第19話戦場に咲く花
渇いた銃声が施設内に響き渡る。
敵の銃弾はまるで空間が歪んだかのように歪曲する。
「やはり追ってくるか。それも異形に変化してもなお、銃弾のスピードを保っている。」
瑠璃は冷静に分析し、小さく呟きながら、身体を捻
って回避を続ける。だが、瑠璃が避けた弾は地面に
落ちることなく空中で軌道を変化させる。
ぐにゃり、と。
生き物のように蠢きながら、再び瑠璃へと牙を剥く。
「逃げても意味ないで、それ」
遠くで、敵の男が笑う。
「俺の弾ぁな、一発一発が“生きとる”んや。生きてるうちはどこまでも追いかける」
四方から迫る弾丸。
回避、回避、回避――だが数が多すぎる。
「……ちっ」
一瞬の隙。
肩に一発、脇腹にもう一発が食い込む。
鈍い衝撃。内部で蠢く嫌な感触。
「どうや?気持ち悪いやろそれ。早くそいつら体から取り出すか、俺殺すかせな中で暴れて大量出血。持ってあと二、三分ってとこか。」
瑠璃は息を吐き、血をにじませながら顔を上げた。
そして――
「……なるほどな」
ぽつり、と呟く。
「避けても無駄なら」
次の瞬間、瑠璃の手にあった片手銃が、光に包まれた。
輪郭がほどけ、再構築される。
一つだった銃が、二つに分かれる。
両手に収まったそれは、鈍い金属ではなく――淡く発光する“光の銃”。
「は?」
敵の声が、わずかに揺れる。
「撃ち落とせばいい」
瑠璃の瞳が、鋭く光る。
――潜在開放、二丁光線銃『椿』『藤』(オリジナルの『椿』『藤』は、公安の開発部門が銃谷瑠璃のために製作した二丁の最新型光線銃で、瑠璃は一丁の片手銃に潜在開放を施し、この二丁の銃を擬似的に召喚した)
引き金が引かれた瞬間、光線が走る。
相手の異形の銃弾を上回る速度、
まるで意志を持つかのように、迫る弾丸一つ一つを正確に撃ち抜いていく。
空中で、弾が弾ける。
一発、二発、三発――
「なんやそれ……!」
美しい二輪の花は全ての異形を迎撃し、敵が動揺したことで生まれたほんの一瞬の隙を瑠璃は見逃さなかった。
「……っ?」
敵の視界から、瑠璃の姿が消える。
「どこや!?」
次の瞬間
彼の脇腹に冷たい感触、背後には先ほどまで目の前に居た女の気配。瑠璃は背後から彼に銃を突きつけた。
「少しでも動けば引き金を引く、銃を捨てて両手を上げろ」
「これは文字通りお手上げやなぁ」
敵は笑いながら銃を地面に置き、両手を上げる。
「ここまでの使い手がおるとは、さすが公安第二課やなぁー、予想以上やったわ。やっぱ実力を図るには自分で戦うのが一番。」
依然として彼の目に焦りはない。
瑠璃は彼に手錠をかけ、車両に乗せた。
その頃剣真と神代は重要史料の確保に向かっていた……




