第三十九話 パーティゲーム
「一葉、すまない」
俺は戻るや否や謝罪をした。
一葉は俺の顔をじっと見て、
「小声でお願い」
そう、一葉に言われた。
小声、周りに聞かせてはいけないという事だろうか。
俺はそれに頷き、ラインを開く。
『会話を録音して、すまん、言質を取ろうと思ったけど、失敗した』
『だろうと思った』
『ごめん、早まったかな』
『かもしれないね。だけど、その音声は後で聞かせて。如何いうふうに恭介君を翻弄したのか知りたいから』
『翻弄されたのは確定なんだな』
『違うの?』
『見事にしてやられました』
俺は理子の元に無策で行ったわけじゃない。というのも、録音があるのだ。
敢えて、理子を怒らせ、証拠を引き抜こうとした。
だけど、失敗した。これで、理子を怒らせれば、見事に証拠として成立するのではないのだろうか、と思った。だけど、あくまでも理子は被害者を演じ続けてきた。
これを提出したら、俺が悪になってしまう。
「後で聞かせて」
「ん、いいよ」
俺は頷いた。
——最終的なゴールは理子を警察に突き出す事でも、退学させることでもない。
勿論それも出来るならしたい所だ。だけど、目指すべきところは、理子の立場を失墜させることだ。
そうすれば、理子の俺に対する言説も力を失い、俺の無実が証明されるだろう。だけど、残念ながらそれは叶わなかった。
理子が思ったよりも狡猾だったのだ。
理子はもう少し馬鹿だと思っていた。だけど、その予想が見事に外れてしまったのだ。
そして、カバンを持ち、二人で学校を出た。
次は赤松を追求するべきだろうか。だけど、今はそれをしたくはなかった。
それに恐らく、理子から警戒しろとの言葉が出ているだろう。
二度も同じ失敗をすることは、絶対に避けたかったのだ。
そのまま歩いていく中、カラオケから出た、竹下さんの姿が見えた。
カラオケに行っていたのか、と思った。
学校をさぼり、カラオケに行くとは中々の不良だ。
「一葉どうす—―?」
「無視しよ」
一葉はすぐにそう返した。どうやらあの出来事は相当一葉に傷を与えていたらしい。
一葉見るからにショックを受けていたんだな。
しかし、あの竹下さんの様子は気になる所だ。
だけど、今はそこは考えなくてもいい事だろう。
「分かった」
そして、俺は家に帰る。勿論一葉も一緒だ。
今日は作戦会議のようなものはせずにただ二人でゲームをしていった。思えば昨日の夜、一緒にゲームをしていない。
今日の朝一緒にアニメを見ただけだ。
今日はいつものカートレースではなく、パーティすごろくゲームを選んだ。
これは、すごろくなのだが、その中でさまざまなミニゲームがあり、それにより順位が左右される。その結果でもらえるお金が変わるのだ。そして、先着順報酬でお金ももらえる。
そして、勝利条件は、最もお金を稼いだものという者だ。
「恭介くんよりもお金を稼ぐから」
「負けないぞ」
そして、今日はもう一人、
「あたしも負けないよ」
鏡花もいる。
こういうパーティ系ゲームは人数がより多い方が楽しいだろうからだ。
今日は部活動を早々に切り上げて家に帰ってきたらしい。
俺が誘うと、「あたしもやりたい!!」と、すぐに乗っかかった。
「それにしても今日の練習行かなくて大丈夫だったの?」
俺が訊くと、
「うん。あたし実力あるから」
実力あるから多少サボっても許されるという事か。
実力主義ならではの考え方だな、と思った。
そして、俺たちは一緒にゲームを繰り返していく。
正直に言って、鏡花がいるだけでだいぶ違うと感じた。
勿論、二人で遊ぶのも楽しい行為だ。
だけど、いつもと違うのは、鏡花がいるという事だ。
鏡花にはそこまでゲームが好きだというイメージ自体はない。
だけど、今日鏡花は楽しそうにしている。
俺と一葉の色に鏡花の色が交じり合えば、更に楽しくなること必須なのだ。
俺たちはミニゲームの度に歓喜、または嘆きの声を出していく。
互いに感情を出し合って、大いに盛り上がったのだ。
――
――
――
「お兄ちゃん、強い」
鏡花が息をたらしながら、不満げに言った。
その様子はまさに疲れているという感じだ。
「でも、一葉が一番だろ」
一位は残念ながら俺じゃない。鏡花の言う通り、俺は鏡花をボコったが、その分俺もボコられているのだ。
「うん」鏡花が力なく頷く。
そして、一葉が楽しそうに。
「二人共! 今日は私が王様だからね」
「なんだそれは」
「えっへん」
「えっへんじゃねえよ」
俺がそう言うと一葉は笑って答えた。
「ねえ、それでさ」
鏡花が口を開く。
「結局上手く行ってんの?」
「行ってないかな」
その一葉の言葉に俺も頷いた。
恐らく昨日の朝に話した作戦の事だろう。
「あいつにしてやられた」
今日俺は完全敗北を決した。情けない事だ。
「確実的な証拠が必要なんだよな」
とはいえ、それが難しいんだけどな。
「うーん。難しいのかあ」
鏡花は軽く腕を組みながらため息をついた。
「あたしはお兄ちゃんを傷つけるようなやつ許せないんだからね」
「ありがとう」
俺が鏡花の頭を優しく撫でると、鏡花は嬉しそうに微笑んだ。
「それは地道にだね。まあ、恭介君が証拠のあれを迅速に出してくれてたらこんな面倒な事にはなってなかったかもしれないけどね」
「うるせえ」
それを突かれては非常に困る。
俺は、苦し紛れにそう言う事しかできなかった。
「まあ、ゲームで負けたもんね恭介君」
「うるせえよ」
一葉が今日はうざい。
「もしさ、あたしに出来る事が会ったら何でも言ってね」
おずおずという鏡花。その言葉に俺は「おう」と返すのだった。
そして、そのまま一緒にゲームをし、夕食前に解散という事になった。
だけど、その前に軽いお願いがあった。
「一葉、もう少し時間良いか?」
そう、俺は問うた。
「なに?」
「今日はもう一人あって欲しい人がいるんだ」




