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第11話 ゲームセンター


 その帰り道。

 今日も一葉と一緒に帰り道を歩いていく。



「で、今日も家に来るのか」


 俺がそう言うと、一葉はただ頷いた。


「そんなに俺の家が好きなのかよ」

「いいじゃん」と、にこやかに笑い、「恭介君の家がいいんだよ」


 俺にはそれがあまり良く分からなかった。

 勿論ゲームとかもあるけれど、学生なのだから、例えばマクドナルドとかに寄ったり、カフェ—―例えばスタバなどに寄ったりしたりとか、そう言う事がしたいのではないだろうか。


 俺の家にそれらに勝てる要素はそう多くないだろう。

 


「なあ」

「なに?」

「たまには、家以外の場所で遊ばないか?」


 そう、俺は提案した。


「カフェでもいいし、ハンバーガー食べに行ってもいいぞ」

「ええ、恭介君の家でいい?」

「だから、何でそうなんだよ」

「だって、恭介君の家がいいんだもん」

「理由は?」

「落ち着くから!!」


 あっけらかんに言い放った。

 その言葉には遠慮とか色々な思索なんて言うのは一切ないような感じだった、


「落ち着くって……」

「事実だから仕方ないじゃん」

「なんで落ち着くの」

「恭介君と一緒にゲームが出来るから!」


 嬉しいこと言うなと、感じた。


 じゃあ、


「今日はさ、これ行かないか?」


 そう、俺はマップアプリのとある一点を指し示した。


「そこならいいかも」


 そう、一葉は笑って見せた。






 


 結果俺たちが向かったのは近くのゲームセンターだ。ここならば一葉のお目にも合うのかと思ったのだ。

 なにしろ、俺も一葉もゲームが好きだ。

 そして、ゲームセンターにあるゲームは家にあるのとは少し違うのだ。


 例えば『太鼓の達人』これは、太鼓を使ったリズムゲームだ。また、クレーンゲームやメダルゲーム。これも家では出来ない。


 そしてそれらは、ここでしかできないものだ。


 そして何より、やってて面白い物となるに違いないのだ。


「確かに、久しぶりにここで遊ぶのもいいよね。……私負けないから」

「何を?」

「太鼓でも」


 カートに続いてという事だろう。


「望むところだ」


 そして、曲は某少年漫画のOP曲にした。

 少し前に日本中で大ブームを巻き起こしたことは、記憶に新しい。


 


 息を吸う。そして、太鼓のばちに力を込めて、一気に叩いていく。



 どんどん、ドンドン、音を鳴らしていく。

 ちなみにモードは二人共『鬼ムズ』だ。つまり最難だ。


 難しい。だけど、追いつける。


 なんとか手が追い付く。


 一葉も中々コンボを続けて言っている。だけど、それに負けるわけにはいかない。


 俺も太鼓をたたき続け、必死で食らいついていく。だけど、


「くそ」


 負けた。


 完敗だった。俺よりもはるかに、一葉は上手だった。テンポ間もすごく、良かった。悔しいのだ。


 「悔しい?」


 終わると一葉が俺に聞いてくる。


「ああ、悔しいよ」


 そう、俺が言うと、一葉は嬉しそうに笑った。

 その笑顔はまさに眩しい物だった。



「一葉ってさ」

「なに?」

「前からこんなに上手だったっけ」

「だからさ、練習したんだよ。また一緒にできるのか分からなかったけど、でも又恭介君と一緒に出来たからさ、練習した甲斐があったよ」

 にっこりと笑う。


「オレも嬉しいよ」


 そして次は、カートレースゲームだ。


 家にある者とは、ジャンルとしては似ているが、内容としては別物だ。

 

 何しろ、家庭用ゲームとしての物よりも難しいという噂なのだ。


 少しビビりながらゲームの前に座る。


「――次も」

「負けないんだろ?」

「え、よく分かったね」

「分かるよ。お前の事ならな。でも、俺は負けるつもりはない」

「そんなこと言って毎回負けてるくせに」


 にやにやとしながら一葉が言う。その言葉に対して、俺は「うるせえ」と返した。

 一葉はその言葉にくすくすと笑い、「楽しみにしてるよ」と言った。


 俺もこのまま負け続けてプライドを傷つけられていないわけではない。

 だけどやはり、思うところもあるのだ。



「負けん」


 俺は言って、そのままマシンに向き合う。

 そして、ハンドルを握る。重みがある。

 それこそ車の中でよく見るハンドルみたいな形だと感じた。


 車の物だ。なるほど、この濃密さが、生み出しているのか、と感じた。


 ハンドルが重く、いつも家でやるゲームみたいに上手くハンドルを操作が出来ない。

 っ、かなりきつい部分がある。だけど、負けるわけにはいかない。

 


 やるしかない。

 俺は必死でハンドルを握り操作していく。


 中々操作が難しい。

 ハンドルが重く、早めに回さなければカーブを曲がれない。


 なるほど、家でやる物よりもはるかに難しい。コースアウトを連発していく。


 だけど、その中で必死で反動お回していく。

 その中で――


「負けたぁ」


 隣の一葉がそう言った。

 ぎりぎり僅差ながら勝てた。良かった。いつも負けてたから


 


「嬉しい」

「悔しい」


 二人で真反対の事を言いながら、互いに笑った。


 そして、火もくれた所で、帰ることとなった。


「今日は、恭介君の家に行けないの寂しいね」

「そうだな。これじゃ満足しないか」

「うん。満足する日なんてないよ。恭介君の家に行くことが私の日課だから」

「日課って……」まるで課題みたいだな。


「なあ、一葉」

「なに?」

「今日は楽しかったか?」

「楽しかったに決まってるじゃん」


 指をグッドマークにして俺に見せつけた。

 その笑顔が兎に角眩しくて、俺は何となく安心してしまった。


 一葉が楽しそうな姿を見たら、それだけで嬉しい。




「……なあ、夜も話そうぜ」

「え、いいの?」

「食い気味に来るとは思わなかったが、いいよ。俺もまだ満足してないから、オンラインでやろう」


 別に家にあるゲームは、なにも隣に居なければ出来ないという訳ではない。ただ、電話でつながっていれば遠くにいたとしても一緒に話しながら出来る。

 最近はそう、便利なのだ。

 スマホという革新的なアイテムのおかげで。


「やりたい!!」


 そして、俺の手を掴む一葉、


「いいよね!」

「ああ」


 むしろこっちから願いたいところだ。


「ありがと、じゃあ、夜ね」

「ああ」


 そして、俺たちはその場を離れた。

 そして、俺は小さくガッツポーズをした。


「で、……そこで何を見ているんだ。何かしてくるかとひやひやしていたが、何もしなかったようだな。……理子」

「ちょっと、下の名前で呼ばないでよ!!  もう恋人同士じゃないんだから」

「そうだったな。俺はお前にひどい目に合わされたもんな」

「被害者面しないでくれる? あたしは怒ってるの」


 冷たい視線を向けられる。


 怖いけれど。


「俺の事は言い」そう、前置きする。そして、


「一葉に手を出してみろ、容赦しないからな」

「手なんて出さないわよ。今はね。まあ、あたしに裏切られたのに、幸せそうにしてるのがムカつくけど」

「それは俺もムカついてるよ。お前のせいで最悪だ」

「あたしはあんたが苦しんでるのを見るのが好きだけどね。だから、ムカつくのよ」


 舌打ちを打った。


 そう言って、理子は去っていく。

 だけど、その後ろ姿は何となくムカつくもので、俺はその場で地面を強く叩いた。

 なぜあの場にいたのだろうか。

 俺をおちょくるためだろうか。

 どちらにしろムカつくことには変わりはない。



 ★


 あーむかつく。

 なんでゲームセンターで遊んでんのよ。


 あーあ、ショッピングなんかしなきゃよかった。

 いい服は買えたけれど、でもムカつくもの見ちゃったわ。

 なに、楽しそうにしてんのよ。

 あんたなんか苦しめばいいのよ。


 そうだ、いいこと思いついちゃった。

 これなら……

 ふふふ、恭介の苦しむ顔見るの楽しみだわ。






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