表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失恋し、裏切られた俺の家に、転校してきた幼馴染が毎日ゲームをしにやって来るようになった  作者: 有原優


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/31

第10話 啖呵

 授業が始まった。

 数学の授業だ。

 どうやら俺が休んでいた間、新しい単元に入ったらしい。そのせいで、先生の言っている内容が、ほとんど分からない。まるで外国語を話しているように、

 内容をあまり理解する事ができない。いったい先生は何を言っているんだ。



 それに俺は、そもそも数学の中でも図形が特に苦手だ。何も頭に入って来ない。


「見る?」背中をトントンと叩かれる。そこには一葉のノートだ。きちんと色ペンを用いながら上手くメモを取っている、かのように思った。そして多分これは前の学校でのノートだろう。うちの学校よりも偏差値の高い学校だ。


 内容は少し難しそうだったが、読んでで分かりやすい。一葉は頭がいいから、ノートも分かりやすい形で書けるのだろう。


 読んでいたら、よくわかる。そんな感じがした。


「ありがとう」


 そう言って俺はノートを返した。


「もういいの?」

「大丈夫。中々分かった」


 それに、俺がノートを占有していたら、一葉が新しい内容をノートに書けないだろう。

 それに、また分からない内容が出てきたら、その時はまたノートを見せてもらえばいいだろう。



 そんな感じで、授業を受けていく。


 ――昼休み。俺は、


「一葉、ご飯を食べる前に少しいいか?」




 一葉に、ご飯を一緒に食べようと言われたが、その前に俺にはやらなければならない事がある。


「一葉は先に行っててくれ」


 そう言って、俺は理子の席に向かう。


「なあ、理子」


 怖いけど、でも言わなければならない事だ。


 ストレスに打ち勝たなければならない。


「……少しいいか」

「なんで、あんたと話したい事なんてないんだけど」

「お前は良くても俺は困るんだ」


 一葉がおずおずとした感じで見る。

 屋上にはいかずに、俺たちの会話を傍から見ているようだ。

 

 ビビっている。そんな感じがしている。


 だけど大丈夫だ、一葉。

 俺は弱い自分から脱却するためにここに来たんだ。


「理子、あの噂を」

「あははははは」



 その瞬間だった。


 理子が高笑いをした。


「何を言ってるの。この浮気男」

「俺は浮気男なんかじゃ」

「なら、あの女は何よ。実はあの女と付き合ってるんじゃないの? あたしを馬鹿にしてるんじゃないの?」

「違う!」

「そうだ、あの女と付き合うために、そうしたんじゃないの。浮気してあたしから離れたんじゃないの?」


 明らかに恍惚無形な話に聞こえる。

 だけど、そう思っているのは俺だけで、皆はもう理子の話を信用している。

 この馬鹿げた話を。

 俺の味方は少ないのだ。


 それこそ、一葉くらいしか俺の味方はいないのではないだろうか。


「馬鹿にしないでよ」


 叫ぶ声が聴こえた。


 俺はそちらの方向を向く。そこには一葉がいた。少しみっともないと感じた。


 俺は結局一葉に頼ってしまっている。情けなさで胸が苦しくなってしまう。


「一葉……」


 俺はそう、呟く。


「来なくてもいいのに」

「私は、恭介君が変な事を言われてる。それを見るのが嫌なの」


 そう、一葉は叫ぶ。


「あなた達は」


 一葉は、観客席に語り掛けた。

 この事件をただただ、エンタメ気分で見ている人たちにだ。


「これでいいの?」


 その言葉には、確かに力が込められていた。

 怒りの感情が現れていると、感じた。


「この人の甘言に乗せられてていいの?」

「何を言ってんのよ」

「恭介君が正しいっていう可能性を一瞬でも考えたりしたの?」


 一葉は怯む様相を見せない。本気みたいだ。


「私は、あなた達みたいに馬鹿じゃないから、自分の頭で考えられるの。理子さんの言っていることはおかしいって!!」


 一葉は言い切った。その表情はまるで勇者の物だった。

 が、しかし。


「転校生なら空気読めよ」

「何も知らないくせに」

「理子さんを傷つけんな」

「カスが」


 暴言を吐かれていく。


「っ」


 俺は下唇を噛んだ。

 一葉を巻き込みたくはなかったどうしてこうなったのだろうか。


 一葉は踵を返し、俺の手を取った。


「ご飯食べに行こうよ」


 その言葉に俺は頷いた。周囲の注目が俺たちに集まる。理由は単純。


 ……一葉が啖呵を切ったという事もあるだろうが、一葉が俺の手を取ったという事だろう。


 周囲から見たら、こんなのもうカップルにしか見えないだろう。



 屋上で二人きり。そこでご飯を食べていく。だけど、なんとなく味がそこまでしない。

 それに、あんなことが起きてしまった。

 それを感じると、どうしてもつらい部分がある。




「何が正解なんだろうな」

「誰にも分からないよ。それは」


 一葉は箸を器用に使い、ご飯を食べていく。


「でも、私は後悔してないよ。恭介君。それにさっきはかっこよかったし」

「お世辞は辞めてくれよ」


 みっともない。結局、


「俺は……何もできなかった。……一葉がいなかったら……な」

「なら、さ。……感謝して今日も私にゲームで気持ちよくさせてよ」

「それはごめんだ」

「なんでよ」

「ゲームでわざと負けるのは心情に反するからな」

「そっかそうだよね」


 

そして、


「今日は楽しいね」と、一葉は笑って言ったのだった。


 その後、教室に戻ると、場の雰囲気が明らか悪かった。

 俺たちに好意的な視線は、ほとんどないだろう。むしろ、嫌悪的な視線が多いと感じた。


 しんどいな、と思う。味方は一葉以外にいない。周りのほとんど全員が観客か、もしくは理子の味方だろう。

 だけど、一葉がいるから、なんとなく気分は悪くはない。


 それどころか、周りを気にしなくていい。気を使わなくていい、なんて考えたら気楽だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ