第五十一話 一葉の来園
SIDE一葉
「ずるい……」
私は呟いた。
恭介君とデートするなんて本当にズルい。
仕方ないとは分かってるけど、遊園地デートなんて彼女彼氏で行くやつじゃん。
結局私は遊園地に来てしまった。合理的な判断をするなら絶対に行かないべきなのに。
私はついぞ嫉妬してしまった。
恭介君と田淵さんが2人でいるのが我慢ならないのだ。
これなら私も恭介君弱みを握ればいいのかな、なんて悪い考えが私に思い浮かんだ。恭介君は交換条件で田淵さんとデートしているのだから。
だけど、私が恭介くんをいじめるわけにはいけない。苦しめる必要はない。
と、私は首を振った。
そして、私の隣には私同様に頬を膨らませてる人がいる。そう、鏡花ちゃんだ。
「あたしも……お兄ちゃんと一緒に乗りたいのに……」
気持ちは同じ思いだ。
恭介くんはまた今度一緒に乗ろう、とは言ってくれた。
だけど、その一言で納得しきることはできない。
「鏡花ちゃん」
「うん」
「恭介君に負けないくらい楽しもう」
その言葉に鏡花ちゃんも頷いた。
元々ここに来たのは恭介君だけがデートを楽しむのが頑張らないからということがあった。
だけど、一人で行くのは寂しいし、惨めだ。だから女同士だけど、鏡花ちゃんを誘った。
鏡花ちゃんは、理由は分からないけど、傷心だったみたいで、
「ストレス解消したい」
ということで一緒に行くことを承諾してくれた。
今日、目的には田淵さんが変な行動をしないように監視するためという意味合いもあるけど、でも本音は私の為だ。
「早速ジェットコースター乗ろ」
鏡花ちゃんが言った。
さっき恭介君たちが乗っていたのを見た。
恭介君の姿は遠目からしか見れなかったけど、かなり絶叫してた。
大変そうだった。
逆にわたしはジェットコースターとかは楽しいと思ってる。あまり乗ったことはないけど、記憶上では楽しかったはずだ。
「そう言えば私たち一緒に乗ったことあったよね」
そう、鏡花ちゃんに言うと、
「うん。乗ったね」
そう、鏡花ちゃんが言う。
「あの時お兄ちゃんが絶叫してたの覚えてるよ」
「私も覚えてる。恭介君絶望してたもんね」
「あたしたち二人に振り回されてたもんね」
待ち時間の間2人でそんな会話をする。
恭介君は今日も叫んでいた。たぶん今日も女子に振り回されることになるんだろうな……
でも、私が恭介君を振り回したかったな、なんて思っちゃう。
そして、ジェットコースターの順番が来て、私たちは乗り込んでいく。
楽しみだ。スリリングな体験が出来るだろうと、思う。
楽しいこと間違いなしだ。
早速私たちの乗ったジェットコースターは発車していって、
左右上下に揺れまくる。私たちはその遠心力と風と、速度の圧の楽しさに思わず笑うのだった。
★
「ジェットコースターよりもしんどかった……」
俺は呟いた。
「お疲れさまです」
ドリンクを俺に手渡す桐花ちゃん。
「ありがとう」
俺はそう言って頷いた。
「俺は弱いな」
「弱くはありません。私が強いだけです!」
桐花ちゃんは胸を張りながら言った。
「そうだな。俺が普通なだけなんだ」
俺の知ってる女子たちは皆絶叫マシンと言われる乗り物が得意だった。
だから、おかしく感じるものだ。それこそ、俺が、俺だけが異質なように思えて仕方がない。
だけど、普通は楽しく乗れる人が多数派ではない。それが普通なはずで、
俺はおかしくないはずだ。
「よし、落ち着いた。次はどれ乗る?」
「もういいんですか?」
「当たり前だろ」
俺は笑った。
「俺は、強いんだ」
俺がそう言って笑うと、
「強がらなくてもいいのに……」
なんて、桐花ちゃんがつぶやくのが聞こえた。
強がってるつもりはない。体力はだいぶ回復したとは思ってる。勿論全快までは行かないが、八割は回復しているだろう。
スマホの充電と理屈は同じだ。8割回復したら良いだろう。
何しろ、八割から全快までの回復は時間がかかるのだ。
それに、せっかく遊園地に来ているんだ。
時間も勿体ないしな。
そして、俺たちは次のアトラクションにも乗っていく。
そこでも大変な地獄な思いをしていく。
絶叫が過ぎる。
だけど、段々と慣れてくるのを感じた。
これならば、終わりまで耐えられるかもしれないとも、感じた。
それは良い事だと思う。何しろ、せっかく情報が手に入ってもその前に俺がダウンしては意味がないのだ。
しかし、気になる事がある。
度々、一葉のような姿が目に見えるのは。そして、その隣には鏡花がいる。
これ、どう考えてもまずいだろ、と思う。
しかも、何で鏡花も一緒に居るんだよ。鏡花はせめて一葉を止めてくれよ。
全くもって意味が分からない。
非常に問題なのは、もし、一葉たちの姿が桐花ちゃんに見られでもしたら、
証拠となる動画は桐花ちゃんからもらえないかもしれない。
普段頭脳等となっている一葉がここでまさかこんなことをするなんて、
信じられない行為だ。
くそっ、
俺は一葉の事を無視することにした。何しろ向こうを見てしまえば、俺の視線を追って桐花ちゃんもそちらを見るのかもしれない。そしたら、即ばれる事となってしまう。
だから、仕方がない。俺は無視を決め込むことにした。
それこそ、向こうを全く見ない事を心に決めながら。
「そろそろ休憩にする?」
俺は桐花ちゃんにそう淘汰。
何しろそろそろころあいなのだ。何しろ、
俺の体力はかなり疲労してるし、お腹もすいてきた。
「そうですね、食べましょう」
そう、笑って彼女は言った。正直その言葉に安心をした。
安心した。何しろ近くに一葉たちの姿が見えた。彼女たちと遭遇してしまえば非常に問題な事になっていたのだ。
いやいや、なんで一葉と会わせないように気を使わないといけないのか、よくわからん。
一葉にはいつも助けられてるけど、今回ばかりは余計な事をしたな、という話だ。




