第22話 裏切り
そして月曜日になった。
クラス内の人間が俺に対して、くすくすと笑い声を立てていたのだ。
いつもの事だから慣れている。
だけど、今日はいつもよりも過激な感じがしたのだった。
それこそ、嫌悪の目というよりも、好奇の眼差しが多く、気持ち悪いように思う。
クスクス
クスクス
……嫌な感じだ。
俺は、どうしてなんだろうかと、思った。「なんか嫌な感じだね」隣の一葉が言った。
昨日は二人でゲーム三昧の日曜日だった。おかげで周回クエストを完全にクリアしたのだが。
「一葉、大丈夫だ」
俺は小さな声で言った。
――その瞬間だった。
爆音である音楽が流れた。
その音楽を、俺は知っていた。その曲を流した女子生徒はすぐに「やばっ」といってその曲を止めた。
だけど、もう遅かった。
その曲が何だったのかを俺は知っていたからだ。
俺は拳を強く握りしめた。
そして、
「どういう事なんだ、赤松君」
俺はすぐに彼に問いただした。
その曲は俺がカラオケで歌った曲だ。
その曲を撮る事が出来るのは、彼――赤松君しかいない。
いくら理子でも、他人のカラオケルーム内を録画できるほどの力は持っていない。
ただ一点、人を使うという手段以外では。
どう言う事だ。
味方になってくれたとばかり思っていたが、実際は敵だったのか。
「何言ってんだよ」
「俺の事を信じてくれたんじゃなかったのか」
「信じてるさ」
「信じてるさって何が?」
こんなことを出来たのは赤松君だけだ。
「俺の事を信用してくれ。俺は何もしていない」
何もしていない。
何もしていないわけがない。
「なら、スマホを見せてくれ。スマホに録画データが会ったらお前は黒だ」
「それは無理。個人データとかは言ってるからな。プライバシーの侵害だ」
「っこの期に及んで何を言っているんだ」
意味が分からない。
なら、冤罪だというのなら、その冤罪を晴らしてくれ。
無実の証拠を出してくれ。その影響で俺がなじられても、我慢するから。
俺が間違っててくれ。頼む!!
「宮田君最低!!」
という声が響く。
「友達じゃなかったの?」
「他人を疑うなんて」
「そもそも自分が悪いんでしょ?」
「責任を押し付けて、クズじゃん」
ああ、くそ。
まただよ。
反抗するほどに、俺に対する信用が下がる。
ただ、この示し合わせたような態度。
確実に黒だと言えよう。
こんな完璧なタイミング。
事前に示し合わせていたに決まっている。
「っ」俺は拳をギュッと握りしめた。
その瞬間、動き出していた人がいた。
一葉が赤松君の襟元を掴んでいた。
「最低!!」
一葉は開口一番、そう叫んだ。
「私は、恭介君を傷つける人を許せないの。あなたは恭介君を裏切って絶望に落とすために、近づいたのよね」
「ああ、そうだよ!」
認めやがった。
「俺は裏切ってないぜ、元からお前の事なんて、信用してないからな」
そして、一葉を強引に投げ飛ばす。ついに本性を現しやがった。
「銭湯の時のお前の裸体は既にグループチャットにばらまかれてるぜ。へたくそな歌もな」
その言葉に、俺は、歯を強く噛みしめる。
俺は教室から走り去った。
その際に先生とすれ違った。
「どうしたの?」
声をかけられたが、俺はその声を無視して、走り去った。
俺は一人ベンチに座る。
もうチャイムもなった。
もう授業が始まっているだろう。
だけど、もう戻る気にはなれなかった。
ああ、結局こうなるんだな。そう、俺が馬鹿すぎるが故だ。
……何なんだよ、俺っていう生物は。
ちょこちょこついて行って、一葉からも警戒を促されていたのに、一葉に確認を促すこともなく、ついて行ってしまった。
馬鹿だ
間抜けだ
くそ馬鹿だ。
本当に何しているんだよ。
一葉にも迷惑をかけた。
謝罪をしたいところだが、今はスマホもない。メールを送る事なんてできない。
俺はそっと目をつぶる。
俺はどうしたらいいんだよ。
くそっ。
「…………ごめんな……一葉……」
俺は小声で謝る。
だけど、誰の耳にも届いていないだろう。こんなのただの俺の自己満足でしかない。
「……気にしなくてもいいよ」
そんな声が聴こえた。俺がその方向に向き直すと、
そこには一葉がいた。
「一葉……」
「大丈夫、私は恭介君の味方だよ」
「味方か、そうか。そう言ってくれて嬉しいな」
俺は言った。
「それよりも授業は?」
「授業はいいよ。だって、恭介君のそばに居たかった問。恭介君のいない学校なんて、いる意味ないよ」
「そうか」
「これからどうする? あ、これ」
それは俺の財布とスマホだった。回収してきてくれたのか。
ありがたい。
「他は持ってこれなかったけど、これさえあれば、学校抜け出せるよね」
「ずる休みをする気なのか」
「当然。むしろずる休みしない手はないよ」
その言葉には非常に強さを感じた。
俺は「ありがとう」と、小さく告げ、一葉の手を借り、立ち上がった。




