」
私は息を吐いた。
あと少しで、恥をかく所だった。
「お兄ちゃんに対して酷くない?」
鏡花ちゃんが言う。確かに酷いと思う。
「まるで昭和の暴力ヒロインみたいだったよ」
「暴力ヒロインって……」
「だってビンタしそうな勢いだったんだもん」
「そんなにだったかな」
そして、私はベッドから降りて、床に三角座りする。
「せっかく愛でてもらおうと思ってたのに」
こんな喧嘩みたいになってしまうなんて。
確かにわたしが悪いよ。悪いけど……
「どうしよう……」
わたしはわたしが怖い。ごまかすためとはいえ、こんなひどい言葉を投げつけるだなんて。
嫌われたらどうしよう。
「あたしがお兄ちゃんを慰めてあげようか」
「ううん」鏡花ちゃんの申し出は確かにありがたい。だけど、
「わたしが行く」
ここで、鏡花ちゃんに頼り過ぎるのは、良くないと思う。
私が直接彼に謝らないといけないのだ。
「私が謝ってくる」
ここで、鏡花ちゃんに頼ったらいけない。
わたしは責任から逃げたくない。
★
リビングで、テレビを前に俺はため息をつく。テレビ画面には今絶賛アニメが映っている。
それを見て、俺はまたため息をつく。
俺は一葉に部屋を追い出されたことに対して怒っている訳ではない。ただ、気になるポイントがある。
一葉のあの表情、そしてあの時言おうしていた事。
それを考えると、一葉はあの時、
それが俺の思い上がりとかでは無かったら、俺の事が好きだ、と言う事じゃないのか?
分からんが、
可能性は十分にあるんじゃないのか?
いやただ、思い返すと、それがただの俺の勘違いの可能性もあるし。くそ、分かんねえ。
その時リビングに入ってくるその人影が何か即座に理解が出来た。これは明らかに。
一葉だった。
俺が振り向くと、彼女は気まずそうな雰囲気を見せた。
これは……
「ごめん」
そして彼女は俺を見て、
謝った。頭を深く下げて謝った。
一葉が謝る所は初めて見た。
今までずっと一葉と一緒に居たが、一葉がこんな姿勢を正して謝罪したところは見たことが無かった。それこそ、再会後は特にだ。
「一葉……」
俺は呟く、と。
「ごめん。さっきはどうかしてた」
「なあ、一葉」
そして、俺はもう一度口を開き、
「一葉のさっきの言葉、どういう意味だったんだ?」
俺は訊いた。こればかりは聞かせて欲しあった。
あの言葉はどういう意図だったのか。
それが、気になる所なのだ。
一葉が俺の事が好き、
その妄想に近い予想が本当に正しいのかどうか。
それがかなり気になっている所だ。
「何でもないの」
「何でもない事はねえだろ」
流石に何かあるはずだ。
それを俺に言いたくないという事はやはりそう言う事なのだろうか、
「私は……」
彼女はぼそっと口を開いた。
「恭介君の事を友達として信頼してる、って言っただけ」
「一瞬好きって聞こえた気がしたが」
これは、ブラフだ。
実際には『私は恭介君の事が—―』、までしか聞こえてはいなかった。だけど、
もし、好きと言おうとしてたのなら
「言ってないし、何か聞き間違えたんじゃないの?」
逆に一葉は冷静と取り戻し、そう言った。あれは聞き間違いだったのか。俺は納得を師、
「それならいいんだ」
そう言った。
そうだ、俺がただ聞き間違えた。それ以上でもそれ以下でもないのだろう。
「分かった。俺が勘違いしてただけだったな」
俺は言って、息を静かに吐いた。




