第50話 遊園地
そして、その日。遊園地の日がやってきた。
一葉には申し訳ないと思う。
一葉も来たかっただろうに、
実際一葉は最後の最後まで行きたそうにしていた。だけど、俺がそれを制したのだ。
一葉が遊園地に来てしまえば、桐花ちゃんとのデートをするという約束に対し嘘をつくことになる。
これは交換条件だ。
このデートを成し遂げれば、俺はついに証拠となる動画を手に入れる事が出来る。
俺は、待ち合わせ場所につき、ほっと一息をつく。待ち合わせ時間まではあと15分ある。まだ、桐花ちゃんは来ていないようで、
俺はスマホをいじって待つことに決めた。
そして、10分後に桐花ちゃんがやってきた。
桐花ちゃんはおしゃれな格好をしている。
彼女の小動物的な童顔が際立っているように感じた。
「可愛らしいな」
俺が言うと、
「実はおしゃれしてきました。そう言ってくれて嬉しいです」
そう、にこやかな笑みを浮かべている。俺はすぐに可愛いと感じた。
俺はこの笑顔に弱い。
だけど、油断は出来ないと、身を引き締めるのだった。
「じゃあ行こうか」
俺が言うと、彼女は静かにうなずき、俺はその背中を追いかけていく。
桐花ちゃんは明らかに元気いっぱいだ。
それだけ今日を楽しみにしていたという事だろう。
「早速これ乗りましょう」
そう、桐花ちゃんが言った。
そこにあったのはジェットコースターだった。
そう言えば理子と桐花ちゃんと三人で遊園地に行ったことがある。
その時桐花ちゃんは常に元気いっぱいで沢山のアトラクションに乗っていた。
今
日も同じだ。楽しそうに、指さしている。
そして、今思い出した。
彼女は絶叫系と言われるものが得意なのだ。
「じゃあ、早速乗るか」
俺が笑いかけると、彼女は「はいっ!!」と、元気よく言い放った。
こんなことを言うのは何だが、俺は絶叫系という物がそこまで得意ではない。
それこそ乗れない、というほどではないが、その絶叫に俺は正直耐えきれないのだ。
「早速かあ」
俺は呟いた。
「何か言いました?」
「いんや、何も」
しまった、俺の心の声が漏れていたか。
正直緊張する。
これに乗るという事は、かなり勇気のいる行動だ。
だけど、今日は桐花ちゃんを楽しませなければならない。
そうでないと証拠品は手に入らないからな。
俺はそう思い、ジェットコースターに乗り始めた。
車体はどんどんと前へ進み、最初の坂を上がっていく。その中で、
「恭介君楽しみですね」
楽しそうに彼女は言った。
俺はその言葉に頷いた。だけど俺は今楽しみな気持ちよりも、不安な気持ちのほうが大きい。俺は一体ここからの怒涛の絶叫に耐えられるのだろうか。
正直耐えられる気がしないと、感じてしまう。だけど、がん㋐bる鹿内
俺は拳を強く握った。
そして、次の瞬間————
物凄い速度で、それは発車された。物凄い速度で坂を下っていく。
風が強い勢いで俺の顔に飛んでくる。
やっぱり慣れねえもんだな、と思う。
耐えられないほどじゃないし、楽しいが、身体が車体から振り下ろされそうな——実際にはベルトのおかげで振り下ろされることはないが——感覚が常にして、さらに方向感覚を狂わせてくる。
ほとんど真横に体を追いやられた時には、死ぬかと思うくらい怖い。
だけど、速度が速く、同時にワクワクする気持ちがある。
車に乗ってる時も、自動車で100キロの速度で走るほうが、60キロほどの速度で走っていくのと、では楽しさが違う。
基本的には楽しさが車体の速度に比例して上がってくるものだ。
そして————
長い長い旅が終わりを告げた。
「疲れた」
俺は息を垂らしながら、ベンチに座る。
「楽しくなかったんですか?」
「楽しかったよ。でも、相変わらず、吐きそうになる」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だ」
「なら、あれに乗ってしまいましょう」
そこにあったのはまた、絶叫マシンだった。
今度は徐々に上へと上がっていき、ある程度の高さまで来た途端、一気に下に降りて登ってを繰り返していく。
これは、ジェットコースターみたいな横への揺れはないが、逆に縦への落差が大きい。当たり前だ。斜めに落ちるのではない。下に落ちるのだ。
これはジェットコースターとは比べものにならないのだ。
「もうちょっと休憩してからな」
「仕方ないですね。待ちます」
「おう、ぜひそうしてくれ」
流石に連続は耐えきれない。休息許可が出たことに安心して俺はゆっくりと深呼吸をしていく。




