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失恋し、裏切られた俺の家に、転校してきた幼馴染が毎日ゲームをしにやって来るようになった  作者: 有原優


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第38話 作戦

 そしてその後。



 一葉は一人不満足そうな顔をしていた。




「どうしたんだよ」

「だって強引に証拠として押収したらいいじゃん。なんで、返しちゃうのよ」


 なるほど、不満の種はそれか。


「いや、そんなことしたら変なことになるだろ」

「へえ、あの子がいいんだ」

「はあ?」

「彼女の方がわたしよりもいいんだ」

「どういう意味だよ」

「だって、田淵さんの事を傷つけたくないんでしょ?」

「なんで、そういう話になるんだよ」


 

 全く予想だにしていなかった状況だ。

 まさかそれで、一葉が不機嫌そうになるなんて。




「照れてたくせに」


 照れてたように見えていたのか。俺にはそんなつもりはなかった。

 もしや一葉は俺が一葉よりも桐花さんの方が大事だと感じていると、思っているのだろうか。

 どう言う事だよ、なんてツッコみたくなる所だ。

 だけど、実際にそんな事実は存在しない。事実無言だ。


「俺にとって一番大事なのは、一葉だけだよ」

「え、そう言ってくれるの? 嬉しい」

「急に元気になるなよ」


 情緒不安定か。というか、言っちゃあ悪いけど、一葉ちょろいな。



 そして、俺たちは教室に戻る。


 教室の中で、少し思索する。


 一葉の言い分も分かる。



 何しろ、解決させるには、それが一番なのだから。

 冷酷、人の情を無くせばそうなるのだけど、


 俺には、彼女をだます格好になる、それが嫌だったのだ。


 俺は少し息を吸う。




「一葉さっきはごめんな」


 俺は小さく頭を下げた。


「冷酷になれなかったから、俺は弱いんだろう。後から考えたらお前も正しい」

「許す」


 一葉は俺の背中を強く叩きながら言った。


「いてえよ」


 俺は小さく言った。



 そして授業が始まり、俺たちは授業を聞いていく。

 その中で、考え事を続ける。いま必要なのは、桐花さんに証拠品を貰う事だ。しかもそれは強制的な押収でなく、ちゃんと了承を得て、証拠品となる動画を貰わなくてはならないだろう。


 その為に必要なもの何なのだろうか。俺は授業中考え続けた。

 しかし、いい答えなど一向に出てくることなど無く、ただ淡々と体力が低下していくのみだった。


 そして放課後、


「じゃあ、恭介君、帰ろ」

 スクールカバンに荷物を入れる。


「一葉、少し待っててくれないか?」

「なんで?」

「必要なんだ」

「まさか田淵さんの所に……」

「大丈夫、行かねえよ」


 だけど、今から向かうのは、一葉にとってにはもっと嫌な所なのかもしれない。

 許してほしい。






「なぁ、理子」


 俺は理子のもとに行った。


「二人きりで話さないか?」


 その言葉に一葉が口をパクパクとさせる。驚くのも当然だろう。

 だけど、桐花はああ言っていた。それは、昔は楽しかったと言っていたと。


 俺の何が理子の気に触ったのか。そして今なぜここまで俺に突っかかってくるのか。

 その答えを明らかにしたい。


 そして、目的自体はもう一つある。

 



「いいよ」



 理子は二つ返事で答えた。

 もしかしたらこの行動は間違いなのかもしれない。だけど、ここで動かなければならない、という予感がある。


 勿論今更どんな理由があろうと、理子を許せるわけがない。

 既にクラス内での居場所は奪われてしまっているのだ。


 理子に対し、上手く情報を奪えるのかは、今の俺にはわからない。

 だけど、今彼女に立ち向かう意思を、今の俺はしっかりと持っている。

 


 そして、俺と理子は、そのまま外へと向かっていった。


 一葉もついて行こうとしたが、俺は制した。

 何しろ、一葉がいたら、理子の本音を聞き出すのに支障をきたしてしまうのだ。


 そして、周りに人のいない、屋上についた。


 そして、俺は早速言葉を切り出す。


「単刀直入に言う。赤松に動画を撮らせたのは、お前の意思なのか?」

「あたしの意思じゃないよ。でも、ありがたく受け取ってるけど」


 そう言ってニヤッとする。いやらしい笑顔だ。


「動画をお前の権限で消すことなんてできないのか」

「出来ないよ」


 理子は一言帰す。


「大丈夫。ネット上、SNSにはばらまかれていないみたいだから」

「そうかよ」


 一応ラインもSNSの一種だ。しかし、不特定多数が見られるような場所には公開していないという事なのだろう。


「なんで、消させないんだ」


「だって、消すのは怖いし。今も恭介と二人きりなの怖いんだよ」

「意味わかんね」


 まるで俺を加害者扱い。お前はそんなか弱い乙女じゃねえだろ。


「俺はお前に今まで手を出したことねえよな」

「手は出されてないけど、浮気はしたじゃん」


 してねえよ。捏造すんじゃねえ。


「浮気してねえし、そもそも俺への不満は手を出してこない事じゃなかったのか?」

「どうなんだろう。あたしは、それも嫌だったけど。でも浮気したことが一番いやだった」


 演じている。明らかにか弱い被害者を演じている。


「なあ、赤松に頼んで、あの動画を消させてくれないか? あんな動画が出回る事が嫌なんだ」

「いいよ。だって、あたしだって、元カレの動画が出回るのは嫌なんだし」


 そしてラインを打つ。


「これでいいでしょ」


 そう言った理子のスマホには『ねえ、赤松君。動画消してくれない? これはあたしの命令だから』


 やけに素直だ。

 だけど、そこで失言に気が付いた。


 動画を消させてしまっては、俺に彼女を糾弾出来る証拠が少なくなってしまう。

 だけど、もう遅かった。

 送られてしまった。


 しかも、グループラインへと。


 いや、まだ希望はある。

 理子はそれを消さないだろう。理子から直接押収すればいい。

 だけど、それは今じゃない。

 今奪おうと襲い掛かれば、俺は完全に加害者になってしまうのだから。




「もう一つ聞きたい。お前は俺の何が嫌だったんだ。最初は楽しかったって桐花から聞いた。だったら俺がお前を落胆させた原因があるという事だろ? 俺の何がいけなかったんだ」

「だって、浮気されたんだもん」


 彼女は目をウルウルとさせて言った。


「あたしショックだった」


 くそっ、これじゃあまともな証拠を集めることなどできない。

 諦めるしかないのか。


 他に証拠なんて集められないのだろうか。


「それで話は終わり、ですか?」

「ああ」


 このままではらちが明かない。




 そして、俺は席に戻る。



 ★



 甘いのよ。恭介。


 あたしは恭介が去った空間で高笑いをした。


 スマホの録音機能で、あたしの裏切りの証拠を得ようとしたことはすっかりと分かっている。


 だからあたしは、か弱い乙女を演じた。


 あくまでも被害者を演じた。そうすることで、録音されてもまともな声が入らない様に。

 甘いのよ。どうしてあの状況で録音されてないと思うんだろ。

 あたしは、あんたが思うよりも賢いのよね。



 あたしは静かに息を吐いた。


 なにが、落胆させたか。

 そんなもの、決まってるでしょ。

 落胆に理由なんかいらないのよ。


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